天の助けの大ムカデ
時は少し以前の、本堂に戻る。
新九郎は老僧に詰め寄られ、たじろぎながらも必死で答えを引き伸ばしていた。
「ご遠慮なさいますな。どうか、どうか一度ご体験下さいませ」
「遠慮なんかしてませんって! あ、あなたたち坊さんや村の人が、あ、朝夕
「我らが手では、聞こえませんのでございます」
「いやいや、夕暮れの
「そうではございませぬ。ともかく、
「い、意味が解りませんって!」
「あなたは良いお顔立ちをなさっている。
「う、嬉しいけど、顔と鐘は関係ないと思うよ!」
「この寺にお越しになったも何かのご縁と思って、どうぞ、
熱く目を光らせ、すがりつかんばかりの老僧の迫力に、新九郎はただもう、恐怖を悟らせない明るい物言いと、引きつった笑顔でごまかし、返事をそらすのに精いっぱいだった。
これが一騎打ちなら、気迫負けでとっくに首を
まるで先日城に来た荷売り並みのしつこさだ。
あの時は
新九郎はパニック寸前だった。
その時だ。
人のぬくもりに誘われたのか、大粒のムカデが一匹、頭上の
ボタリ、と重たい音がして、黒光りする
これぞ天の助け!
思う間もなく新九郎は、
凌介たちが
「い、いかがなされました」
老僧が
新九郎は返事の代わりに、ぱっと床から、
「で、でっかい
半泣きで
「足が多すぎるのも無いのも大嫌いだ!」
尚も叫ぶ新九郎に、
その姿が完全に渡り廊下を曲がって
「くっそ、あの
悲しそうに言いながら、新九郎は
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