第58話 危機感のなさを反省
ディーンさんとアルマさんは優しい味付けと野菜に興奮しっぱなし。
豚肉や鶏肉も久しぶりだったみたいで、大喜び。ここまで喜ばれると作った甲斐がある。素材をぶち込んだだけの鍋だが。
食後。
「さて、ここにいる間のルールを伝えよう」
横になっているローランさんがそのまま参加出来るように、全員で入り口近くに移動した。
「まず、ローランくんの空間はこの壁に仮固定とする。外に出る時は解除していいが、戻った際にはまず仮固定すること。彼が戻った際に仮固定をしているかは、私かアルバート、リーンが必ず確認する。いいな?」
言いながらジョンさんが壁に魔道具を設置して、ローランさんが自分の空間を仮固定した。
私が出かけて宿の仮固定を解除する時は、ローランさんが自分の空間を宿に仮固定して過ごす。
「三人はローランくんの空間のトイレを使うこと。三人の出入りは自由だが、私とアルバート、リーンの入場許可を取り消しなさい」
頷いたローランさんが許可を取り消し、実際に入れなくなっているのをジョンさんの前で確認。
これでお互いの了承がなければ入れない。つまりは強引に空間へ連れ込まれることもないということ。ジョンさんが徹底している。
「自分たちの貴重品は、自分たちの空間に入れておきなさい。アルバートとリーンは、私がいない時にローランくんの空間へ入ることを禁止する」
後は当たり前だけれどと言いながら、作物の無断採取やモンスターを許可なく狩るのは禁止。
私が定期的に確認し、ジョンさんに報告。宝珠さんに確認すればいつでもわかるので問題なし。
それと、私とお兄ちゃんの個室には立ち入り禁止が言い渡された。
「三人にはそれくらいだ。次は二人。私が魔力を提供するから、カーテンを止めて壁にしなさい。扉も鍵付きに変えて、鍵を閉めること」
カーテンじゃ心許ないもんね。早速壁代わりにしていたカーテンを外して、壁と扉を創る。
手伝ってくれる優しさは感じるが、カーテンを外すと部屋は完全にオープンです。綺麗にしてて良かったよ。
「これを使いなさい」
四角い石みたいな魔道具を渡された。
「これはダンジョンのセーフティーエリアで眠る時などに、持ち物や身の安全を確保する為の魔道具だ」
登録が無い人は入れないらしい。お兄ちゃんとはお互いに登録をして、部屋の四隅に設置。
これで私とお兄ちゃんの私室に勝手に入れるのは、お互いだけになった。トイレとお風呂はジョンさんを含めた三人で登録した。
「まだ何か不安な点はあるかい?」
ジョンさんがお兄ちゃんに聞くが、思い浮かばなかった様で首を振る。
まぁ正直なところ、私とお兄ちゃんが何の対策もなくジョンさんを受け入れたことがよくわかった。
それで更に放ったらかしで二人で出かけたのだから、あのお説教も軽いものだったとわかる。
「なら、さっき回収したベッドと浴槽の査定をしてくれ。わかることは全て教えて欲しい」
通路にぽいぽいと出される。査定ってことは売っぱらうのかな。
お兄ちゃんが多分ギフトで鑑定もしつつ、触ったりしながら査定。私も勉強の為に参加。
「浴槽本体の質は悪くないです。綺麗に使われてもいますね」
「ほう?」
面白そうに返事をするジョンさんに、もしかして知ってて聞いてる? と思ったら、詳しくは知らないけれど面白いと言われた。
やっぱり私の心の声と会話をしている気がする! お兄ちゃんと浴槽をひっくり返そうとしたら、ジョンさんが代わってくれた。
「あー。見えないところが結構雑だね」
「だね」
お兄ちゃんもすぐに同意した。
がっかりだわ。一流の職人さんの仕事じゃない。デザインは金ピカで本体の質はいいが、これはなー。
空間に設置するつもりで色々調べたし、職人さんと理想の浴槽について熱く語り合った過去よ。
「デザインはどうだ?」
ジョンさん。
「デザインはリーも詳しいでしょ」
説明を丸投げされた。
「猫足は金持ち向け。で、本当の金持ちは自分の好きなデザインをデザイナーに伝えてオーダーするけど、デザインが結構古いと思う」
憧れる人もいるが、庶民は何でわざわざそんな不安定そうなのをと猫足を敬遠する。
デザインも五年くらい前に一瞬流行った金ピカっぽい。単にオーダーした人の趣味な可能性もあるけれど。
ローランさんの空間に荷物を置いたりしていたディーンさんとアルマさんも合流してきた。
「何してるの?」
ディーンさん。
「査定」
私。
「えっ、売るのはまずそう」
アルマさん。
「大丈夫だ。後で説明する」
ジョンさん。
「ねぇ、お坊っちゃまはこれらをいつ買って来たの?」
「一年くらい前?」
ディーンさん。
「半年ちょっと前じゃない? 一年も前じゃないよ。お坊っちゃまは春からだったろ」
アルマさん。
「あ、そっか」
ディーンさん。
「じゃあ、オーダーした人の趣味じゃなければ元々中古かな」
「普段の服も金ピカで、こういうの好きそうだったよ」
アルマさんの発言で、元々中古かは不確定。でも浴槽は人気のない形で、デザインも流行遅れと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます