第18話 愛は獲物を必要とする
愛璃咲の言葉は一日が過ぎた今でも頭にこびりついてなかなか離れてくれない。言葉だけじゃない。彼女の美しいメイド姿は、俺の中で眠っている何かを刺激した。
俺を大きく柔らかい胸と華奢な体で抱きしめてから愛璃咲はいろんな話をしてくれた。
俺と離れ離れになってから、3人はどのように生き抜いてきたのか、その話を聞いた時は本当に胸が痛くなった。愛璃咲が言ったように正気を保っていられるのが奇跡のように思えた。
充実した人生を送っている桐江3姉妹。
俺が彼女らと再会していた際に感じだ第一印象はそんなところだった。だけど昨日の愛璃咲の話を聞いて、俺は彼女らが持っている心の闇を垣間見ることができた。
15年という気が遠くなるほどの時間は俺たちにいろんな変化をもたらした。
だけど、昔の絆は、ちぐはぐだらけの俺たちの認識の違いを正してくれる。
彼女たちは仕事以外でも俺を必要としている。
俺もまた、彼女たちの温もりを欲している。
昨日、愛璃咲と話していたら、俺が毎日のように感じる寂しさとお父さんの死による悲しさが半減してしまった。いわんや、3人と一緒にいれば……
だけど、そんなことが許されるのだろうか。
昔ならいざ知らず、今の俺たちは大人である。
『私……私たち、ゆう以外の男に興味ないの』
単なる知り合いとして、幼馴染として楽しくやっていこうというノリではなかった。
いくら俺が恋愛経験少なめでも、あの言葉が何を意味するのかは痛いほど知っている。
愛璃咲が去ってからは怒りが込み上げてきた。
あの3姉妹に対する怒りではない。
あんなに綺麗で輝いている愛姉、愛璃咲、千愛を幸せにできる男が現れなかったことに対する憤怒である。
世の中に男は履いて捨てるほど存在する。中にはイケメン、お金持ち、賢い人もたくさんいるのだ。
なのに、彼らは3姉妹のお眼鏡に叶わなかった。
15年という時間があったのに、世の中の男は彼女を幸せにできなかった。
怒り。
そして安心。
この相反する二つの感情が俺の心に問いかけてくるのだ。
お前は何を望んでいる、と。
だが、俺は答えることができない。
本当にあれでいいのか、本当にあれが許されていいのかと、うちなる自分が問い返してくるから。
とりあえず、この件は保留ということにしておこう。
そう思って、俺は愛璃咲が作り置きしてくれた料理を冷蔵庫から取り出して朝ごはんを食べ始める。
すると、突然携帯が鳴った。
「……千愛か」
千愛からアインメッセージが届いた。今日はどんな写真を送ってきたんだろう。
最近の俺の楽しみの一つだ。
ちょっと露出多めのレガンダの新作を着た千愛が写っている写真。それを確認すべく、俺は素早く携帯のロックを解除する。
すると、
「っ!」
『今日は下着だよん(^.^)』
赤色の下着姿の千愛の自撮り写真を見て俺は目玉が飛び出るほど驚く。
上には短い金髪に整った目鼻立ちと小さな顔。真ん中には爆のつくマシュマロを優しく包んでいるでかい刺繍入りのブラ。下には女の子の大事なところを隠している刺繍入りのパンツ。
頬を赤く染めているが、小悪魔っぽく笑っている千愛の姿は、とても魅力的で男の本能を刺激するものがあった。
俺がテンパってると、千愛がまたメッセージを送ってくる。
『なんで既読ついているのに無反応?もしかしてこの新作、変かな?( ;∀;)』
いかん、早く返事しとかないと……じゃないと色々勘繰られちゃう。
『似合います』
あ、間違って敬語で返しちまった。
『なんでいきなり敬語なの?』
『急いで書いたものだから』
『それほど、私の下着姿、よかったんだ!』
『否定できぬ』
『素直なゆうにいちゃん素敵!(๑>◡<๑)』
『それ褒めてんのか』
『絶賛したよん!』
本当に元気のいいやつだ。
俺は苦笑いをして、朝ごはんを食べる。
約3分ほどが経つと、また千愛からメッセージが送られてきた。
『お兄ちゃん、大丈夫?寂しいならいつでも言って』
このメッセージの内容から察するに、おそらくこの下着姿は千愛なりの気遣いだと思う。
昨日の出来事を愛璃咲から聞いたのだろう。
俺は息を深く吸って吐いてから返事をした。
『生意気で可愛い妹が朝っぱらから下着姿の写真送ってくるんだ。寂しさを感じる暇はないんだよ』
送信ボタンを押すと、なぜか笑いが溢れてきた。本当に千愛って昔から何も変わってないな。でも、体は変わったからちょっと気をつけてほしいものだ。
『ゆうにいちゃん、もっと私を見て。私もゆうにちゃんがもっと見たい』
「っ!」
こんなメッセージは色々誤解を招きそうでちょっと控えていただきたい。
『見ている』
と、返したあと、俺は千愛の下着姿の写真を自分の携帯に保存した。それと同時に
血が、俺の股間の方に集まってきた。
X X X
公共料金の支払い、税金の支払い、買い物などをしていると、時間はあっという間に夜となった。
道を歩きながら、千愛の下着姿を携帯に表示させつつ俺を周りにバレずに見ていると、愛姉から電話がかかってきた。
「もしもし」
「ゆうちゃん」
「愛姉、どうした?」
「……突然で悪いけど、一つお願いあるの……」
「お願い?」
「来週、パーティーがあるけど、一緒に参加出来る?ゆうちゃんが必要なの」
俺が、必要……
昔の愛姉が口癖のように言った言葉。
いつも俺を手元におこうとする愛姉。その先にあるのは……
「もちろん参加する」
俺は興奮を抑えて、そう返事をした。
追記
その先にあるものはなんでしょうか
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