第3話・違和感
あれから2週間後
「おっすー」
俺が教室に入ってくると
「おはよー」
まゆちゃんも可奈ちゃんも葉月もいる
まゆちゃんとはあんまり挨拶以外話しかけていない気がするな
だからこそまゆちゃんも顔を合わせてくれない
まあ当然だよな
「なあ涼真」
葉月が肘でツンツンしながら俺を呼ぶ
「ん?」
「またみんなで遊びに行かね?
今度は動物園とかで」
こいつ仕切るの上手いなー
存在感がでかい
しかも俺というより3人に言ってる
「私はいいよー」
「私も」
まゆちゃんと可奈ちゃんは即答
すると3人は俺に視線を向ける
「俺か?余裕だぜ」
また4人で出掛けることになった
家に帰ると
「涼君おかえりー」
まもりの声がした
は??
なんでまもりがいるんだ?
エプロンをつけて台所にいるまもり
「何してんだ?」
「いやー、涼君のご両親が旅行で居ないから
代わりに私が料理作れって涼君のお母さんに言われたんだよ」
ウキウキしながらまもりは調理しているが
「大丈夫か?まもりの料理と言えば
どろどろのコロッケに
サクサクのパスタじゃん
俺がやろうか?」
「いいの!カレーだから私が作る」
まもりは料理好きなわりに下手なんだよなー
カレーなら誰でも作れそうだからいいか
「んじゃよろしくー」
そんな会話をしていると
ブゥー!
LINEが来る
『まゆ』と書かれているLINEを急いで開く
あれから頻繁にLINEすることがあるけど
LINEでしか上手く話せないのが腹立たしい
内容は
【日曜日って動物園だよね?
何時集合だっけ?】
ほーらみろ
業務連絡みたいのしかできないからな
【10時集合だよ】
送信
はあーー
こんなLINEしたいわけじゃねーんだよなー
俺がため息混じりにケータイをいじると
「なーに涼君、ため息なんてしちゃって
まゆちゃんと何かあった?」
まもりは俺の背後に立ち両手で俺の肩に手を置いた
「何もねーってば暑苦しいな」
俺はまもりを振りほどく
「ふーーん」
そう言ってまもりはご飯を盛り付けカレーをかける
「はい召し上がれ」
ま、まもりさん
カレーってとろみあったよな?
スープみたいになってるけど大丈夫か?
「いただきます」
パク
お?
「意外といけるぞ」
「でしょー!」
うん、うまい!
やりゃあーできんだな
まもりはカレーを作って自分の家に帰る
俺もカレー食って、風呂に入ってそのまま寝た
そして夢の中
あの女の子は出てこない
じゃああとはまもりの声を聞くだけだな
一向にまもりの声は聞こえない
ん?今何時だ?
目を覚ましてケータイを見る
するとLINEが2件入っていた
まもりからだった
見てみると
【ごめん友達と学校行くから起こせないや】
【あれ?起きてる?】
と書かれていた
時計を見てみると
8時50分
か、完全に遅刻だー!
急いでも間に合わない
しかし俺は急いだ
形だけでも急いでおかないと
すぐに着替えて家を出る
家から歩いて10分だから走って5分
急げー!
周りを見渡すと当たり前だがうちの制服を着てる人は見当たらない
そりゃそうだよな
こんな遅刻するのは俺だけか
ん?
でも前の方に制服来てる人が座ってるぞ?
え??
あれ???
嘘だろ??
目の前には
しゃがみ込んで動かないまゆちゃんがいた
「まゆちゃん??」
俺は慌ててまゆちゃんに話しかける
「あ、」
まゆちゃんは顔を赤くさせ息を切らしている
「マジでどうした!?」
おでこを触ると
「熱あんじゃん!」
完全に力が抜けたのか俺に寄りかかる
くそ、この辺に病院なんてないぞ?
どうする?
ダッシュで保健室に行こう!
「まゆちゃん、背中乗って」
俺がしゃがむとまゆちゃんはそのままひょこっと背中に乗る
おんぶで走り学校に向かう
まゆちゃんめっちゃ軽いな
「とりあえずダッシュで保健室向かうから死ぬなよ?」
「うん」
学校に着いてすぐに保健室に向かう
その頃にはまゆちゃんの手の力は強くなり
涙も流していた
「先生!助けて!」
「ん?どうしたの?」
「わかんない!とりあえずベット借ります!」
まゆちゃんをベッドに寝かせる
「涼真君ありがとね」
何が何だかわかんなかったけど
俺はまゆちゃんを助けたい一心だった
「ううん、全然いいんだよ、無事でよかった」
そういうとまたまゆちゃんの笑顔が見える
「んじゃあ俺行くね?」
遅刻もしてる事だし
ちょっと名残惜しいけどこの場を去ろうとした
「………待って」
まゆちゃんが声をかけ俺の足を止めた
「ん?どうした?」
「どうしても、涼真君に言いたいことがあるの」
「………ん?」
少し間が空くと
まゆちゃんはこう言う
「私ね、心臓が弱いんだよね」
「………え?」
まゆちゃんが??
