鐘撞(かねつ)き爺と新九郎
恐ろしい尼たちの襲来に、真咲が血相変えて逃げ出していたその頃……。
本堂では、一足先に探索を終えた新九郎が、
目の前では熱いお茶が湯気を立てている。
「御苦労さまでございます」
と、少し前に老僧が運んできてくれたのだ。
奥方の
「おふた方は、まだお探しですか」
二つ残っている茶の盆を脇に置いた老僧が、和やかに話しかけてきた。
「はい。でも俺はお先に休ませてもらいます」
化物との戦闘を覚悟して、ぴりっぴりに張り詰めていた心が一度に
「お客人は、
「いや、ここは
「その通りでござります。残念なことに、ここは記録の上では、もう
老僧の声は
「廃寺と申しても、
すべてはそういうことだったのか、と新九郎は
「当寺には長き歴史がございましてな。本堂の造りも
うっ、と新九郎は返答に詰まった。
まさかこんな形で鐘を
そう言えば今、俺は本堂にいて、目の前にいるのは年老いたじいさんだ。
ヤバい、状況は合ってるぞ。
この坊さんが化け物だとは思えないけど……だが、しかし、今この時に、この問いか?
いやいや、落ち着け、俺!
ここは化け物寺じゃないって言ってた。だから大丈夫だ……と思いかけて、そう断じているのが真咲だけだったと気づき、新九郎は震え上がった。
新九郎の動揺に気付いてか、老僧がいきなり身を乗り出した。しわだらけの
「
「あ……いや……」
不安がますます
「ぜひぜひ、ご体験なされませ」
老僧の熱のこもったまろやかな声は、化物の
ああ、出石、真咲、早く戻って来てくれよ。
俺、どう返事したらいいんだよ……。
追い詰められた
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