第49話 新人警部の悩み
ミケランジェロは彼女のプロフィール画面を見た。最後の投稿は22時間前。いつも日に最低3回は更新するのに、どうしたのだろう?
――きみはとても綺麗だ。
ぶら下がったまま、「いいね」さえつかない自分のコメントに目が行った。
リアクションのないことが意味する事実はただひとつ。する気がないのだ。もともと彼女はすべてのコメントに返信するわけではないが、淡い期待を抱いてしまっていた。
これでわかった。彼女にとっては自分もただのフォロワーに過ぎないということが。
考えてみれば当然じゃないか。どうして自分が特別だなんて思ったんだろう。衝動のままに勝手な思いをぶつけた自分が恥ずかしかった。
目の前の道路に意識を集中しようとした。回数券の履歴を確認するには運営会社の事業所へ行かなければならず、こんなに時間がかかってしまったのだ。そして今、旧市街へ向けて車を走らせている。
考えは別の問題へと漂いはじめた。
ジャンニは心配する必要はないと言ったが、
ジャンニの言葉が頭をよぎった。
――一度、きちんと話してみたらどうかな。お前さんが警察で自分のやりたい仕事をやってると分かれば、理解してくれるんじゃないかな。
前の車はすでに進んでいた。後ろの車列から一斉にクラクションを鳴らされ、ミケランジェロは慌てて車を発進させた。
転属の件は義母に報告したから、父親の耳にも入っているはずだ。電話してくるかと思っていたが、いまだに音沙汰がない。それは数カ月前の口論のせいだと思っていた。
でも、そうじゃないとしたら?
息子が
ステアリングを握る手に力がこもった。
あのクソ親父。
走行中なのも構わず手探りで携帯電話を出した。呼出音を聞いているとき、車載無線が声を垂れ流しはじめた。近辺で死体が見つかったらしい。
「もしもし?」
父親の声が電話から聞こえた。
一瞬ためらい、あとでかけなおすと言って電話を切った。無線機をいじってボリュームをあげ、通信司令室とパトロールカーのやりとりに耳を傾けた。
30分ほど前、
カシーネ公園はこの先だ。ミケランジェロは信号が変わるまでのあいだ迷い、公園のほうにハンドルをきった。事件性があれば、どちらにせよ現場に向かうよう指示される。
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