第10話・悪化
そして1ヶ月後
まゆは無事退院して学校に来ていた
今じゃ普通にデートしているしな
そして、4月になり
俺らは高校2年生になった
まゆは時々喘息になるくらいで
発作で倒れるとかはなかった
まゆはいつでも明るくて元気だから
悪くなってるとかそういうのはわからない
ただ、いつどこで何が起きるかもわからない
高校2年生になりいつものようにまもりと学校に行く
クラス替えとかは特にないので変わらない顔並みだった
教室に行くと
「涼真君おはよ!」
まゆが朝からテンション高めに言ってくれる
「おおー!!おはよー!」
朝から可愛いなーー
なんて思ってしまう
「涼真君日曜日映画行かない?」
「お!いいねぇー!最近流行ってるやつ見ようよ!」
「いえーい!決まりー!」
俺とまゆはハイタッチをする
こういうのが何気ない小さな幸せなのかもしれない
この小さな幸せが積み重なって
大きな幸せになる
これもまゆに教わったことだった
本当にそう思える
そして2ヶ月後
まゆに呼び出された俺は放課後のラウンジで待っていると
「涼真君」
まゆが来る
そして
二言目にある事を言った
「私、また入院する」
「…….え?」
入退院はいつもの事だけど
毎回心臓がえぐれるくらいドキッとするのはなんでだろう?
でもそこで弱気なことは言えないから
「わかった、またお見舞いに行くね」
もうすぐでまゆと付き合って1年記念日なんだけどな
なんとか外出許可もらえないかな
もしもらえたらサプライズでも考えておこうかな
待ち合わせ場所にいつまでたっても来ない設定で
そのまま帰るとか
………やめよう
そして次の日
朝から俺はまゆにLINEを入れる
【おはよー!体調どう?】
こんな感じに送るけど多分帰ってくるのはお昼前だろうな
予想通りお昼前に帰ってくる
【おはよー!涼真君も気温差で風邪引いてないかな??
こちらは上々すぎてやばいです><】
おぉーそりゃよかったわ
なんで入院したかは俺にもまゆにもわからない
けどきっと大丈夫だろう
放課後に葉月と可奈ちゃんと一緒にマックに行った
すると可奈ちゃんが一言
「なんか、まゆがいないとあんまり美味しくないね」
まゆのあの美味しそうに食べてるところを見るのがめちゃくちゃ好きなんだよな
まあ今こんなジャンキーなの食ってたら深津先生にしばかれるけどな
「可奈ちゃん、こういう時はな可奈ちゃんが美味しそうに食べて
まゆちゃんの代わりをやるしかないんだよ」
葉月がまたわけわからないことを言ってる
可奈ちゃんと葉月っていいコンビだけど付き合う雰囲気でもないよなー
ほどよい距離感って大事ですね!
「やだよ、誰得なの?それ」
「そこにいるおっさん得だな
可奈ちゃんそういうところあるじゃん?
お金出してもらって、ホテルに行って金盗んで帰る」
「人聞きの悪いこと言わないで!」
こんなにいい子な可奈ちゃんをどうしても悪い子にしたい葉月が1番悪だ
「そういや涼真、進路とか決まってんのか?」
葉月が聞いてくる
「んーまあぼちぼちと」
「大学?」
「そうそう」
大学しか行く道はない
「いいね!涼真君なら中間くらいの大学にいけそうだね!」
と可奈ちゃんが言うが
「いや、俺は一流大学を目指すよ」
俺はずっと決めていた
まもりが頭のいい大学に行くみたいだからな
俺も負けてられなかった
「大丈夫かー?」
葉月が驚いた顔で物申した
「いける!やれる!がんばる!」
やると決めたらやるんだ
逃げることは絶対にしないよ
立ち向かわないとまゆに笑われちゃう
そして月日は流れ6月10日
まゆとの付き合って1年記念日の1週間前だ
なんてことないただの日常で
朝送ったまゆのLINEの返事がないのを気にしながら授業を受けて休み時間になる
その時
悲劇は偶然のように舞い降りた
ケータイが鳴る
公衆電話からだ
誰だ?出てみると
『もしもし!?涼真君!?』
勢いよく電話をかけたのは
まゆのお母さんだった
「はい、どうしました?」
『まゆが……まゆが!』
「……え?」
俺はまた走る
「涼君、どうしたの?」
廊下には偶然まもりも居た
「まもり!ちょっと来てくれるか!?」
「え??な、なに!!」
まもりも連れて行く
くそ、なんでこうなるんだよ!
まだ一緒にいたい
まだ一緒に生きていたい
まゆと死ぬまで幸せでありたい
そう願いながらまゆのいる病院に向かいながら
まゆのお母さんが言った言葉を頭の中で繰り返す
『まゆが心肺停止なの!』
病院に着きいつもの病室に行くと
看護婦さんが2人くらいいた
気にせずにドアを開けようとすると
「あ、今は危険です!」
看護婦さんが止めようとするが
「開けろ!」
俺は無理矢理こじ開けるようにドアを開けた
ガッシャーン!!
「…………」
医療ドラマとかでよく見る
電気ショックみたいのがまゆの小さな体を飛び上がらせる
「ま…まゆ…!?」
ガッシャーン!!
「まゆ!!」
俺は勢いよく飛び出すが
「涼真君!」
深津先生が怒鳴るように俺の名前を呼び
「君はそこに居なさい」
怖い顔をして言った
俺は思わず立ち止まる
くそ、見てることしかできないのか
そばにいたまゆのお母さんも涙を流しながら見ていた
ガッシャーン!!
やめろ……
ガッシャーン!!
なんでこんなこと……
ガッシャーン!!
「もうやめてくれよ!!」
「ちょっと!涼君!?」
俺はまたまゆの元へ身を乗り出すが
まもりが体全体で抑えてくれていた
「まゆ!なんでこうなったんだよ!
まゆらしくねーぞ!
こんなとこで寝てんなよ!
なあ!どこにも行くなよまゆ!!」
「涼君落ち着いて!
そんなことしてたら助かるものも助からないよ!?」
まもりが険しい顔で俺に言ってくれた
……くそっ
俺は座ってその場で見ていた
電気ショックでまゆの体が飛び上がる度に俺の胸も痛くなる
そして何も出来ないもどかしさが悔しくて
涙がこぼれてしまった
ガッシャーン!!
ガッシャーン!!
何度か電気ショックをすると
「……ふぅーー」
深津先生が汗をかきながら深呼吸をした
「せ、先生…まゆは…」
声を震わせながらまゆのお母さんが言うと
「…………」
深津先生は黙ってしまう
この間がすごく怖かった
一命を取り留めたと言って欲しかった
しかし深津先生の溜めた言葉は
「心室細動という不整脈、
体内の血液が送り出せなくなって心肺停止になります
発症したら死に至る可能性7割です」
まゆの病名だ
死ぬ可能性が7割だって…?
「緊急処置はさせてもらったのですが
このままの状態だと植物状態が続いて
そのまま……」
「深津先生」
俺は深津先生の怖い言葉を遮る
深津先生は顔を青白くさせてこちらを振り向く
「今まゆは生きてるんですか?」
「かろうじて生きてるよ
ただ、このまま目を覚ますかは……」
「もし、何やっても治らないんだったら
俺が……まゆを助ける」
何も出来ないのはわかってる
俺が何しても無駄なのもわかってる
でも、出来るならずっとそばにいたい
まゆと付き合って1年記念もあるし
もし神様が居るならまゆともう一度
一緒に居させてくれ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます