私が攻めで大丈夫なのか?!

ことはゆう(元藤咲一弥)

私が攻めで大丈夫なのか?!





 赤信号が変わるのを待っていたら、猛スピードのトラックに突っ込まれた。

 多分私は死んだ、と思っていたら目覚めた。


 ふぎゃあ、ふぎゃあと自分の声とともに。





「クリス! こっちに来いよ!!」

「フォード、そんながさつな奴と遊ばないでこっちに来なさい」

「なんだと?!」

「やりますか?!」

「双方とも落ち着いてください、どうしてそんなに仲が悪いんですか?!」

 前世の名前は東雲しののめあずさ。

 今世の名前はクリスフォード・ローレライ。

 どうやら異世界転生してしまったらしい。

 ゲーム「夢見るのローレライ」のキャラに。

 ちなみに乙女ゲームです。



 何故か。

 ええ、何故か。


 主人公クレアは生まれず、私クリスフォードが生まれたんです。

 どゆこと?


 それ以外の環境はほぼ一緒、幼なじみのアッシュ・レジャーと、レオン・マスティフがいるのも一緒。

 男性として女性陣と恋愛すればいいのかなぁとか思ってたら空気が何か違う感じでした。

 近づく女の子はアッシュとレオンが排除してしまうのです。

 一度私は「何でそんな事するんですか?」と問いかけました。

 すると二人はもごもごと「女の子に取られたくない」と言ったのです、私を。


 もう、そうなると話は変わります。

 世界は!

 クリスフォードである私と彼らの恋愛を望んでいるのでは?!


 としか思えません。

 何せほぼ近いというのは同性同士で結婚している人がちらほらいるからです。

 ゲーム中ではありえませんでした。


 しかし、女々しくないように男の子として生まれたから頑張ってそれなりに男の子しつつ丁寧であろうとしたら何か、アッシュとレオンの態度がその……ゲーム中とはほとんど一緒なのです。



「私は二人ともと仲良くしたいんです。どうしたんです? 昔は三人で仲良く遊んでいたではないですか?」

「いやその……」

「それは……」

 男友達というにはあまりにも違うように思えてなりませんでした。





 そんな日々を送っていると、ローレライの祝福の日が訪れました。

 この地区を守るローレライの祝福を持った私を祝う日。

 本来なら、ヒロインのクリスが受けるはずのものなのですが、彼女はいない。

 代わりに私がいる。


「クリスフォード、叔母様からの飲み物だよどうぞ」

「ありがとうございますローラシア叔母様」

 そう言って私は飲み物に口をつけようとすると──


「「飲むな!!」」


 手のグラスをアッシュが奪うように横から叩き、レオンは叔母様を逃がさないように掴んでいます。


 グラスから落ちた液体はぶくぶくじゅうじゅと音を立てて床を変色させました。


「ローラシア!! 私の子に毒を盛ろうとしたな!!」

「ああ、そうよ! どうして私の娘じゃなくアンタの息子なのよ! ローレライの祝福は私の娘にこそふさわしい! そんな喉焼けて仕舞え──」

「良かろう、貴様と、貴様の娘の喉を焼き、二度と声を出そうと思わなくしてやる」

 父は顔を憤怒の色に染めて叔母様と娘を連れて行きました。

 私は呆然とそれを見つめていました。

「クリスフォード、大丈夫?」

「は、はい……私は大丈夫です……ですがアッシュ、レオン。どうして……」

「さっき話してるのを聞いて急いで来たんだよ」

「間に合って良かったです」

「……二人ともありがとう」

 私がにこりと笑うと、二人は照れくさそうにしていました。





 そして数年後──

 ハルモニア学園に私達は入学することになりました。

 全寮制の学校。貴族がわんさかいる学校。


「あの御方ローレライの君では無くて」

「ああ、間違いない」


 人々の視線は私に集中しました。

 あまり良い気分ではありません。


「クリス、大丈夫か?」

「フォード、大丈夫ですか?」

「有り難う二人とも。良い気分では無いけれども大丈夫だよ」

「ソレは大丈夫とは呼ばない!」

「人気の無いところに──」


「ローレライの君」


 声をかけてきたのは、この国の第二王子「リオン・ステアリング」。

「リオン殿下、何でしょう」

「宜しければこの後食事でもどうかと」

「申し訳ございませんが、お心遣いだけ受け取っておきます、私は今日は疲労困憊状態に陥っているので」

 そう言ってアッシュ達とともに、部屋を後にする。


 乙女ゲーム時代、彼も攻略対象だったが、残念だが王室とのあれこれはごめんなのでローレライの祝福を受けた者として普通? に過ごす事とする。



 そう思った矢先──




「リアン殿下が毒を盛られた!!」

「ローレライに祝福されし御方よ、どうか殿下を!」

 このまま解毒薬が届くのを待っていてはリアン王子が死んでしまう状況に陥った。

 というかゲームでもあった。

 私は仕方なく、祝福を受けた者として浄化の歌を捧げた。


 すると、リアン殿下の毒は浄化され、目を開けられた。

「ああ、ローレライの君。君こそ私にふさわしい」

「私は助けただけです、それは思い違いです、殿下」

 私はそう言ってアッシュ達の方へ行き、行動する。


 そろそろ殿下も諦めてくれるだろうと思ってたが──


「リオン殿下?」

「殿下はやめてくれ! 私はリオン・ステアラ公爵、公爵家の養子になったんだ」

「え」

「これなら私と話してくれるだろう、ローレライの君。私のクリスフォード」

「ちょっと待て誰が貴方のクリスフォードだってんだ?!」

「その通りです! クリスフォードは私達のです!!」

「ちょ、私の部屋で騒がないでください」

「「「……」」」

 三人は黙り込んだと思ったら私に押しかかってきました。


──あー私のバックバージンさよなら──


 と思ったら、童貞をさよならさせられました。

「これならいいよな、クリス」

「これならいいでしょう? フォード」

「そうでしょう、クリスフォード」


「「「私達三人を愛してくださいね」」」


 私は引きつった笑いしか浮かべられませんでした。




 本当、私が攻めで大丈夫なのこれ?!



 おかげで私は一夫多妻もといハーレム(同性のだが)を作る羽目になりました。

 神様の意地悪ー……






  

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