第7話・生まれてきてよかった


涼真side


あれから月日は流れ

まゆが余命宣告されて8ヶ月が経つ

季節は冬になり、みんな頬を赤らめていた

あれから手術をしたおかげか


この8ヶ月

まゆの発作は1回も起きていない

手術ってすげーんだな

まゆとボウリングリベンジしたり

そういや室内プールとかも行ったな

色々行ったし、全部深津先生の許可ありだったからすごく安心した


ということは?

この時期の学校の最大イベントにも行けるよな?

そう最大イベントとは?


「林間学校に行きます」


先生が教卓の前で言う


「よっしゃー!!」


葉月が全力でガッツポーズする


「おいおい涼真!林間学校だぞ?

女子の部屋に行こうぜ女子の部屋!」


「うるせーなお前」


まあ女子の部屋とか行ってみたいけどな

基本的に俺ら4人で行動してるから

席とかも隣に出来る

もちろん林間学校の班も一緒だ

俺もワクワクしてきたな!

おらわーくわくすっぞー!


まあそんなことは置いといてと

全員がウキウキ気分でいると


「まゆは林間学校行けるの?」


と可奈ちゃんがまゆに聞いた

行けるだろうな

なんなら調子良すぎて怖いくらいだもんな


「行けるでしょ!」


まゆも自信満々に答える

さすがだな!

林間学校のある程度の日程が決まり

その日は終わる


林間学校2週間前

土曜日の休みの日のこと

まゆは病院に行くと言っていたが

まゆから電話が来ていた

なんだろう?出てみると


『もしもーし!涼真君ですか?』


「俺に決まってるだろ、どうした?」


『えへへへ、ちょっとさ、林間学校に行けるか深津先生に聞いてみるから

一緒についてきて欲しいんだけどいい?』


そっか、許可が必要なのか

俺も行く意味あるのかな?なんて思ったけど

まゆが来てほしいって言ってるからもちろん行くことにした


病院に着く


「おうまゆ」


「おう涼真君!」


相変わらず可愛いなー!

と思いながらまゆとハイタッチをする

まゆのお母さんも居たので

腰を90°に曲げて挨拶をしたら


「やめてやめて」


と苦笑いされた

今日もまゆのお母さんとは好感触!

まあそんなことは置いといて


「じゃあ聞いてみようね」


まゆが元気に診察室に向かう

まあこんなに元気だからな

林間学校はさすがに行けるだろう

こんなに元気なまゆが無理なわけない


「無理です。」


深津先生が診察室で真顔で答えた


「えーなんでー??」


まゆが残念そうな顔でしかめる

なんでだ!絶対行けるだろ!


「無理だよ。もし林間学校中に何かあったらどうするの?」


「起きないよ!だって今まで1回も発作起きてないんだよ?

3日くらい大丈夫でしょ?」


「でも、まゆちゃんは本来手術してなかったら今頃入院生活だったんだよ?

手術したから何とかなってるけど

今この時期に油断したら大変なことになりかねないからね」


まゆと深津先生の言い合いが始まった


「でもさ、林間学校で何かあっても違う病院いけばいいじゃん」


「そんなの無理に決まってるよ

向こうの病院でまた1から診察するんだよ?

ただでさえ難しい病気で見れる人も限られてるのに

その間にまゆちゃんの発作が酷くなっても向こうの人達はわからないしどういう進行速度かもわからないんだから

まゆちゃんは残念だけど残ってもらわないと」


まゆ、林間学校行けないのか?

あんなに計画立ててたのに

おそろいのキーホルダーとか

食べ物屋さんとか

いろいろ話し合ってたのに

まゆだけ行けないのか?


「私の思い出作りお願い!」


「ダメだよ」


「……わかった」


まゆも納得してしまう

納得すんなよ

なんで、まゆだけ……


診察が終わって


「自宅で待機してろってさ」


まゆが悲しそうに歩いて病院内のベンチに座る


「でもしょうがないよね」


まゆのお母さんも慰めるように言う

しょうがなくない

俺は納得出来ないぞ


「まゆが行かないなら俺も行かないわ」


俺がそう言うとまゆは思い切り目を見開いてびっくりした顔をしていた


「なんで!?涼真君は行ってきなよ」


「いや、まゆと残るよ」


「ダメだよ!行ってきな!」


「まゆが心配だし」


「なんでよ、私は大丈夫だからみんなと一緒に行ってきて」


「行かないよ」


「なんでってば!」


「俺は残るよ」


「しつこいって!行ってきて!」


今度は俺とまゆが言い合いになる

でも俺はどうしても納得出来ないから


「まゆが行けないのに俺一人だけ楽しむなんて

そんなこと出来ねーよ!」


俺はまゆと行きたかった

少し怒鳴ってしまったのを反省ながら

またまゆに言う


「まゆがいない林間学校で楽しめるか不安なんだよ」


俺がそう言うと


「涼真君」


まゆはまたパーっと笑顔になり


「優しいんだね」


こう言ってくれた

俺はまたその笑顔で少し我に返る


「ごめん!でもさ、まゆと色んなとこ行くって約束したし

それが出来ないならって思って」


「……ううん

私はね?思い出作りも大事だしそういう約束も確かに大事なんだけどね

1番はね?みんなが、涼真君が笑顔でいてくれることが大事なんだよ

みんなの笑顔は私の宝物だから」


そう言ってまゆは俺に元気づけてくれた

俺はこんなに前向きなまゆを見てしまうと

今までのこと本当にごめんなさいって思った


「それにね、涼真君、私、この体のことそんなに悪く思ったことないよ?」


「……そうなの?」


悪く思ったことないって

どんだけ強いんだ


「生まれてきてよかったって思えるもん

じゃないと涼真君と付き合うこともなかったし」


「……まゆ」


まゆの言葉の重みがずっしりと伝わってくる


「実は私の病気は高校生になる前に亡くなるんだって

本当は1割の人も生きられないんだよ?

それでも私は今を生きてる

だから私はみんなと出会えて、涼真君と出会えて本当に幸せなの

生まれてきてよかったって思えるの」


まゆの身体の真実を知れた

なんでこんなにしっかりしたこと言えるんだろう

なんでこんな体で幸せって思えるんだろう

まゆにしか言えない言葉だったと思う

俺もこんなまゆと出会えて本当に幸せだ


そしてまゆが席を外している時に


「涼真君」


まゆのお母さんに呼ばれて振り向くと


「うちの自慢の娘、いい子でしょ?」


自信満々に言ったまゆのお母さん

まゆの辛さを一緒に分け合ってくれていたんだろうな


「めちゃめちゃいい子です

ありがとうございます」


本当にまゆのお母さんには感謝しかないなー

まゆもこうやって心配させないように頑張ってくれてるから

まゆがいない分

全力で楽しもう!


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