1.ゴブリン怖い
部屋をあらかた調べ終わった僕は、鉄パイプを握ると、周りを警戒しながら、部屋の南側にある空き家の出口らしき引き戸を開いた。
勢いよく戸を開くと、うぉっ眩しい、ということもなく、予想を反して暗かった。
夜だからではない。というか、今が夜なのか、朝なのか、時間が全くわからない。
「暗いな!」
洞窟だろうか?冷たく、湿気が多い空気。尖ったおうとつのある岩肌。どこからか風の流れを感じる。
聞こえる音といえば、天井の尖った岩肌の先端から落ちる水の音だけ。
明かりといえば、申し訳程度に設置されたランタンだけである。この暗さでは、一メートル先もよく見えない。
洞窟で迷子とか最悪なんだけど。
食料といえば、空き家のタンスの中段に入っていた乾燥された干し肉と、ドライフルーツのような見慣れない乾燥した果物のみ。
あの空き家だと思っていた家屋は、誰かが住んでいるのだろう。
何故ならば、少し前まで人がいた形跡があったからだ。
干し肉とドライフルーツを、勝手に持ってきてよかったのだろうかと思いながら。
もしかして意識のない僕を、洞窟の住人が家屋まで運んでくれたのでは?と、想像を膨らませる。
恩を仇で返すようで、申し訳ない気分になる。
その時、少し離れた位置から、複数人の足音がジャリジャリと聞こえてくる。
洞窟が暗いということもあり、怖くなった僕は、家屋の影に隠れた。
足音の主は小柄だった。幼い体躯であり、暗くて姿こそ見えないが、複数人の子供だと例えるのが正しいだろう。
不意に、その子供たちをランタンの光が照らす。
緑色の肌、申し訳程度に腰に巻いた布。思わず声を上げそうになるのを両手で塞ぐ。
創作物の世界に存在する、創作上の生物。いわゆるゴブリンである。
僕の状況って最悪なのでは。もちろん洞窟だから、誰かが助けに来てくれるハズはないし。
ゴブリンたちは、先ほどのボロい家屋に入って行く。
家屋に入ってすぐに、ゴブリン語と言えばいいのだろうか?意味のわからない言語をギャーギャーと騒いでるのが聞こえる。
恐らく、僕が逃げ出したのに気づいたのだろう。このままここに隠れているべきか?今すぐに逃げ出すのが正しいのか?
ゴブリンたちは、洞窟内の地理に明るい。だから、今ここで逃げても、追い詰められる可能性が高い。
この家屋は、奴らのアジトだと考えられる。ゴブリンが眠るのを待って、洞窟内を脱出するのが得策だ。
僕は大人しくここに隠れることにした。鉄パイプじゃ勝てる気がしないし。
しかし、ホント時間がわからないのは辛いな。
僭越ながら異世界で底辺の僕が、カースト上位の存在にやりおる(わ(い))(な)と言わせてみた。 七星北斗(化物) @sitiseihokuto
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