第41話 モンスターを撲殺する
さて、モンスターを撲殺します! 上からモンスターを鉄パイプで殴る、殴る、殴る。結構お強い。
緑の牛は頭と背中が穴から少し出ているので、地面を叩かないように気を付けながら、ぼっこぼこに殴る。
牛がこちらに攻撃をしたいのか、頭を向けてこようと移動するので、それに合わせて移動しながら殴る。
これは危険を減らしなさいと言うジョンさんの助言で。息が上がるくらい殴っても、まだまだ牛が元気。
なかなかドロップに変わらないが、お肉の為なら頑張る。加工済みのお肉をドロップさせる以上、どうしてもモンスターが強くなってしまう。
これはダンジョンギフトの仕様上、どうしようもないこと。
お兄ちゃんがため息をつきながら空間から出て行った。私が弱いんじゃなくて、モンスターが強いんです。
ちょっとして戻って来たお兄ちゃんは、ディーンさんから武器を借りて来てくれたらしい。槍って。
護身術の一環で棒術は習ったけれど、槍は初めて持つ。いけるかな?
「危ないから、無理に力をかけて槍が曲がらないように気を付けてって言ってた」
「リーンちゃんにこの槍を曲げるほどの力は無いから大丈夫だろう」
ジョンさん。
確かにディーンさんの体格に比べたら細い槍に感じそうだが、私には十分どっしりした槍。
えいっと突いてみた。棒で殴るのとは感触が違う。フォークで分厚いステーキを刺すような?
蓄積ダメージなのか、槍の殺傷能力の高さなのか、何度か突くと、ドロップに変わった。
お兄ちゃんが穴に下りてお肉を渡してくれた。今日は美味しいビーフシチューを作るぞー!
「その、リー、心は痛まないか?」
お兄ちゃんが心配そうに聞く。
「何で? モンスターは生き物じゃなくて、魔力の塊だよ」
魔力の塊を撲殺しても、私の心は痛まない。後、本来の牛の姿からかけ離れているし。
そもそも初級迷宮で週に一、二回、もっと可愛い見た目のモンスターを撲殺しておりますが。
「そうなの?」
私に問いかけつつ、ジョンさんの顔を見るお兄ちゃん。
私の言葉よりジョンさんの頷きに納得したようで解せぬ。
まだ本格的に出会って数時間なのに、何この信頼度。ずっと兄妹として育ってきた信頼感は無いのか。
「ん? じゃあ、魔力の塊を食べるってこと?」
まぁ、その疑問になるよね。
「ううん。ドロップは魔力の塊じゃないよ。ギフトの神秘だね!」
仕組みはしらんが肉は肉。
「その通りだ。魔法で再現できないか研究はされているが、仕組みは神のみぞ知る領域だな」
神秘は適当に言ったのに、ジョンさんが同意してくれた。まぁ普通に考えたら色々とおかしいよね。
私はそういうモノで済ませられるけれど、お兄ちゃんはそうじゃない。考えても分かる訳ないのに考えている。
才能と言う名目で特殊能力が授かる時点で、私は思考を諦めた方がいいと思っている。
特殊能力は才能じゃ無いだろうと常々思っていた。特殊能力は特殊能力でしょ。贈り物の方がしっくりくる。
お兄ちゃんの鑑定だって、十分におかしい。情報が見えるっておかしいだろ。誰が纏めた情報だよ。
多分神だけれど。だから授かったギフトによって、見える情報が異なると考えれば納得できるもの。
撲殺に思いの外時間がかかり、時間が中途半端になった。
買い出しに行くにはちょっと早く、他の事をするには時間が気になる。プラプラしようかなぁ。
アイシアでは探索者の人たちが迷宮から出てきて、買い取りが始まる頃からが買い出しに最適な時間。
探索者の人は、大抵夕方に迷宮から出て来る。迷宮で一泊するより、宿や家でゆっくり休みたいからだと思う。
日によって売っている物にバラつきがあって、上級から誰かが戻って来ていると掘り出し物がある。
大体同じようなペースで潜るし、いつ潜ったのか見ている人がいて、店の人が情報をくれる。
残念ながら三日後まで誰も出て来ないと知っているので、本当にただプラプラしようかな。
のんびりはしていたけれどお兄ちゃんは仕事があるし、ジョンさんも出かけると言うので町に出た。
ジョンさんに私が戻る前に宿に戻った場合は、待機室で待ってもらうように説明した。
ジョンさんみたいな人が待機室にいたら、他の人が居心地悪そうにしそうだけれど気にしない。ジョンさんが自分で何とかするでしょう。
プラプラしたけれど、粗方うろうろした後だったし、夕方になるまで適当に時間を潰してから買い物。
特に掘り出しものもなく。ただ、人数が増えた事を考えて、足りなくなりそうな牛乳やチーズを買い足した。
チーズ……。ジョンさんの空間で保管してくれないかな。貴族で維持隊の重鎮に頼む事ではないけれど。
日々の食卓に美味しいチーズ、悪くないと思うんだよねぇ。
ビーフシチューにパンが無いのは寂しいので、じゃがいもパンでもフライパンで焼こうかな。
後はサラダかな。食後のフルーツが食べたければ、自分で収穫でもしてもらえばいいか。メニューも決まったし、早めに帰ろ。
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