第13話・最後の誕生日


そして

まゆのターミナルなんて気にしないという気持ちを持って

7月26日を迎える

今日はまゆの誕生日だ!

去年はまゆの家でやったけど

今年は病院で誕生日パーティをする

今年はまもりも一緒に参加してくれた


パン!パン!パン!!


病院の中でもクラッカーを盛大に鳴らす


「誕生日おめでとーー!!!」


「きゃー!うるさーい!心臓止まるー!」


なんてまゆは自虐してたけど笑えない気もする

まあ、今日ばかりは笑おうぜ


「でわー??恒例のーー?

誕生日PZ、あ、ごめんなさいプレゼントfor you」


「いやー!葉月のノリうぜー!」


このまま楽しい雰囲気でやって行くぜ!


「まゆー!誕生日おめでとー!」


可奈ちゃんが最初に渡したものは


「おおーー!ありがとー!」


まゆが入院が退屈だって言っていたからか

パズルを渡していた

なるほどーいい考えだな


そして


「じゃあ次俺のPZ、あ、ごめんなさい

プレゼントを渡しますーー!!」


「早くしろ」


「ほらよ」


葉月はまた雑にプレゼントを置いた


「これは」


「使い切った使い捨てカイロ」


カチャ


俺は葉月に銃を向ける


「わかったわかった

これが本当のPZあ、ごめんなさいプレゼントだ!」


葉月がカバンから取り出したものは


「おぉー!かわいいー!」


財布だった

すげぇかわいいしまゆっぽいの選んだな

葉月はセンスあるわ


「じゃあ次まもりだな」


「うん」


はじめてのまもりのプレゼントは


「はい、ちょっと大きいけど」


まもりは大きな色紙を持ってきた


「なにこれ?」


まゆが不思議そうに見ていると


「クラス全員の色紙だよ

メッセージもちゃんと一人一人入ってるから」


まもりもまゆに笑顔を送ると


「わー!嬉しいー!ありがとー!」


まゆもとびきりの笑顔を見せた


「じゃあ次、涼君」


「おう、」


まゆの喜ぶもの

まゆと一緒に使う必要なもの

2つ用意した


「まずこれ」


俺はひとつのDVDを渡す


「なにこれ?」


「元気がない時に見てね

絶対まゆが喜ぶから」


「そーなんだ!じゃあ辛くなったら見るね」


DVDを大事に抱えたまゆ


「涼真のことだからどうせエッチなやつだろ?」


「殺すぞ」


もう一度俺は葉月に銃を向ける


「もう一個は?」


包んであるもうひとつの袋に気づくまゆ


「あ、これな」


その袋を渡す

これは俺とまゆに必要なものなんだ


「……時計?」


「そうだよ」


時計をなんで買ったかと言うと


「まゆと一緒に居れる時間をこの時計と一緒に過ごせたらいいなーなんて思ってね」


「……うん、ありがと」


まゆが少し声を震わせて言ってるような気がした

泣くな泣くな

俺も泣いちゃうから



「よーし!じゃあ写真撮ろうぜ!」


葉月がそう言うと


「いいねー!葉月君たまにはいい事言うじゃん」


と可奈ちゃんがバカにするように言う


「誰がたまにはだ?俺は常にいい言葉を残し続ける言わば歴史上の人物のような男だぞ」


「早く撮ろ」


まゆが言うと


「はい撮りましょう!」


看護婦さんがケータイで写真を撮ってくれる


カシャ


写真の中のまゆはやっぱり笑顔で

俺らはそんな幸せそうな姿のまゆに癒された



まゆside


私の人生最後の誕生日が終わった次の日

本当にあっという間だったみんなとの貴重な時間

去年が最後の誕生日だと思ってたからよかったなー

なんて思うけど発作がしょっちゅう起きるし

立ち上がるのも辛いから車椅子で移動するハメになるし

本当に辛いでもそんな辛い時こそ

みんなとの思い出を振り返ってみたりするんだ


動物園にも行ったし

ボウリングにも行ったよね

涼真君とは数え切れないほど色んなところに行った

あの頃よりももっともっと元気になって

またみんなと遊べるように……

なんて、考えるだけ無駄だよね

もう私は長くて1ヶ月くらいだと思う


1年くらい前は死ぬの怖くなかったし

発作が起きたらあとは死ぬだけーって思ってたけど

みんなと沢山思い出が出来ると死にたくなくなる

あーやっぱ辛いなー


……ん?つらい?

そういえば


『元気がない時に見てね』


涼真君がそんなこと言ってたっけな

私の病室のベッドの横にテレビがある

その下にDVDプレイヤーがあるから

それに入れて見てみよっと

スタートボタンを押すと


『よう!元気か!?』


ん?涼真君?

どアップの涼真君が映し出されていた

そして涼真君がカメラから離れると

可奈、葉月君、まもりちゃんも居た

み、みんないるじゃん!

見た感じ学校かな?


『まゆ!俺の胸に飛び込んで来い!』


『お前がまゆって言うな!』


『まゆ、今夜は君と眠りたい』


『カチャ』


何これ!変なのっ笑


『私ね、まゆの元気な姿に何回も励まされたよ

いつもありがとー!大好き!』


私も可奈が大好きだよ


『まゆちゃん、たまには私にも頼ってね?』


まもりちゃんとも仲良くなれてよかった


『ショートコント、アリとキリギリスと時々オトン』


葉月君には何回も笑わせてもらった

可奈、葉月君、まもりちゃん

私、みんなに会えてよかったよ


『まゆ、元気ないのか?そんな悲しい顔すんなよ』


涼真君の優しい声が聞こえる


『まゆはやっぱ笑顔が1番だな!

まゆの笑顔はみんなを幸せにするんだよ

俺も何度も救われたよ、

本当に感謝してる…

だから、葉月の変顔で笑えー!』


『こんなんでよろし??』


「あははっ!」


うん、私、今すごく笑ってるよ

みんなと一緒だと楽しい

みんなと一緒だと笑える

こんなに面白いDVDなのに


なんで私は


「うぅぅ、うっ、ううぅっ」


なんでこんなに涙が止まらないんだろ

みんなともっと一緒に居たかった

みんなと笑いながら学校に行って一緒に進路とか考えて学校卒業して

みんなと大人になりたかった

でもそれが叶わないのは知ってる

私は死ぬかも知れないけどみんなとの思い出は一生大事にするから

みんな、大好きだよ

私はずっとみんなのそばにいるからね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る