闇夜を歩く無音の人影
ほどなく……。
「ご
と、
顔を合わせた瞬間、老僧が
そこは、小窓のついた落ち着いた
来客用の布団が三組、
「さて、
腕まくりして、どっかと
「どうも出来ねえ 。出て来ねえ限りは」
「出て来ても、払い方知らねーしな……」
「そのことさ」
二人のやり取りを聞きながら、凌介は真剣にこの寺について考えていた。
はじめは、誰かの差し金かも知れないと疑っていた。
山賊、旧豪族にその残党。未だ
怪異が広まり人の足が遠のけば、追われる者たちにとって、
しかしこれが
そもそも怪異じみた演出をする必要がないのだ。
それでは更に注目を浴びる。
訪問者が邪魔でも、その間、息をひそめている方が、より賢明ではないだろうか。
他にも、
かき消すようにいなくなった本堂の人影。
「そう言えば門前で会った村人も、次見た時には消えていたよ。」
新九郎が気味悪そうに振り返る。
この寺は一体なんなのか。
化け物寺か、
「突破口は怪異をどうするかじゃなく、なぜ怪異が出るかだ。理由が解れば手が打てるかも知れない。なにか思いつくことはあるかい?」
思案をまとめ、凌介が顔を上げたその時だった。
それまで小部屋を静かに照らしていた
月が雲間から顔を出し、小窓の
ふと立ち上がり小窓を開けはなって外を
「あれは……なんだ……」
同じく外を
本堂の
その月明かりが青白く落ちる
「
真咲の横で、新九郎が
人影はみな無言で思い思いの
それはいつかお城で見た、不思議な動く
「夕方、本堂にいた人たちじゃないか」
「だめだ。もう頭がおかしくなりそうだ。なんなんだこの寺」
新九郎が頭を抱える。
「そうだ。」
ふと凌介は
素早く引きだし、真咲に見張りを任せて小窓から飛び降りる。
先程の異質な光景を頭から追い払うと、凌介は月明かりの中、集中して頁をめくり始めた。
その後もしばらく、真咲は小窓に張り付いていた。
あのひそやかな影たちは、もう消えている。
月が山に入り、闇の中から
どのくらい時が過ぎただろう。
新九郎は疲れ果てたか、
真咲も窓辺でうつらうつらしている。
「……解ったぜ。そうか。そう言う事だったのか。」
凌介が
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