第11話 無駄


 目が覚めるやノックの音。

「シュウ兄ちゃん?朝だよー」

 ドアを開けると、マルミちゃんがニコニコしている。

「おはよう、ありがとうね」

 マルミちゃんはエヘヘと笑うと、駆けて下に降りていった。

「飴ちゃんが効いてるかな?さて、今日はハンターしますか」

 昨日は魔力循環で一日終わったが、元々MPが少ないのを思い出して諦めた。なので今日からレベル上げをしながら魔力を上げていく事にする。


「おう!おはよう!」

「おはようございます。朝から元気過ぎです」

「あ?元気じゃなきゃ仕事にならんだろ!さぁ、さっさと朝飯食ってくれ!」

 マルミちゃんは席に座って待っている。対面に座り。

「「いただきます」」



 組合に行くと、大混雑で並ぶのも馬鹿らしい。

「さっさと草原にでるか」

 門を通り、マップで森のある方まで駆けながらスライムを倒していく。森の少し手前で、危機察知と気配遮断を使いながら獲物を探す。

「キャウン……」

「ギャ……」

 グレーウルフならなんとかなる。鼻が効くから森から出てきたグレーウルフを身体強化でダッシュし斬るだけ。


名前 シュウ

年齢 十七歳

Lv 10

HP 150/150

MP 13/13

 力 120

 速 90

 知 250

 器 230

 魅 130

 

 レベルが三上がったが、未だにMPは少ない。

「MPだけやけに少ないんだよな。初期魔法も消費一だからつかえるけど、せめてボール系くらいは使いたい」

 いま使えるのは家庭魔法の部類にはいるトーチ、ウォーター、ホール、ブリーズ、だけだ。使えば使うほどMPが増えるなんてことはない。熟練度が上がるだけで、魔力総量はかわらない。レベルをあげるか、魔力循環で器を大きくしないといけないらしい。


「くっそー、せっかく魔法の世界に来たのに使えないのはつらい」

 ガチャで錠剤は当たらないかな?俺はその場から離れ、安全そうな場所でスマホをインベントリからだす。

『ログインボーナス6日目 SSR確定ガチャ券プレゼント』

『ノーマルガチャ 一回百G 十一連千G』

『高級ノーマルガチャ 一回千G 十一連一万G』

『武器ガチャ 一回千G 十一連一万G』

『防具ガチャ 一回千G 十一連一万G』

『スキルガチャ 一回一万G 十一連十万G』

 

 ノーマルガチャ十一連を押す。

『N トイレットペーパー6P』

『N 安眠枕』

『N まきびし』

『HN 速+10錠剤』

『HN 魔+10錠剤』

『HN 魔+10錠剤』

『HN 力+10錠剤』

『HN 魔+10錠剤』

『HN 魔+10錠剤』

『SR 魔+100錠剤』

『SSR 上級ポーション』


「……見てるな……みてんだろ!ヤンキー神!最初から魔力つけろぼけぇ」

『新着メッセージ

 From 神の使い

 うっさい!元の世界のマナが少な過ぎなんじゃ!ガチャに感謝しろぼけぇ!』


 くっそ!ムカつくぅー!!力とか速とかあるのに魔がないのは気になってたけど、そんなもんなんだと思ってたやろ!


 俺は錠剤を飲んでみると、


名前 シュウ

年齢 十七歳

Lv 10

HP 150/150

MP 13/153

 力 130

 速 100

 知 250

 器 230

 魅 130

 魔 140


「うがー!昨日一日返せこのバカ天使が!」

『新着メッセージ

 From 神の使い

 感謝しなさい。これで貴方も魔法使い。

 イヒッ!』

「……ウォーターボール」

 水の球が勢いよく木にぶつかり抉れるほどの威力。

「……もういい」

 神の使いやヤンキー神に怒ったところで会えなきゃ殴れない。


 さて、気を取り直してインベントリからウルフを出して解体しようと思ったら、インベントリの中で解体された?

