241 8月29日(木) 期待に応えないようにしよう♪

 白血病で長期入院していたときのことだ。


 仕事の先輩がボクにメールをくれた。その先輩は以前、ある外科手術のために、2週間ばかり入院していたことがあった。メールには、そのときの体験が書いてあったのだ。こんな内容だった。


 「自分が入院していたときに、友人が毎日、おもしろ動画やクイズを添付したメールを送ってくれた。自分はその動画を見たり、クイズを解いたりするのが楽しみで・・入院中は、その友人のメールでたいそう励まされたものだ。

 で、今度は自分が君を励ます番だ。今日はおもしろ動画を添付するから、ぜひ見てもらいたい」


 その先輩のメールには、短い動画が添付してあった。


 このとき、ボクは薬の副作用で・・吐き気が激しくて、しんどくて・・テレビを見る気も起きなかったのだ。メールを読むことさえ、しんどかった。


 でも、こういう先輩の気遣いは、なんともうれしいものだ。


 それに・・・ボクは思った。


 先輩は・・入院しているボクに対する気遣いをこういう形で示すとともに・・加えて、「おもしろかった」といった動画の感想をボクから受け取ることを期待しているのだ。


 ボクはなんとか先輩のその期待に応えようとした。


 ところが、その動画を開けようとしたのだが・・開かないのだ。


 正直言うと・・動画が開かないことで、助かったと思った。先輩の期待に応えたかったのだが、身体がしんどくて、それどころではなかったのだ。


 ボクは先輩にその旨をメールで連絡した。メールには、「お気遣いありがとうございました。動画は拝見できませんでしたが、お気遣いに心からお礼を申し上げます」と付け加えた。


 暗に「もう送らないで結構ですよ」というニュアンスを付け加えたつもりだったのだが・・先輩には伝わらなかった。


 それから、先輩は、なんとかその動画を開けることができるようにと、いろいろと工夫してくれたのだ。


 先輩から「これで開けることができるだろうか?」とメールが来るたびに、ボクは「先輩、もう開けなくても結構ですよ」という返事を送ったのだが・・先輩はあきらめずに、再三、動画に何か手を加えて、メールに添付してくれるのだ。


 こうなると・・なんとかして、その動画を見て、先輩に感想を送って・・なんとしてでも、先輩の期待に応えなければならないという状況になってしまった。


 そういうやり取りを何回か繰り返すと・・やっと、動画を開くことができた。ボクは、やれやれと思って・・先輩にお礼と、動画を見た感想をメールで送ったのだ。


 すると、翌日、今度は先輩からメールでクイズが送られてきた。


 こんなクイズだった。


 「魔女がホウキを持ったら何点。魔女が帽子を被ったら何点。魔女が(略)・・。では、魔女が帽子を被って、何々を持ったら何点でしょう?」


 今回も、先輩が、ボクからの回答・・それが正解であっても、不正解であっても・・を楽しみにしているのは間違いなかった。


 再び、ボクは何とかして先輩の期待に答えようとした。


 でも、さっき書いたように、吐き気がひどくて、何も考えられなかった。メールを読んでも、内容がさっぱり頭に入らないのだ。そこで、ボクはベッドに寝ながら・・メールの内容を紙に書いて・・クイズを解こうとした。


 こうなると・・まるで、学校の宿題の数学の問題を解くような状況だ。しかし、紙に書いて、クイズを考えていると・・ますます、気分が悪くなってきたのだ。


 もう、先輩の期待に応えようとするのは限界だと思った。


 先輩が入院されていたときは、外科手術だったので、おそらく、ボクのように薬の副作用で気分が悪くなるということは経験しなかったのだと思う。つまり、先輩は、自分が入院していたときは元気で退屈していたので・・ボクも同じように、病院では元気で退屈しているものと誤解しているのだ。


 こういった誤解を解くのは難しい。ボクが「もう結構です」と返事しても・・先輩はボクの状況がまったく理解できないので・・単に「遠慮している」と思われてしまうのだ。


 そこで、ボクは、今のしんどい状況を説明する長いメールを送ったのだ。正直、そのメールを書くだけで・・しんどかった!


 すると、先輩はそのメールで、ひどく気分を害されたようで・・もう、メールは送られてこなくなった。


 こういう結末になって・・ボクとしては、正直、ホッとしたのだが・・気分を害したであろう先輩のことを考えると、なんともいたたまれない気持ちになってしまった。


 でも、入院していて、しんどいのに・・先輩に返事を期待されると・・人間って、その期待に応えようと頑張ってしまうものなんですね・・


 カクヨムでも、こんな話を書いておられる方がいた。


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 その方(Aさん)が、ある方(Bさん)に応援コメントを送ったのだ。すると、Bさんが大変喜んでくれた。で、それから・・Aさんは、Bさんが新しい話をアップするたびに、感想を送るようにしたのだ。すると、Bさんも毎回、Aさんの感想を期待するようになった。


 でも、Bさんの期待が大きくなってくると・・Aさんにとって、Bさんに感想を送ることが、だんだんと義務のようになってしまい、重荷に感じるようになった。でも、Bさんの期待に応えないといけないと思うと、感想を送ることが止められない。それで困っている・・という話だ。

********


 期待していただくのはうれしいのだが・・いつの間にか、期待に応えるのが義務のようになってしまって・・期待に応えようと頑張ってしまうというわけですね💦 


 先ほどのボクも、先輩の「返事をもらいたい」という期待に応えることが、義務のようになってしまい、頑張ってしまったというわけだ。


 とにかく、期待に応えようとしないことが大切だと思うのだ。。。。


 皆さんも同じようなご経験はありませんか? 


 そして、皆さんは、これ・・どう思われますか?

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