「俺が撞くって言ったから」
アモリと名乗った
怪異たちがだらりと武器を下げ……やがて、美しく輝く光となって、次々と回廊から朝焼けの空へと昇って行く。
「終わった、な。」
ほっとして、真咲が大刀を下げる。新九郎が明るく笑いかけた。
「ほんとだ。良い音で鳴ってる。今夜はせっかく真咲が怪異に慣れる機会だったけど、それもここまでだな。」
「それを言うならおめえだろ! 最初はぶるぶる震えていたくせによ!」
「うるさい、今だってお化けは大嫌いだ。」
「へっ、おめえらしいや」
真咲が
「真咲……ッ!」
新九郎が絶叫して飛び出した。
バキィ……ッ!
骨が砕ける胸の悪くなるような音がして、新九郎の身体が本堂の中へと吹っ飛ばされた。
仰天して振り返った真咲の目前に、怨霊大将、アモリナガサトが立ちはだかっていた。
鐘の音が聞こえるたびに、身体が五色に反応している。それは、闇色の鎧をびくびくと奇妙な形にゆがめていたが、その巨大な鎧姿は微動だにせず、すさまじい殺気を放ちながら、しっかりと床を踏みしめている。
救いの鐘をも
背後から真咲に斬りつけてきた鋭い刃風に、一瞬早く新九郎が気付いた。
しかし不自然な体勢で
全てがあっと言う間の出来事だった。
わき腹が熱い。やられた。
半身を起こそうとして、激痛に突っ伏した新九郎に、素早く近づいた怨霊大将が、その身体をひっ抱え、
「新九郎! くそうっ!」
叫んだ真咲が全力で後を追う。
巻物台を足場に台座に飛び移る。
しかし、怪異が朋友をさらった場所はさらに上だった。
「くそおおお! 間に合わねえ!」
アモリナガサトが、投げ出した新九郎の身体に馬乗りになった。
首を
今も凌介が
「
「くそ……しつこい……さっさと昇天してくれ……」
眼がくらむような激痛に、新九郎はうめきながら毒づいた。
幽霊のくせに重さがありやがる。
なんで俺を……
ああ、俺が撞くって言ったから。
実際に
こいつらが、
寺に訪れた人たちすべてを
怨霊大将が、血にまみれた
下方で、真咲が叫ぶ声がする。
だめだ。終わった……。
新九郎は、痛みも衝撃も感じなかった。
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