106 1月31日(火) 第一巻だけタダの全集

 皆様は『第一巻だけタダの全集』ってご存じだろうか?


 『第一巻だけタダの全集』というのはこういうことだ。


 僕が高校生のときだ。新聞のチラシに『〇〇全集を申し込みませんか』という広告がよく載っていたのだ。そして、広告についているハガキで『〇〇全集』の全巻の購入を申し込むと、第一巻が送られてくる。しかし、それが送られてきてから1ケ月以内に、もう一度ハガキでキャンセルの連絡をすると、第二巻以降はキャンセルになって、第一巻はあなたに無料で差し上げますというものなのだ。


 もちろん、『〇〇全集』は全20巻以上あって、全部を購入すると、膨大なお金になるのだが・・・このようにして、第一巻だけが無料でもらえるというわけだ。


 僕はこれで、『〇〇全集』の第一巻だけをたくさん集めることができた。


 今、思い起こしても、そうして、タダでもらった第一巻はかなりの数になる。


 例えば、『世界の歴史』という全集では『古代ローマ』が第一巻だった。それとよく似た『世界歴史全集』では『古代メソポタミア』が第一巻だった。また、『世界文学全集』では、スタンダールの『赤と黒』が第一巻だった。『日本文学全集』というのも第一巻をもらったが・・・第一巻が何だったか忘れてしまった。たぶん、興味がなかったんだろう。


 『世界文学全集』でタダでもらった『赤と黒』は、高校生の時に読もうと思ったのだが、本を開くとあまりに字が多いので・・・受験勉強を優先させて、読むのを断念したのだ。『受験勉強を優先させて』というのは、もちジョークだよ(笑)。もともと、僕はあきっぽい性格なので、『赤と黒』とか『罪と罰』といった文字の多い文学作品は苦手なのだ。


 それでも、タダでもらった本で、熱心に読んだものもある。さっき、紹介した『古代ローマ』や『古代メソポタミア』だ。もともと、僕はなぜか、こういう世界史の話が大好きなのだ。そのお陰で、僕は『古代ローマ』と『古代メソポタミア』にはやたら詳しくなった(笑)。


 だから、アホバカ妻とテレビを見ていて、古代ローマや古代メソポタミア(現イラク)が出てくると、僕はアホバカ妻にテレビの内容を解説をしているのだ。アホバカ妻は「また、いつものお自慢ね」と笑っているが。。。


 それで、タダでもらった『古代ローマ』に書いてあったことに、急に話が飛ぶのだが・・・


 皆様は、キリストが生まれたころ、すなわち、2,100年前の西暦0年頃には、古代ローマ軍が『退職金制度』をすでに有していたことをご存じだろうか?


 当時のローマ軍は志願兵制だった。健康な男性が、17歳で軍に志願して入隊し、20年間を軍隊で勤めあげて、37才で退職するのが一般的だった。そして、37才で引退するまでは、妻帯は禁止だった。これは分かりますよね。だって、戦争になって、敵と斬り合う際に、妻や子どもの姿が眼に浮かんだら、戦場から逃げ出したくなっちゃいますもんね。


 しかし、2,100年前といっても、37才での除隊はいくらなんでも若すぎるのだ。37才ならば、まだまだ何かやれるわけだ。そこで、第二の人生のための退職金が必要になってくるのだ。


 当時のローマ軍では、ひとくちに『退職金』といっても二種類あった。一つは、文字通りお金でもらうものだ。『退職金』をもらって、故郷に帰って農場とか牧場でもやりなさいというわけだ。


 もう一つは『土地の購入』だ。


 当時は、ローマ軍の先鋭部隊は蛮族との国境に配置されていた。たとえば、体格の大きいゲルマン民族との国境の、今のドイツに配置されていたというふうにね。だけど、ローマ軍がしょっちゅう、蛮族と戦争をしていたわけではない。むしろ、平和なときの方が多かったのだ。


 平和なときは、ローマ側で開かれた市や、蛮族側で開かれた市に、ローマ兵も蛮族も相互に乗り入れることになる。すると、どうしても、ローマの兵士(さっきも書いたように血気盛んな年齢の独身男性だよ)は、蛮族側のお姉ちゃんと仲良くなって、まあ簡単にいうと、できてしまうわけだ。


 そして、そんなローマ軍の独身男性が37才になって・・・定年になると、その蛮族のお姉ちゃんと結婚したくなる。そうした人たちに便利なのが『退職金としての土地』なのだ。


 その場合、どうしても『退職金としての土地』を蛮族との国境にもらって、蛮族のお姉ちゃんと正式に結婚して、そこに住むようになる。


 すると、ローマには多くのメリットが発生するのだ。


 まず、第一に、蛮族の娘の親御さんからしたら、娘をローマの元兵士に嫁がせたわけで・・・これによって、蛮族はローマに反旗を翻らせにくくなるのだ。


 第二に、万一、蛮族との戦争になっても・・・『退職金としての土地』は国境線にあるわけなので・・・退役兵士がすぐに正規軍の応援に駆け付けることができるのだ。


 第三に、『退職金としての土地』が蛮族との国境に増えていくので、どうしても、その辺境の国境がローマ化されてくるのだ。


 こうして、ローマは蛮族との国境を平和に保つ工夫をしてきたのだ。つまり、ローマ軍の退職金制度というのは、一石二鳥どころか一石三鳥も四鳥もある、よく考えられたすごいシステムだったというわけだ。


 どうです。すごいでしょう。キリストが生まれた当時に、すでにこういうシステムが完成されていたということは。。。


 僕はこれを読んで、感心してしまった。古代のローマには、なんて頭のいい人間がいたのだろうってね。


 ということで、最後は『古代ローマ』について、らちもない熱弁をふるってしまいましたが・・・話は『第一巻だけタダの全集』でした。


 今は無くなりましたねえ・・・こういう『第一巻だけタダの全集』は。。。


 これも、古き良き、なつかしい昭和なのかなあ・・・ 


 今日のよかったことは、『第一巻だけタダの全集』を皆様に紹介できたこと。


 皆さんは『第一巻だけタダの全集』って、経験したことありますか?

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