3 アリバイ確認
2時間ほどの捜査会議が終わり、早速俺と羽谷が向かったのは旧江戸川の河川敷だった。
到着すると河川敷の一部がブルーシートで囲まれていた。ブルーシートをめくり、中に入ると俺と羽谷は絶句した。話には聞いていたもののあまりに惨たらしかった。
これほど遺体が原型をとどめていないのは、俺の刑事人生の中でも珍しい。羽谷なんかは吐きそうになりながらハンカチで口を抑えている。しかし今はそんな事を考えている場合ではない。遺体には服だったものが付着しているが、それ以外には現場を見る限り何も遺留品はなさそうだ。ふと目についたものがあった。遺体の左手薬指についていた「MIMA♡YASUSHI」と刻印された指輪だ。おそらく結婚指輪だろう。しかし犯人はなぜ遺体を原型を留めないほど破壊したにもかかわらず、指輪を外さなかったのだろうか。その疑問が頭にちらつく。もっと現場を見ておきたかったが、羽谷が限界そうだ。それに現場は大体見たからあとは鑑識からの情報を待つだけなのでまぁいいだろう。
次に向かったのは六角靖の家だった。その前に昼飯を食ったのだが、羽谷は「おれもう無理っす、ちょっと吐いてきます。」なんて言っていた。どおりで今ゲッソリしているわけだ。
六角靖の家は山の近くにある豪邸だった。家のインターホンを押すと抑揚のない声で「お入りください」と言うのが聞こえた。
家に入ると玄関で六角靖はすでに俺たちのことを待っていた。目の下には濃いくまができていて、今の羽谷のようにゲッソリしていた。
「お上がりください。」
そう言われ廊下を進みリビングの扉を開ける。
「どうぞ座ってください。お茶とコーヒーどちらがいいですか?」
「じゃあ、コーヒーでいいっすか?」
俺が羽谷の脇腹に肘打ちする。
「ううっ。や、やっぱりいらないです。」
「私もいりません」
「それで今日はどういうお話をしに来られたんですか?」
「単刀直入に申し上げますと、あなたのアリバイの確認を取るためです。」
「先日他の刑事さんにも言いましたが...」
「すみません。しかし捜査のためにもう一度詳しくアリバイの説明をしてくださいませんか?お願いします。」
「いいですけど、アリバイを証明するにはある人を呼ばなければいけないのでここに呼んでもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
そうして六角はそのある人に電話をかけ始めだした。
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