第10話 資料探しも*
休みの日は図書館に通い、ダンジョン関連の本を読み漁った。調べるのは好きなので、苦にならない。
書き留めているノートに必要な情報が増えていると思うと、むっふーとなってしまう。
この性質はお父さんに早くから気付かれていて、機会がある度乗せられて勉強した過去。
お陰で職人の話についていけて、盛り上がれるようになった。商談に利用されてはいるが。
ギフトを授かる前の子が純粋に興味津々できゃっきゃしていると、職人的にもテンションが上がるらしい。
私も仕入れた知識を使えて楽しいのだが、専門的過ぎて同世代との話のネタにはならなかった。
今後の参考になるかもとダンジョン創りの本が無いかも探した。
残念ながらほぼ国家事業なので、情報公開がされていなかった。浅く広い情報は拾えたが、それだけ。
ギフテリア大陸で個人でダンジョンを創ったのは転生者のみ。転生者ダンジョン関連の本で、その人が手記を出版していることを知った。
他国の人だからか、アクテノールの図書館にはなかった。本好きのお父さんは出先でもよく図書館に行くので、見かけてよさそうなら入手をお願いしていたのだが。
「ありゃ、駄目だった」
図書館で見付たと言いつつ、すぐに有用性を否定された。
「どう駄目だったの?」
お父さんは司書さんに目的を話して先に本の内容を聞いたそう。
「その目的なら時間の無駄ですよって、苦笑いで言われたわ」
一応お父さんもパラパラ読みをしたが、読む気が失せる内容で。
「ありゃ、ハーレムものの駄作だな」
ダンジョンを創った転生者は、ハーレムも作ってたんか。
「退屈な自慢話レベルだった」
「それはないわな」
納得。せめて小説として面白かったならお父さんは読んだだろう。それでもハーレムの話は時間の無駄感が。
「だろ。しかも無駄に分厚いから高い。金の無駄遣いだと思ったね」
潔く諦めよう。
一応本のざっくりとした内容は教えてもらった。
転生者はダンジョンメイカーという特殊ギフト持ちで、産まれた時からギフトを所持していた。
魔力は測定不能なほど多かった事もあり、産まれた時からコアに魔力を注いでダンジョン作成を始める。
この時点で一般人には絶対に無理。産まれた時からってどういう事だ。十二歳でギフトと魔力量を国が把握し、国からお声がかかる。
彼はダンジョンをプレゼンして、国の騎士でお試しダンジョンを開催。有用性が認められて国からの援助を取り付ける。
援助によりギフテリア大陸のあらゆる物の解析が出来るように。
しばらく国内でダンジョンを公開した後、更なる発展を求めて他大陸まで足を伸ばすこととなった。
国からの援助金と、騎士数名を引き連れて他大陸へ旅立つ。その時の冒険譚が延々と。
行く先々で女性と知り合う……。その女性たちは転生者に惚れ込み旅の同行を申し出た。
「話盛ってない?」
「盛りまくりだと思うだろ? ところがそうでもないんだな」
貴重な薬草を手に入れた、他大陸でしか栽培されていない植物を手に入れた。誰にも倒せない凶暴な野生生物を討伐した……などなどの話や女性との話がだらだらと。
五年かけて各大陸を巡った後、ギフテリア大陸に戻ってダンジョンを公開する。その時、傍には各大陸から連れ帰った女性たちがいた……。
「産まれ故郷の大陸さえ離れて付いてきたんだ……。凄いね、ハーレム」
「五人もいたらしいぞ。内訳は清楚系に元気っ子、麗人系、お色気系、ロリババア、だったかな」
父よ、それは娘に言う話ですか。そういうお父さんだけど。ロリババアって現実に存在するの?
