234 7月26日(金) 背筋が少し冷たくなる話

 少し前のことだ。電車で出かける所用があった。


 それで、駅までの道を歩いていた。住宅街の中の道だ。で、ふと思い立って・・途中から、いつもと違う道を通ってみたのだ。滅多に通らない道だった。ただ、いつも通る道と駅までの距離はそんなに変わらない。


 そのいつもと違う道の途中には小学校があった。ちょうど下校時間だったようで、ボクが歩いていると、たくさんの児童が学校から出てきたのだ。


 その中の一人の男の子がボクに声を掛けてきた。


 「こんにちは」


 ボクの知らない子だ。最初はボクに声を掛けているとは気がつかなかったのだが、周りを見ると、ボクと下校中の児童ばかりだったので、ボクに声を掛けたと分かった。


 ボクは「こんにちは」と答えた。すると、その男の子がこう聞いてきたのだ。


 「何をしてるんですか?」


 正直、面食らってしまった。道を歩いていて・・知らない子にこんなことを聞かれるとは思ってもいなかったのだ。


 なんて答えようかと思った。正確には「用事があって電車で出かけなければならないので、駅までの道をこうして歩いている」ということなのだが、これではあまりに長い。


 それで、曖昧にこう答えた。


 「ちょっと駅まで・・」


 すると、その子がさらに聞いてきた。


 「どんな用事があるんですか?」


 ええっと驚いてしまった。この子にどうしてそんなことを説明しないといけないんだ・・・


 それで、さらに同じ答えを重ねた。


 「ちょっとね」


 そう言うと、ボクは男の子に背中を見せて歩き出した。でも、二、三歩行って、背中に視線を感じて振り返ったら・・その子が道に立って、じっとボクを見つめていたのだ。何だか監視されているような感じだった。


 なんだか気味が悪いので・・ボクは再び男の子に背中を見せて、駅へ急ごうとした。


 すると、今度はボクの前を歩いていた女の子がボクを振り返った。女の子がボクに聞いた。


 「何をしてるんですか?」


 ボクはびっくりしてしまった。どうして、こう児童たちが同じことを聞くのだ。


 ボクは「駅まで」とだけ答えて、女の子の横を通り抜けた。


 すると、向こうから歩いてきた、さっきと別の男の子がボクに声を掛けてきた。


 「こんにちは。何をしてるんですか?」


 周りを見ると・・ボクの周りの児童たちがみんなボクを見ている。


 正直、背筋が冷たくなった・・


 ボクは立ち止まって、この状況を考えてみた。児童たちも立ち止まって、そんなボクを見ている。


 すると、ある考えが浮かんできた。ひょっとしたら・・これは、小学校の先生が児童たちに、登下校時に知らない人を見かけたら、「こんにちは」とか「何をしてるんですか?」とか「どんな用事があるんですか?」というように声を掛けるように指導しているのではないだろうか?


 最近、小学校の児童を狙った犯罪が増えている。それで、児童に知らない人を見たら、こういう声掛けをして、その人を監視するように言っているというわけだ。


 これは確かに有効だろう。これから、児童に対して何か犯罪を行なおうという人がいたら・・児童たちからこういう声掛けをされ、監視をされると、機先を制されて、犯罪を行う気がしなくなるというわけだ。


 でも、ボクの周りには下校中の児童ばかりだ。次から次へと、児童たちにこんな風に声を掛けられてはたまらない。ボクが乗る電車の時間も迫ってきている。


 そこで、ボクはその男の子に「ちょっとね」とだけ答えて・・急いで横道に入って行ったのだ。そんな対応が、男の子には不審に思えたのだろう。横道に入るときにチラリと見ると・・その男の子と数人の児童たちが道に立って、睨むような眼でボクを見つめているのが見えた。きっと、次の日、不審な人がいたと先生に報告するんだろうと思われた。


 ボクはうのていで、その横道を通って、つまり、かなり遠回りをして駅に向かった。。。


 防犯が大切なのはよく分かるのだが、しかし、これって、少々やりすぎではないだろうか? あんな風に、次々と声を掛けられると・・ボクは正直、なにか不気味なものを感じたのだ💦


 今は夏休みに入っているので、その小学校の前を通っても、こんなことはないと思うのだが・・ボクはもうその道は通らないようにしている。


 ボクは・・挨拶は、ほどほどに・・がいいと思うのですが、皆さんはどう思われますかぁ?


 酷暑が続きますので、皆さまに少し背筋が冷たくなるようなお話をお届けした次第ですぅ💦。。。

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