扉に揺らめく怨霊大将
本堂から外へ飛び出せる出口が、
その唯一の出口を
歓喜にあふれて舞うように、人魂がいよいよ速度を上げて飛び回り、血の床にのたうつ影が、いっそう
巨大な
「ワガ…ナハ……アモリ…ナガサト……イザ……ジンジョ…ニ……」
顔立ちは解らない。ただ、かしいだ
「アモリナガサト……。チッ、化物のくせにいっぱしに名乗りやがって。こいつが怨霊どもの大将か」
真咲が新九郎を振り向いた。相手が一瞬で了解して
「……凌介、行け。俺たちが扉を開ける時間を
「
「へっ、元々三人仲良く逃げられるとは思ってねえよ。俺は、あいつを倒す。
「あんたが一番足が速いからな。俺もここに残るよ。真咲一人じゃ心配だ。」
「わかった。頼む。」
二人の決断に、凌介は逆らわなかった。日の出までもう時がない。しっかりと視線を返すと大刀を納めて左足を引き、いつでも飛び出せる構えをとる。
「新九郎、行くぜ!」
「よし来た!」
真咲と新九郎が、勢いよく飛び出した。
右側から大きく回り込み、息を合わせて猛然と怨霊大将に斬りかかる。巨大な身体が意外と素早く彼らの方に向き直ったその一瞬、凌介が弾丸のように、扉に向かって突進した。
ガッキィィィン!
真咲の大刀が、大将の刃と
一方パッと飛び
回転して飛んだ幅広の刃が、ドガッ! と大弓を直撃する。
怪異はくるくると回って消えたが、去り
バアン! と、凌介の足元で床が
泥と、沼草が
手で開けている暇はない。巨大な鎧姿の真横の地面で思い切って踏み切ると、凌介は、
バキイィィィイ……ッ!
一瞬、目の前に迫る怨霊を忘れて、新九郎が息を飲む。
「すげえ! でもあれ、
「苦情は
大将の一撃をはね返しながら、真咲が叫んでいる。
本堂の扉をぶち破った凌介は、ついに明け行く空の下に飛び出した。
遠く山上の
しかし振り返って見れば、まだ
「影、新九郎、無事でいてくれ!」
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