「……その転生者には好みと言うものがないの?」
「父さんにはわからん」
「なら仕方ないね」
現地でしか手に入らない、貴重な物ばかりのダンジョンが完成した。
魔力量に物を言わせて効果や効能を強めたり、この世界には存在しない物も創り出していた。
モンスターとはあまり関係のない武器や防具をドロップさせたりと、やりたい放題。これは今ならわかるが、相当の魔力がいる。
ダンジョンに人が集まって国王に気に入られ、王女と結婚する……。
「他大陸から連れて来た女性たちはよ。惚れ込まれてたんと違うんかい」
「女性たちとのいちゃラブ生活についても延々と語られていたよ。とにかくだらだらと長い。多分本の半分以上がその話だ」
ダンジョンに関しては、そして俺は伝説となった……的な感じで締めくくられたらしい。
「うわー」
お父さんの話だけで十分だわ。真似できるところも無さそうだし、読む気にならない。
ダンジョンは入場した人からも魔力を吸収出来る。モンスターに魔法を使うとダメージ分をまるまる吸収、自然回復分も吸収する。
セーフティエリア内であれば自然回復分は吸収されないが、それらの魔力をリポップやドロップに使う魔力に回す仕組みになっている。
強いモンスターになればなるほど、魔力消費の大きい魔法が必須。
魔力が多い転生者が魔力を供給しなくなっても、現在も上手くいっているのはその仕組みのお陰。
入場料はかなりお高いが、希少品だらけなので探索者も稼げている。だから今も人気のダンジョンとして世界中で知られている。
ギフト所有者本人が亡くなった後もダンジョンを残す方法は、宝珠さんに尋ねてもだんまりでわからない。
お父さんが言うには、国が秘匿するレベルの何らかの秘術みたいなのがあるらしい。別の本で読んだことがあると言っていた。
お父さんの時間を無駄にしても、特に真新しい情報は得られなかった。
気配察知についても調べて訓練をした。慣れることと集中する事が重要。
私の気配察知はかなり便利な類の気配察知で、生き物の気配だけではなく、探し物にも有効な事が分かった。
店番中に硬貨を転がしてしまって何処にいったか分からなくなった時、気が付いた。
ギフトの新たな可能性の発見の仕方が残念だとお兄ちゃんに言われた。ほっとけ。気が付けたんだからいいじゃないか。便利だぞ。
それで本を調べてみた所、探索者に人気のある気配察知で罠や隠し部屋などもわかる便利な物だった。
ただ、日常生活に罠とかはないので罠に関してはよく分からない。道端のう〇こには有効だった。ある意味罠だからか?
うっかり踏んでしまった日には一日憂鬱な気分になるし、靴を洗うのが苦行過ぎるから助かってはいる。訓練にもなるし。
他にはお父さんが隠している秘蔵のお酒を何となくで見つけられたり、お兄ちゃんの部屋で使おうとして追い出されたり。
お母さんが案外気配遮断を日常生活に利用していて、お母さんの気配を探る事がいい訓練になった。
お母さんが情報通なのは、こそっと内緒話をする人たちの話を聞いていたからだった。
話術で聞き出していると思っていたので、ちょっとびっくり。
「話が盛り上がってくると饒舌になって、ここだけの話だらけになるのよ」
「なるほど」
お母さんが認識されていないなら、すぐ近くで全部話を聞ける。恐ろしいギフトだと思った。
特に子どもを学校に送り出した後の主婦が情報の宝庫らしい。ささいな噂話でも役に立つことが結構あるとか。
但し大袈裟な事が多いので、情報を精査するのは大変なよう。
お母さんは集中したい時や面倒事に巻き込まれそうな時にも使っていた。
すっと存在感が薄くなり、いつの間にか存在を忘れてしまう。最近は私が見付けるのでとても嫌がられている。
指摘されると周囲にも気付かれてしまうのが、気配遮断ギフトの難点だとか。それで気が付かなかったらもう、別の何か特殊なギフトだと思います。
***本好きリーンの豆知識***
転生者は自分の前世の名前を後世に残したいと、ダンジョンに前世の自分の名前を付けたんだよ。
だけど発音が難しくて誰もその名前で呼ばず、転生者ダンジョンで大陸全土に広まった。異国の言葉って発音が難しいよね。
転生者ハーレムの余談だけれど、最初の人たちが一番長くいて、その後は入れ替わりが激しかったらしい。
そんなだったので、唯一結婚した王女との仲は冷え切っていたらしい。政略結婚だったならそうなるよね。
恋愛結婚だとしたら、修羅場もあったんだろうな。妻なのにハーレムの一員と認識されていたら、ねぇ?
転生者の妻がモデルの苦悩の王女っていう本もあるらしい。本人たちが亡くなってから出版されたので、真偽不明らしいけれど。
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