六桐寺(りくとうじ)はすぐそこですよ
思い思いに鳴き声をかわしながら、夕暮れの空を
暮れゆく山に
「今、日が沈んだな。」
生ぬるく吹きつけてきた夕方の風に、つぶやいた
「やな感じだぜ。まるで俺たちに聞かせるみたいに鳴ってやがった」
新九郎が不気味そうに辺りを見回す。
「おかしなこと言うんじゃねえ。この辺にだって、
内心はさておき、彼の野太い大声は、周囲の
「おかしいな。もうそろそろ見えてもいいはずだが……」
凌介は
山門もなく、
「ここで日が暮れると、ちょっと面倒だね。どうする、
凌介の声に、
「そうだ、それがいい。戻ろう戻ろう! 明日も忙しいしな!」
明るく言うや他の二人の反応も待たずに
その時だった。
「いかがなされたな?」
いきなり新九郎の前に大柄な人影が立ちはだかった。
「ぎゃっ?」
日頃隊下を率いて
「なんだ人か……お、おどかすなよ……」
反射的に腰の
「お前、情けなさすぎるぜ! そんなに化物が怖いのかよ」
しかめつらの新九郎の
「ふん、真咲の声も上ずってるよ」
「ンだとてめっ!?」
「はいはい、邪魔だよ。ちょっとどいてくれ。」
にらみ合う二人を
「すまないが、教えてくれ。この辺りに
「ええ、ござりまするよ、お侍さま。六桐寺なら、ほら、あそこに」
問いかけに、里人はすぐさま前方を指さした。
視線を向けると、確かに茂みの彼方に質素な
辺りが薄暗かったため、つい気付かなかったようだ。
「ありがとう」
礼を言った凌介が歩き出す。
真咲がちらりと新九郎を見やり、それからぐっと派手やかな肩をそびやかして続く。
その後に、しぶしぶと続こうとして……。
「ちょっと聞きたい。あの寺にお化けが出るって
ふと立ち止まり、新九郎が振り向いたとき、里人の姿はもうどこにも見当たらなかった。
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