第45話 調査も順調に
維持隊による人身売買と腐敗の調査は順調に進んでいるようで、かなりの人数が犯罪に関わっているのがわかったと報告がジョンさんからされた。
今は慎重に領主が関わっているか調査中。関わっていたら最悪の領主だし、知らなかったら無能っていう。どっちになっても駄目なやつ。
元々有用なギフトが無くて、貴族に残れなかった人たちが迷宮運営の為に集まっている。
迷宮ギルドは国が運営しているが、職員の口利きなどで領主も関わっているので無関係とは考え辛いそう。
ブレンダの友人ニーナちゃんの話から始まった話があまりにも大きくなり過ぎて、ブルッとするわ。
何だかんだでジョンさんが私たちに関わって来たのも、私たちを守る為かなってお兄ちゃんと話した。
ニーナちゃんはやはりあの男に売られていて、既にいい様にこき使われていた事が発覚している。
初級迷宮に通う様な子どもたちの親には、子どものギフトに合った職場を探すようなお金も人脈も無い。
そこを狙われて、ここでの被害者のほとんどが初級迷宮で食材を確保していた子どもたちだった。
あの迷宮の受付が勤めだしてからの人身売買だと確認が取れ、勤務後にギフトを授かった子どもたちを全員確認したそう。
子どもが新しい土地に馴染んで連絡が疎かになっていると思わせる為に、最初は手紙を送らせていたことで調査は割とスムーズだったそう。
バレないと思っていたみたいで、仕事先というか子どもを買った関係者の住所で手紙が送られていた。
但し、直ぐには助けられない。他の関係者に逃げられない為に、時期を合わせて各地で一斉に被害者を救出する計画になっている。
命に問題は無い状態だと聞いてはいるが、ブレンダたちには辛い話だと思うので伝えていない。
ジョンさんの調査に、さりげなく私の情報も役立っている。テッドやブレンダと一緒に迷宮に入るうちに、顔見知りになった地元の子どもたちとダレルさんが情報源だ。
更にハドリーさん経由で聞く、高台の人たちの話がいいネタらしい。子どもでもお手伝いで色々な所に出入りがあるから、悪い噂は拾いやすい。
商人は口がかたいし、子どもたちは見知らぬ大人を警戒する。普段は集められない情報が入るらしい。
ジョンさんの希望があり、ハドリーさんの店に買い物に行って二人を引き合わせる事になった。
「こんにちは〜」
店に入る前にハドリーさんがいるのは確認済みである。
「いらっしゃい、リーンちゃん。今日はベーコンか? ソーセージか?」
こっちはいつも店番をしているお兄さん。生まれも育ちもアイシア。
「ジョンさんはどっちがいい?」
店番のお兄さんの声が聞こえたようで、ハドリーさんが出てきた。
「ポトフがまた食べたいなぁ」
顎をスリスリするジョンさんを、訝しげに見るハドリーさん。さすが。貴族かもと気が付いたっぽい。
「ソーセージをお願いします。ハドリーさんにちょっとお話が」
ハドリーさんの視線が痛いが商談室へ。ハドリーさんも貴族は避けているのに本当にすまん。
ハドリーさんとジョンさんはお互いのお眼鏡にかない、協力体制を結んだ。ハドリーさんはアイシアの現状に不満があったようで超積極的だった。
ジョンさんが貴族っぽい所は、今回は目を瞑る事にしたらしい。私と知り合いなら、厄介な事にはならないだろうと言われて。信頼が重いよ。
ブレンダだけど、お兄ちゃんの説得にも反応はイマイチで、色々と父親に問い詰める事もしていない。
子どもにとって親が絶対的な存在だというのはわかるけれど、視野があまりにも狭いよね。心も凝り固まった感じ。
優しいテッド家族と、女の子にキツイ事が言えないお兄ちゃんの為に私が言わねばならないか。
今日はブレンダを説得しているお兄ちゃんと合流がてら、自らも説得に参加予定。
目線で聞くと今日も進展無しのもよう。ちょっと雑談をしつつ切り出す機会を窺う。
「私から見たテッドはお人好しのピュアボーイって感じなんだけど、ブレンダのイメージと合ってる?」
ブレンダは一瞬考えたが同意してくれた。テッドはうるさいけど。
「ピュアボーイってなんだよ!」
「テッドのお母さんは温かくて優しいお人好しって感じ。どう?」
テッドの母親の話が出て、ブレンダが一瞬強張ったが同意はしてくれた。
「お人好し、お人好しって……!」
テッドは少々お静かに。
「私が二人と知り合ってから短いけれど、概ね感じているイメージはブレンダと同じってことだよね?」
ブレンダが話の行方がわからず不思議そうな顔をしているが、頷いてくれた。
「テッドも他の皆も優しいから言わないみたいだけれど、私から見たブレンダのお父さんってクズなんだよね」
ブレンダがはっとしたような顔で私を見る。
「クズ……?」
「そう。クズだよ」
この反応だと、やっぱり薄々気が付いていたよね。テッド家族と親しくしていたら気が付くことだと思う。
ブレンダが真面目に一生懸命頑張って来た分、父親はクズでも周囲に頼れる人たちが沢山いる事に気が付いて欲しい。
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