第8話 誘拐
「あふぁぁーー、良く寝た」
スマホを見ると午前十一時。
「たまにはゆっくりしよう」
シャワーを浴びて、髪を乾かし、もう一度ベッドへダイブ。横を向き、スマホを弄るとガチャにNEWがついている。
ガチャを起動すると、
『ログインボーナス 4日目 高級ノーマルガチャ十一連券』
『ノーマルガチャ 一回百G 十一連千G』
『高級ノーマルガチャ 一回千G 十一連一万G』
高級ノーマルガチャって……これ、武器防具も出るよな。
コンコンッ
「カラです。いまいいですか?」
「はいどうぞ」
すぐ起き上がり、カラさんを出迎える。
「社長に言われて、シュウさんが困っていたら助けてほしいと言われたのですが、何か困り事などありますか?」
困り事は今のところ……あるな。
「皆さんはスキルを平均どれくらい持っていて、どれくらいのステータスが普通なんですか?」
これはスキルガチャが安いような気がしていたから気になっていた。
「そうですねー、スキルだと平均七、八個くらいですか、ステータスは人それぞれですが、一般人なら30くらいかな?ハンターだと100は超えてないときついですね」
じゃあ、俺はまだまだ上げないといけないか。
「次の質問いいですか?」
「どうぞ」
「この世界の地図は売ってますか?」
「売ってますが、簡易的ですね。強い魔物が居る場所などはなかなか計測出来ないので」
そうか、そうなると元の世界との差があまりわからないかもしれないな。
「最後にこの町はどの程度安全ですか?」
「周りが草原なんで、割と安全です。塀も高いし、冒険者も多いですからね」
ここを拠点にしても過ごしやすいか。
「ありがとうございます」
「いえいえ、えっと、言いたくなければいいのですが、シュウさんは記憶喪失か何かですか?」
そりゃ、似たようなもんなんだが、知らんもんは知らんからな。
「そう言う訳ではないのですが、世間知らずってことでお願いします」
「そうですか。また聞きたいことが有れば聞いてくださいね」
カラさんはそれだけ言うと部屋を出ていった。うん、気を遣ってくれて助かる。
「地図は買うとして、スキルガチャは安いな。あとはステータスか」
スキルガチャが安いのはヤンキー神の計らいだろうな。ステータスが低いからガチャ回せなかったら詰んでるよ。
いまの全財産は三百五十万ちょいか……稼がないとなぁ。
簡易的な地図は銀貨一枚、この大陸のものしか無かった。他の大陸はほんのちょっと港町が描いてあるくらい。その大陸に行かないと売ってないらしい。世界地図なんてなかった。
『ログインボーナス 五日目 SSR確定ガチャ券プレゼント』
券も溜まってきたがまだ使うのはやめとく。いまのスキルに慣れないとな。
あとはここを拠点にするなら早いとこ安い宿屋を探さないといけない。土地が余ってるわけじゃないから家を買うなんて絶対に無理だ。
という訳で、いまは不動産屋に来ているが、
「そんな額じゃ借りれませんよ?」
と門前払いを受けたところだ。
こういう時は組合だより。
「どこか安い安全な宿はありますか?」
「ありますよ。でも空いているかまでは分からないです」
簡易的な地図を渡されて手当たり次第聞いて回るが……空いてない。
「本当にやばいやつやん」
明後日にはホテルを出ないといけない。
トボトボと歩いていると、
「おら!さっさと出て行け!」
「ゴラム!こんな事してどうなるかわかってるのか?」
ゴツい料理人の格好をした人が、スーツ姿の男を店から追い出してるみたいだ。
「いくら金を積んでも売れないものは売れん!」
「……後悔するなよ」
んー……野次馬は消え去るのみ。俺はまだ宿を探さないと行けないんだ。
って、全滅。どこも空いてない。白馬の宿は空いてるが高すぎる。
昼も過ぎたし、ストレス発散で町の外にでて運動がてらレベルを上げる。ミスリルの短剣に持ち替えて、
「せいっ!」
「ブシュッ!」
「と回収、回収」
スライムの核とゼリー状の体液は買取表に載っていたのでインベントリに入れていく。
ミスリルの短剣はやっぱり近いと怖いし、スライム相手だと腰が痛くなるので鋼鉄の剣にかえた。ちょい重いが慣れればどうって事ない。
「ったく、夕方だからかえるかぁ……宿どうすっかなぁー」
道を歩いてトボトボと帰る。
門番に挨拶して中に入ると、昼間のゴリラ?の調理師が警察署の前で吠えている。
「うちの娘が攫われたんだ!助けてくれよ!探してくれよ!」
「いや、だから、どの様な状況でですか?まだ夕方ですし、遊んでるんじゃないんですか?」
警察の人も大変なゴリラに捕まったなぁ。
「娘は買い出しに出かけたんだよ!いつもの場所で買ってるのは聞いてきた!だが帰って来てないんだ!」
怒鳴るほど大きな声、近所迷惑ですよ?
