明けゆく空に鐘を撞け!
もうあと少しで、
凌介は猛スピードで
腕に、身体に、宙を飛んで来た人魂がきつく張り付く。
しかし、かまっている暇はない。腕を強く振って払いのけ、ひたすら
バアン!
足元で
野草の葉と土、朝露がぱっと宙に弾ける。
木の上で怨霊化した別の
ここで射られてはたまらない。だけど突っ切るしかない。今を逃せば、次の
飛んでくる矢を寸前でかわし、更に速度を上げて山上を目指す。
上方に
「
ぞろり、と影が声をそろえた。
「阿守……アモリナガサト……」
凌介には、全てが解っていた。里人の言葉の意味も、
全てが、あの冊子に記されていたのだ。
しかし凌介は激しく首を振った。
滅びしは正、滅ぼししは邪。
それは、できない。
感情は役に立たない。
それなら俺は、ただ自分の信じた道を行くしかない。
あれを見た自分の直感を信じ抜くしかない!
「すまない。だけど、俺にはこれしかできない!」
悲痛のうめき声を振り切って、
目前には、
林に飛んでいた人魂が、おぞましいまでに寄り集まって、巨大な火の玉と化し、すさまじい速さで崖を
ぴかっと東の山上が輝き、朝日が
ドォーン!
ドォーン!
オンンンン……
明けゆく空に、深く重々しい鐘の音が響き渡った。
下方で
本堂の大屋根や、林の中にうごめいていた人魂も、ひとつ残らず
山々はバラ色に染まり、雲が五色に輝いていた。
「オオ……
「
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