Episode 11 Dirty Work:ヘイムの汚れ仕事
ヘイムの勘では、反
寄生された民間人への攻撃も厭わない
「
「俺達に指図するんじゃねぇっ!」
反
群衆の中から悲鳴が上がる。
「な、何だあれ!?」
どよめきつつ、群衆は後ずさる。
言わんこっちゃない、と思いながらヘイムはベルトから給油機のノズルのようなものを伸ばす。
「下がって」
ヘイムは人混みを押しのけながら、
「ギィィィィッッ!!」
煙を浴びると、
ヘイムは、
すると今度は樹の上から、長い触手が打ち出された。触手は逃げ遅れた数名の反
「知恵の回るやつがいるな」
ヘイムは背中の大剣を抜いて、触手を断ち切った。
「刀なんて振り回しやがって、俺たちに当たったらどうするんだバカ野郎!!」
反
「……あいつらを先に行かせて正解だったな」
ぽつりとヘイムが呟く。これほどやりがいのない任務もそうない。
突然に、トキワたちの向かった駅方面から爆発のような衝撃音がした。ヘイムは音のした方を横目で見ると、面倒そうに嘆息する。
「まったく。次から次へと」
◆
ハネズを覆う
身体機能は拡張され、大型食肉目に見られるような集音機能に特化した平衡聴覚器と身体の末尾に跳躍や走行の際にバランスをとる役目を持つ部位が発現した。
──要するに、猫耳と尻尾が生えた。
「ちょっと待って、覚醒って……思ってたのとちょっと違う……!?」
ハネズは一瞬動揺して、自身のあちこちを見回すが、すぐさま現在の状況へ立ち返る。
「とにかく、それ以上トキワにひどいことをしたら、わたしが貴方をやっつけます」
ハネズは、ロイへ人差し指を向けた。
ロイは、挑発するようにニヤリと笑う。
「嫌だね」
ロイが、トキワの頬を右の爪先で蹴り上げた。トキワの顔が歪み、頬は赤い裂傷を負う。
ハネズを抑えていた理性や慈悲を始めとした感情が、決壊した。
「……許さない」
発言した自身にも聴こえないほど小さな声が、ハネズの唇から漏れた。
ハネズのいた場所に、衝撃波が発生した。トキワとロイがそのことを認識した瞬間には、ハネズはロイへ飛び蹴りを決めていた。
ロイは両腕でガードしたが、衝撃で数メートル後ろへ吹っ飛び、壁に勢いよく激突した。壁は派手な音を立てて、めりこんできたロイの身体の形に凹む。
「なかなかやるね」
余裕の笑みを崩さないまま、ロイは立ち上がった。
次いで、ハネズの手のひらから鈎針のついた触手、
「『
ロイは全身から赤い蝋を分泌させて体を覆う。
ハネズは鈎針での刺突が効かないとみると、一気に距離を詰めた。繰り出される両拳は、ロイの全身をデタラメに殴打する。
「よくもっ……トキワを……!」
「ハネズ!やめろ!!そんなことすんな!!」
流血し続ける肩を手で抑えながら駆け寄り、トキワが声を張り上げる。
「良いじャねェか。あのメガネ野郎をブッ殺せば爆弾列車も止まるダロ?」
キュリオが口を挟むと、トキワは首をブンブンと左右に振って否定した。
「メドリーに寄生してもらったのは、ハネズにこんなことさせるためじゃねぇ……!」
トキワはハネズを背後から羽交い締めにして、ロイから引き剥がす。
ハネズはちらと後ろを窺う。トキワの顔が視界に入ると、少しずつ興奮は収まってきたようだった。
「ダメだ。オレたちの戦いって、こういう怒りに任せたようなのじゃ、ダメだ」
宥めるように、トキワは言を並べる。
「えっと、ああ、ごめん……」
ハネズは感情の持って行く先がわからず、ボロボロと大粒の涙を流す。
「交戦は控えろ、と言ったはずだ」
その場の全員が、声の方を見た。
改札口に、金髪の男が立っていた。陽の光を背に立つ男は全身を軍用ベストで包み、猛禽類のような鋭い目で獲物を狙う。ヘイム=ブロルフェルドが、到着した。
ロイはヘイムの殺気にたじろぐが、すぐさま強がるような笑みを浮かべる。
「へぇ。こいつは強そうだ」
ヘイムは背中の大剣を抜いて、構えた。銀に光る大剣と兵装に、
「対象を確認。これより戦闘に入る」
ヘイムの蒼い眼が、ロイを捉える。
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