「は?解体ができる?嘘だろ」

 インベントリから取り出すと綺麗な牙がでてくる。

「おぉ……俺は無駄なことをしていたのか……これはスキルの検証をしないといけないじゃないか」

 せっかく解体を教えてもらって、おさらいしようと思ったらスキルで解決。他にもなにかあるかもしれない。



スキル 無限カードホルダー

    インベントリー

    剣術Lv2

    体術Lv2

    調理Lv1

    調合Lv1

    解体

     二段ジャンプ

    火魔法Lv1

    風魔法Lv2

    水魔法Lv1

    土魔法Lv1

    聖魔法Lv1

    身体強化Lv2

    危機察知Lv2

    気配遮断Lv2

    再生Lv1

    解析Lv1

    マップLv2

    スラッシュLv2


ユニークスキル ガチャLv2

恩恵 ステータス二倍

 

 俺は解析を分かりにくいスキルに使う。


『調理 料理が上手くなる。レベルが上がると手際や味に磨きがかかる』

『調合 薬などの調合が出来る様になる。レベルが上がると成功率があがり、薬の効果もあがる』

『再生 壊れた物を元の状態に戻す。レベルが上がれば失った物も再生可能になる』

『解析 事柄を調べること。対象は様々だが、レベルに比例して解析ができる』

『解体 物を解体する。レベルなし、インベントリー内での解体可能』

 

 他にインベントリー内で出来るものはなかったが、調合があればポーションがつくれるし、再生なんかはレベルをあげれば化ける可能性がある。


「これだけでも凄いことだぞ」

 ただ、使わなければレベルが上がらないのはしょうがないから、レベル上げをしないといけないな。まずは剣術、体術、聖魔法あたりからかな。


 また森の手前で狩りをする。今はレベル10だが、15くらいまでは上げたいし、身体強化と危機察知、気配遮断も常時使っていく。


 空が茜色に変わる頃にはダッシュで町に引き返す。今日の成果はグレーウルフが十五匹、ファングブルが三匹。レベルも今日だけで五も上がり、スキルもレベルが上がった。


名前 シュウ

年齢 十七歳

Lv 12

HP 170/170

MP 150/170

 力 150

 速 120

 知 270

 器 250

 魅 150

 魔 160


 剣術Lv3

聖魔法Lv2

 身体強化Lv3

危機察知Lv3

気配遮断Lv3


 ファングブルの肉は食用可だったので孤児院に寄付だな。


 組合に行き買取をお願いする。

「グレーウルフの牙が上下セット×15で銀貨一枚と銅貨五枚、毛皮も×15で金貨一枚と銀貨二枚、魔石が15個で銀貨三枚、ファングブルの毛皮が三枚で銀貨三枚、牙が六本で銀貨六枚、魔石が三個で銅貨九枚、計金貨二枚と銅貨四枚になります。よろしいですか?」

「は、はい、よろしいです」

「宜しければお聞きしたいのですが、ファングブルのお肉はどうなさいました?」

「孤児院に寄付しようと思って取ってあります」

「そうですか、ありがとうございます」

 受付で孤児院の場所を聞いて、孤児院に到着すると広場で子供達が遊んでいる。

「あ、お兄ちゃんだ」

 集まってくる子供達は多分助けた子なのだろう。

「ここはどうだい?楽しい?」

「「「うん、たのしいよ」」」

 子供達はそれぞれに話をしだしてまとまりがつかない。

「こーら、お兄さんが困ってるでしょ?そろそろ夕食だから準備してね」

 先生と思わしき女の人が手を叩きながら子供達を誘導すると、

「お兄ちゃんまたきてね」

「助けてくれてありがとう」

 子供達が声をかけて駆けていく。

「貴方がシュウさんね?私は孤児院の責任者のフレイルです。子供達を助けてくれてありがとうございます」

「俺は警察に任せただけです。あ、ファングブルのお肉を寄付したいのですが、保管は出来ますか?」

「ありがとうございます。子供達は食べ盛りなので助かります。孤児院の中にマジックボックスがありますのでそこでお願いします」

 俺はフレイルさんについて行き、三匹分のファングブルの肉をマジックボックスに入れる。

「こんなに沢山。ありがとうございます」

「これくらいしかしてやれないので、こちらこそ子供達の世話をよろしくお願いします」

「好きでやってることですので」

「なら、俺も一緒です」

 フレイルさんと笑って、子供達の事を頼んで部屋に帰る。


「報酬もよかったし、子供達も元気そうでよかった」

 腹も減ったのでゴリラパパの顔が浮かぶ。

「冒険者はこれくらい食うか……」


 そうかもしれないな、俺も命かけて魔物を駆除するハンターに少し近づいた気がした。

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