第4話 「現代に生きる物語」?

 ところで。

 さっき、私は、ジョバンニが、なぜ、「銀河が星の集まりだと知っているのに答えられなかったか」ということを書きました。いじめられっ子で、目立ってしまうとさらにいじめられることがわかっていたから、という説明です。いじめられている事情として、お父さんが、漁師で、密漁をしたためにつかまっているかも知れない、ということも描かれています。そして、お母さんが病気で、子どものジョバンニが働いて家計を支えなければいけない。

 あ。

 ジョバンニってヤングケアラーだったのか!

 「銀河鉄道の夜」ってヤングケアラー小説?

 ……いま気づきました。

 つまり、「子どもらしい生活」ができないので、クラスの多数の子どもたちにいじめられるわけですね。

 しかも、ジョバンニが思っているほど、クラスの多数の子どもには「いじめている」という自覚がないわけです。

 うーん。

 なんかすごく現代的な物語に思えてきたぞ。

 「銀河鉄道の夜」が現在も生命力を持ち続けているのは、そういう要素もあるからなのでしょうけど。

 でも、「現代の社会問題を描いている」という「現代」は移り変わっていく。もし、日本社会が、家族の世話をしなければいけない若者がいる、という問題を解決したとしたら「銀河鉄道の夜」は読者の心に響かなくなるか?

 たぶん、そんなことはない。

 やっぱり響き続ける何かを持っていると、私は思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る