第二話 マーメイドの呪い 5

時計を見るともう深夜。

5時間近く話していたのだ。

物事に集中すると時間が過ぎるのはああっという間だというけれど、それはあくまで興味がある話題であればだ。

こんなにも時間が早くたったことに、エドワードはつくづく解せなかった。


メアリーの自室の扉を叩くとメアリーはまだ起きているようですぐに扉は開かれた。

夜中だというのにメアリーはいつもと変わらず整っていて、寝巻でない姿につい今から出かけるのか?と聞きたくなってしまう。


「最後のお客様がメアリーに聞いてもらいって言ってて、今来れるか?」


メアリーは文句も言わず分かっていたかのように小さく頷いた。

キッチンに向かいソルティードッグを作る。

そしてエドワードに「あとは私が対応する」とメアリーは言った。

そして「なんなら先に寝てもいい」と付け足す。

だが流石に一度受けた依頼だ。

任せきりにすることも出来ず、先ほどの件で納得できないエドワードは席を外さずメアリーの近くに座った。


「メアリーです。エドワードの代わりに私が伺います。」


「気を悪くさせてしまったらごめんなさい。どうしても可能性をつぶさずに調査してくれる相手にこの件をお願いしたいの。」


「お気になさらないでください。」


「メアリーさんはこう言ったことを信じますか?」


「私は自分の目で見たものを信じます。ですがたとえそれが見ていないものであっても、ありえないと分からない限り否定はしません。」


そういうメアリーの瞳は一瞬だけ赤く輝き、すぐにいつものオッドアイに戻った。


「あなたもそうですよね?」


そうメアリーが聞くとアーネットは嬉しそうに頷いた。


「そうね。では是非あなたにお願いするわ。」


「今回はマーメイドの呪いだとか」


「えぇ。私は友人が流刑になった真実が知りたいの。私がマーメイドの呪いといっているのは何もお世話になった女将さんに言われたからじゃないのよ。」


エドワードの時とは異なり、アーネットはいきなり本題に入った。

マーメイドが実在するか否かということで5時間もかかったというのに一体どういう事なんだとエドワードは見えないように眉をしかめた。


「では何故民話が関係していると思われたんですか?女将さんから民話と関係があると聞いてそう思われたのではないんでしょうか?」


「そもそも私がその村へ行ったのは友人からの手紙を貰ったからなの。その時送られてきた手紙と一緒にこれが送られてきたのよ。」


アーネットが出したのは一冊のノートだった。

湿度でゆがみ、ページのところどころが見えなくなってはいたがこれは日記だった。


「読んでも?」


「えぇ、もちろんよ」

日記の内容はこうだ。

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