納戸の冊子と叫び声
出石凌介は、
棚には
幸い、ここは
表には、
『
とある。
棚に並んだ経典も書物も、ほとんどが遥か昔の古書らしく、触るとぽろぽろと
棚に戻さず抜き取ったのは、この題から、ふと、自分の専属の部下……お
『
やわらかな声音と優しい笑顔が、懐かしくよみがえる。
片時も離れず仕えてくれる彼女も、今は
探すのは桐の三面鏡。
六桐寺にも桐の文字……。
二つに関わる何かが記されているかも知れないな、と凌介は考えた。
反射的に顔を上げると、扉にしがみつくようにして、ぜえぜえ
「なんだ
言いながら凌介は冊子を
老僧の許しは得てあった。部屋でゆっくり読めばいい。
それより気になったのが荒い息をつく真咲の顔色だった。
「りょ、凌介……、お前、ここにずっといたか?」
「ああ、動いてないぜ」
「な、何も、その、何か変な声とか姿とか、出てこなかったか?」
あまりに真剣な真咲の声に、凌介は笑いだした。
「何も聞いてないよ。おいおい、どうしたっての。まさか、化け物でも出たってか?」
「う……い、いや、な、なんでもねえ。別に何でもねえよ!」
ぶんと首を振った真咲が、舌打ちをしながら立ち上がる。
「あれはきっと空耳だ……おれの見間違いだ……ちげえねえ……」
「影……お前、何があった」
凌介が不意に表情を引き締めて、朋友に問いかけたまさにその時……!
凄まじい悲鳴が聞こえてきた。
「うおっ、何だっ!?」
「本堂からだ!」
真咲がビクッと顔を上げ、凌介が弾かれたように振り返る。
「本堂……新九郎か!?」
「何かあったんだ。行こう!」
顔を見合わせた二人は、次の瞬間、だっと駆けだした。
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