第9話・不安を拭う
涼真side
『ほら、顔を上げて、私は1人じゃないよ』
夢の中の女の子が笑顔で言う
久しぶりだね、誰かわかんないけど
『涼真君、涼真君』
君、涼真君って呼んでたのか?
『私、一生懸命生きる!』
まゆ?
お前、まゆだったのか?
「おい、涼真、起きろ」
あ???
顔をペチペチされる
誰?は?
俺は嫌な顔で目を開けると
「おい、起きろバカタレ」
「は?」
葉月が居た
まゆが倒れてから次の日のことだ
林間学校の次の日でもあるから学校は休みだ
「まもりじゃねーのか?」
「まもり?幼馴染のことか?
知らねーな、俺と可奈ちゃんはまゆちゃんのお見舞いに行くんだけど
お前は行かなくていいみたいだな
寝てろ!クソガキ!」
「なんだおめー!?」
いきなりの暴言だよ
にしても頭いてーな
寝不足か?なんか身体中いてーし
なんだろ?
とりあえず着替えてすぐに病院に行く
俺と葉月と可奈ちゃんは少し不安そうに病室まで行く
そしてまゆの病室の番号1059号室に入る
「失礼しまーす」
ドアを開けると
「わー!みんなー!」
笑顔のまゆがいた
そんなまゆの笑顔を見ると俺らも不思議と笑顔になる
「まゆ、体は大丈夫なの?」
可奈ちゃんが聞くと
「大丈夫でもないけど
元気いっぱいだよ!」
まゆが答える
いやいや、どっちだよ!
まあでもまゆが元気なら俺らも一安心だ
「発作とか起きちゃったらごめんね」
「大丈夫だよ」
これから頻繁に発作が起きるかもしれないのか?
それはそれで怖すぎる
昨日の発作が偶然だといいんだけどな
でもそういう訳にもいかないだろう
なんせ劇症状態だったからな
「涼真、俺、ジュース買ってくるわ
可奈ちゃん、行こうぜ」
「うん」
葉月と可奈ちゃんが病室を出る
すると看護師さんも病室を出る
なんだ?みんな揃いも揃って
揃ってはないのか
まゆと二人きりになる
なんか二人きりになるの久しぶりか?
「……まゆ」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
「……?そっか」
なぜか強がる俺だったが
まゆのその笑顔を見るとなんとなく怖くなって
「……まゆ」
またまゆの名前を呼ぶと
「なーにー??」
「…….キスしよ」
「うん、どうぞ」
そう言われると俺はすぐまゆを抱きしめて
軽くキスをした
「……まゆ、無事でよかったよ」
抱きしめながら言うと
「あはは、私まだ生きていられるよ」
そう言ってくれるとめちゃくちゃ安心する
「涼真君、顔赤くなってるでしょ」
「な、なってねーわ!」
「ほんとに?じゃあ離して確認していい?」
「だーめだ、じっとしてろ」
「いじわる」
そういうとまゆはまたクスクスと笑っている
「まゆはさ」
「ん?」
「死ぬの怖くないの?」
「なんで?」
俺は体を話まゆの表情を見る
まゆはキョトンとさせて首を傾げる
「だって、自分の体がどんどん悪くなっていってるんだよ?
それ、怖くないの?」
俺が聞くとまゆはゆっくりと頷いた
「怖いよ」
そういう時もまゆは少し笑顔だった
「でもね、そういうの考えたら考えた分だけ怖くなるんだよ
だから、私は何も考えないで後悔がないように生きてたいの」
「……そうなんだ」
「でも、一瞬そう考えると怖くなっちゃった
責任もってまたキスして」
「……ばか」
でも、俺も怖かったから
またキスをする
「ただいまー!」
葉月と可奈ちゃんが帰ってきた
あ、あぶねえ!離れた後だったから何も見られずに済んだ!
30秒早かったら見られてました
「よ、よう」
「なんだその動揺は!!
あー!!病院ラブホ代わりにしてたって言っちゃおー!」
「ふざけんな!なんもしてねーわ!」
いつも通り葉月がふざけたことを言う
な、なんもしてないことねーけどな!
「この後どっか行くの?」
とまゆが葉月に聞くと
「んー?昼飯でも食いに行こうかなって
まゆちゃんは出られないんだろ?」
「うん、監禁されてる」
「監禁……」
まゆは入院はあまり好きじゃないって言ってたしなー
監禁とかウケる笑
「んじゃ涼真は?昼飯食いに行くか?」
「いや、俺はちょっと残るよ」
「そうだよな」
葉月と可奈ちゃんはまた病室を出る
まあまた二人きりになるわけだけど
まゆはベットの上で調子悪そうに前屈みになって
「ううううーーー息苦しいーー」
「痛みはあるの?」
「ないけど息苦しい」
そっか、心筋炎は前屈みになると痛みが和らぐんだったな
たまにこうなるのかな
「もうこのまま寝る」
前屈みのまままゆは寝てしまう
なんかこんな姿も愛くるしいと思えてしまうんだよな
こんな風に何もしなくてもいいから
一緒に居れる時間をもっと増やしたいな
すると
ガラガラとドアが開く
「おぉ??」
俺はそいつを見た瞬間物珍しそうに見た
「やほ」
まもりだった
「初めてじゃないか?お見舞いに来るのなんて」
「うん、ちょっとあの日以来話しかけにくかったなーって」
「いや、全然大丈夫だろ」
むしろあれがなかったら付き合ってるかどうかもわかんないしな
「まゆちゃんは?」
「この通り、昨日まで死ぬ1歩手前だったんだよ」
「そんなにやばいんだ」
やばいなんてもんじゃねーけどな
しばらくすると
まゆが目を覚ました
「んーーーーねむいーーー」
死ぬ1歩手前の人が言うセリフじゃねー!
まゆは大きな欠伸をして
「あれ?あなたは?」
まゆはまもりを見て言う
「こんにちは、あの節はごめんなさい
なんかあれから気まずくて」
「えーー!!いいのいいの!むしろ感謝だよ!」
まゆもそう言ってくれてる
「そっか、よかったー」
「じゃあさ、涼真君の小さい頃の話を聞かせて!」
「やめろー!」
「うん、いいよ」
「やめてくれー!!」
この後涼真少年の話で盛り上がった
俺が幼稚園の頃花の蜜を吸っていたまもりの真似をしたかったのが花を丸ごと食べてしまったことと
小学生の頃に給食の割烹着を無くしてしまい
姉の白いワンピースを入れてごまかそうとしたのかバレて先生からも姉からもこっぴどく怒られたこと
恥ずかしい話をさせられた
そして病室を出ると
偶然深津先生に会った
「こんにちは」
「おおー、まゆちゃんの彼氏さんか」
妙に貫禄があるよなーこの人も
「まゆが生きていられてよかったです」
「うん、でもまだまだ油断は出来ないからね
その前に手術してなかったら亡くなってたかも知れないし」
確かにそうなんだよな
深津先生にそう言われると途端に不安になる
しかし
「でもね、安心して
僕はまゆちゃんが大人になるまで
そして、まゆちゃんが元気になるまで面倒見るから」
ドンと胸を張る深津先生
なぜかそれに安心してしまう
まゆのために
いつもそうやって助けてくれた深津先生には感謝しないとな
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