「近所迷惑ですよ?どうしました?」
「しょ、署長!これは娘が攫われたと騒いでまして」
おぉー、署長登場!って、ほかに上司がいるでしょ?
「んー……それでは私達もまだ動けませんね。って、シュウくんじゃないですか!気づきませんでしたよ」
話を聞いて、俺に気づいて、ってわざとじゃん。
「この間はどうも、それで俺にその子を探せと?」
「いやいや、そんなこ「探せるのか?行くぞ小僧!」ふふふっ」
ふふふって、嫌ぁぁー!こんな大人!
「で、小僧!どこから探すんだ?」
俺はゴリラの腕を払い除け、
「っとに!離してください!探せるのも探せないでしょ」
「っと、悪い。でも娘が!」
「わーかったって!署長にあとで埋め合わせを要求する!」
インベントリからオアミ署特製探知機を取り出す。
「なにか娘さんのものはありますか?」
「これ!うちの娘のお気に入りの髪留めが落ちてたんだ!」
いちいちうるさい。でも、自分の娘のことだしな。
「こーして、こう?あっ、こっちですね」
「お、おう!」
町の裏通りを進んで行く。やはりビルが多いから、大通り以外は夕方でもだいぶ暗いな。探知機が一つのビルの下を指している。
「このビルですね」
「おらぁ!このクソ野郎ども!俺の娘をどこにやった!」
やると思ったので気配遮断を使い、ダッシュで地下へ。
「んだこらぁ!」
「んだとこらぁ!」
上ではゴリラがオラついている。
静かに地下に降りていくと木の扉があり、監視もいる。
何かないかインベントリを探すが、これといって無いので。身体強化+体術+気配遮断で、
「グボッ」
「寝ててください」
いやー、やれるもんだねー、腹パン一発KO!
「ゲホっ、このや「打つべし打つべし打つべし」ガッ」
ふぅー、やばかった。汗を拭きながら鍵束を取って、木の扉をあける。
「刑務所?!いや、普通に犯罪でしょ」
四部屋くらい鉄格子があって、一部屋に5、6人子供が入ってる。
「ゴリラパパの娘さんは、この子か、君だけちょっときてくれる?後の子は必ず助けに来るから待っててくれよ!」
他の子は頷くだけで元気が無い。
「パパはゴリラじゃないよ?」
まだ5、6歳の女の子だ。
「分かってるよ、とりあえずここを出て警察に行こうね!パパもきてるから」
「う、うん」
「少し我慢してね」
と、抱き抱えて外にダッシュ。するとそこには、
「タキラさん?」
「その子が拐われた娘さん?」
「そですけど、どうして?」
タキラさんの後ろには警官がいっぱい。
「突入!」
「「「おおーーーーー」」」
呆気に取られてる間に警官が殺到して中にいたバカとゴリラも取り押さえられてる。
ちなみにダッシュで外に出るときにゴリラパパをみたら、鼻血出して仁王立ちしてた。
何があったの?
「あ、鍵束あげます。地下に子供が沢山いたので」
「おぉ、こりゃどうも。だそうだ、早く行ってこい」
タキラさんは部下に渡して命令する。ちょいできる男感出してるけど、俺って利用されたよね?
「タキラさん?」
「ん?協力ありがとう!表彰ものだな!」
くっ、笑うな!ムカつくから!
再会するゴリラパパと女の子。
「マルミ!」
「パパ」
そして抱き合う親子、俺ごと。
「はなーせー!」
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