いつもあんなに元気なのに??
「もう涼真君に2回も具合悪いとこ見られたから
言うしかないよね
そのうちわかると思うけどみんなには内緒にしててほしいな」
「………どうして?」
「みんなに心配かけるし
それに、もし何かあったら涼真君に助けてもらいたいなー…なんて」
「……そっか、でもあんまり無理すんなよ?
今日だって休もうと思えば休めたろ?」
「今日はたまたまだよ?急に苦しくなって
熱が出て動けなくなっちゃった」
「まあとにかく今日は早退だな」
「うん、でも涼真君に会ったら元気出てきたかも」
「……そんなこと言うなって」
ダメだ
もう好きすぎる
いつ爆発してもおかしくないくらいだ
「じゃあね、涼真君
本当にありがとー」
「うん、気にすんな
じゃあまた元気な姿で学校に来いよ?」
と言って俺は保健室を出た
葉月と可奈ちゃんにはまゆちゃんの早退を伝えたけど
喘息で早退したと言っておいた
心臓がどこまで弱いのかわからない
でも俺に教えてくれたなら最後まで助けてやりたいな
そう最後まで
そして日曜日
まゆちゃんはすっかり元気になっていた
俺も葉月も可奈ちゃんも
久しぶりに4人で遊ぶからテンションが上がる
「よっしゃー!動物園だぁー!」
葉月がテンション高く言うと
「おぉー!」
元気になったまゆちゃんも両手を挙げて喜んでいた
「いやー!楽しみだな!フラミンゴとゴリラ、ライオン!」
俺も無理矢理ではないテンションで言う
「マニアックなのが好きなんだね笑」
可奈ちゃんは冷静に答える
しりとりしてるのにはさすがに気づかなかったか
まだまだだな
「さーて!じゃあ二手に別れようか可奈ちゃーーん?」
「はーい」
葉月と可奈ちゃんは俺の事を微笑むようにして見ていて
「涼真、がんばれよ」
「まゆのために、ファイト!」
……え??気付かれるもんなのか?
そう言って葉月と可奈ちゃんは2人でどこかに行く
あいつらは付き合ってないよな?
まあいいや
「んじゃあまゆちゃん行こっか?」
「うん!」
かなり都合を合わせてくれてたような気がするな
でもこれも葉月と可奈ちゃんのおかげなのか?
「おさるさーーん!ウキキ!」
猿のモノマネをするまゆちゃん
「顔が似てるなー」
「似てないよー」
と言って俺の腕をペシっと叩く
「コアラだー!可愛いー!」
コアラを見てめっちゃはしゃいでる
「似てるなー」
「これは似てていいよ」
やばい、めっちゃ楽しい
「薬飲むね」
「うん、そしたら俺水買ってくるよ」
と言って俺は自販機で水を買う
「はい」
「ありがとー」
こんなに楽しい一日を送れるなら
もうずっとこのままでいいな
今日というチャンスを葉月と可奈ちゃんがくれたから
俺は決心をする
まゆちゃんに告白しよう
葉月達と合流するのは3時
今は2時だから時間的にも丁度いいだろう
すぐ近くにベンチがある
「まゆちゃん、そこのベンチで休もうか?」
「……うん」
何故か間が空いたことに気付かず
ベンチに座る
緊張する
手汗もかいてきてきっと声も震えるだろう
でもここで逃げるわけにはいかない
「まゆちゃん、あのさ」
「………」
「高校生になったばっかだけどさ」
「…………」
まゆちゃんは下を向いている
「まゆちゃん?えーっと顔上げてもらえる?」
「っ!……はぁ……はぁ……」
「まゆちゃん!?」
まゆちゃんは突然苦しみ始めた
「大丈夫!?」
と言いながらも本心は
なんでだよ、ふざけんなよ
って思ってしまったけど仕方ないんだ
まゆちゃんは心臓が弱い
その事実を俺に伝えてくれたんだから
……でも、こんな大事な時にですらこうなるなんて
俺は救急車を呼んだ
しばらくすると救急車が来る
まゆちゃんが送られてるところをただただ見てるだけだった
葉月と可奈ちゃんにはLINEでまゆちゃんが喘息が出たから一緒に病院に行ったと嘘をついた
本当は救急車に運ばれた
救急車とか言ったらめっちゃ心配すると思ったから
俺は救急車の中には入らずにそのまままゆちゃんを病院に送らせた
この後に苦しそうなまゆちゃんを見るのが怖かったから
そして一緒に病院に行ったと嘘をついた俺は
そのまま家に帰った
はあー
なんでこうなるんだろう
病気を持ってる人の気持ちってわかんないからなんて声をかけたらいいかもわからないし
家に帰ると
「涼君おつかれー」
まもりがいた
今日もまた両親がいないからまもりが色々やってくれてたらしい
いつからうちの家族になったんだよ
「まゆちゃんとはどうだったの?」
まもりは興味津々に聞いてくるが
今はそれどころじゃなかった
「まあまあかな」
と言って逃げるように自分の部屋に行った
部屋に入って早速ベットに倒れ込んだ時にふと思う
俺は今、まゆちゃんに出来ることってなんだろう?
もし仮にまゆちゃんと付き合えたとしても
発作みたいのが来たら辛いのは俺じゃなくてまゆちゃんだ
それを支えるために何をしたらいいんだろう
何のために俺はこんなに悩んでるんだろう
もう何もわかんねーよ
そんな時だった
コンコン
部屋のドアをノックする音が聞こえた
「涼君?」
まもりの声が聞こえた
「なんだー?」
「入るよ?」
と言ってガチャっとドアが開く
まもりが部屋に入ると
俺が倒れ込んだベットの空いてるところに腰をかける
「ふられたの?」
まもりがいつものお節介を焼くように聞いてくる
「それで済めば話は早いんだけどな」
まもりになら話してもいいかな
あんまりまゆちゃんと関わりがあるわけじゃないし
俺はまもりに全部話すことにした
「まゆちゃん、心臓が弱いんだってさ
前に苦しくなってるところを見たし
今日も苦しくなって救急車呼んだ」
「……なにそれ大丈夫なの?」
「わかんねー
とりあえず俺は何もできねーよ
心配するしか出来ない」
「……そっかぁ」
まもりも深刻そうな顔を浮かべて俯く
「まゆちゃんがそれを神様から与えられた試練だとしたら
涼君の試練はそばにいてあげる事じゃないの?」
まもりが言う
……試練?
「でも、俺はまゆちゃんを助けてあげられないかもしれないんだぞ?」
「助ける事が出来るのは医者だけでしょ?
涼君じゃ絶対出来ない
だから涼君にしか出来ないことをしてあげればそれでいいと思うよ?」
んーそんなこと言われてもなー
なんて思ってる時だった
ケータイがブゥー!っと鳴る
俺はそのLINEの内容を見て
「……まもりごめん、行ってくる!」
俺は急いで向かう
まゆちゃんは頑張ってる
そう思ったけど
バカヤローとも思いながら俺はまた走る
握りしめたケータイから映るLINEの文章
それはまゆちゃんからだった
【もう元気になって病院抜け出してきたー笑
学校の近くの公園に居るから来てよー!】
何してんだよ!
無理したらまたやばいんじゃねーかと思ったが
何故か俺はまた会いたいと思って学校近くの公園に向かう
歩いて10分、走って5分もかからないところにある公園
行ってみると
ベンチにポツンと座るパーカーを着た女の子が座っていた
「まゆちゃん!」
そう、まゆちゃんだった
「おぉー涼真君!本当に来てくれたんだね!
こっちこっちー」
手を振ってベンチの横を指すまゆちゃん
「まゆちゃん、体調大丈夫なのかー?」
「ごめんねー、また急に来ちゃって
救急車呼んでくれてありがとー!」
「でも病院抜け出したらまずいんじゃないか?」
「いいの、退屈だし
どうせすぐ帰っていいって言われるし」
「そうなのか?」
「うん、だから大丈夫!」
とびきりの笑顔を見せられると俺も何も言えなくなる
その様子だと何度か病院に通ってるってことだよな?
「んで?お礼を言いに呼び出したの?」
何かあるだろうと聞いてみると
「あーそうそう
あのね、今日の動物園私のせいで台無しになっちゃったから今度遊園地行こ」
ゆ、遊園地??
ゴリゴリのデートの定番のじゃないっすか!
本当にいいのか??
「いいよ!行こう!」
「ほんとにー!?やったー!」
めちゃくちゃ喜んでくれる
そんだけでこんなに喜んでくれるなら俺も嬉しいわ
「じゃあ今度の日曜日でいい?」
俺が日にちを言うとまた笑顔になるまゆちゃんは
「うん、楽しみにしてる!」
と言ってまゆちゃんは立ち上がる
「ありがとー!」
まゆちゃんは笑顔で言った
こんな元気でニコニコしてるまゆちゃんに俺も癒される
日曜日に遊園地に行くことになった
俺はこのあとまゆちゃんを駅まで送り家に帰る
まゆちゃんは次の日から学校に来ていた
相変わらず笑顔だったが
まゆちゃんは葉月と可奈ちゃんにも
「私ね、心臓が弱いんだ」
この日に全部打ち明けた
やはり可奈ちゃんも葉月も同じような反応をしていた
「命に別状があるとかじゃないよね?」
と可奈ちゃんは聞く
するとまゆちゃんは
「うん、そこは大丈夫!」
と強気で言っていた
それを聞くだけで俺らは安心している
そりゃ、そうだよな
死ぬくらい怖い病気ならこんなに笑顔になれないよな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます