第15話 残響
そのマンションに到着した。俺はもはや制御不能な機械と化し、久留宮家に突入するのみだ。ちなみにあそこんちの長女はめっちゃ怖いから太刀打ちできないけど、今は海外に出張中。ミィ子の存在だけがネックだが、適当に何か言ってマナミを引きずり出そう。
到着したのは、208号室だった。
(ケケケ、久留宮なんて珍しい苗字、二つとないからな。俺に見つかるためにこんな苗字なんじゃないか?)
全てのポストを調べた結果、「久留宮」の表札が208だったのだ。ミィ子が住んでいるマンションに住む「久留宮」なんだから、この部屋に間違いないのだった。
ピンポーン
「は~い。どちらさまです……か……」
呑気に登場したマナミ。
「あ、ええと、お兄ちゃん家の物置から電動のこぎり持ち出しました……そしてドアを壊しました……弁償はします……ごめんなさい」
「それで済むと思ってんのかオラ。100発ぶん殴らせろ!」
「え、いいよ、大歓迎だよ♡ お兄ちゃんにぶたれるなら、ぜんっぜんドMになれるから。大、丈、夫ッ」
「は⁉」
「お兄ちゃん大好き。ホモ卒業を兼ねて、マナミの処女をあげます♡ はい」
玄関にもかかわらずいきなりスカートを脱ぎ捨て、パンツを太ももの中間までズリ下ろして止める。
「ちょ、やめろ汚らしい!」「ええお兄ちゃんのいけずぅ、見てくれたっていいじゃあん、マナミのマ●コぉ」
最悪最低だ……こいつ、どんだけ痴女なんだ……
「あら、随分騒がしいけど、猿でも来たのかしら」
「あ、美逸お姉様。実は切幡ホモ次郎閣下がお見えになりました」
「ホモ次郎……ああ、例の卑猥な小説家・ホモサピエンスさんね。それにしても全人類にホモを普及させたいからって、そのネーミングセンスはどうかと思うけれど。心底呆れるわ」
なんで……いるんだ……
「
「ああ、不思議に思うのも無理ないわね。ここはね亮人くん、いえ、ホモサピエンスくん」
「言い直さなくていいよ!」
「久留宮ミィ子、略してクルミィの家なの。クルミィが不在だから私がいたの」
「いや理由になってないだろ」
「とりあえず中を紹介するわ、さあ上がって」
「どんだけ自分
「私はクルミィと契約を結んでいるのよ。え、どんな契約かって? そんなこと言えるわけない……実に倫理的問題が大きすぎて、とてもこんな場所で言える内容じゃないわ」
「何しようとしてんだよ!」
雪層美逸。蒼白い髪の毛に、蒼白い顔。どことなく不健康そうに見えるが、実際は意味不明なこと言ってばかりの健康体だ。唯一育ちが悪いのは、おっぱい。もしそれを指摘したら、俺の命は黄泉の国に行くだろう。
こいつはミィ子とも友達である。やつのことをクルミと呼んでいた中学三年間だったが、高校が別々になって「クルミって久留宮を略してるだけじゃない」とか言い始めて、「あなたのようなホモにも可愛い名前に聞こえるように、クルミィにするわ、よろしく」とか言って、ただでさえウザい女どもに可愛さを付加させたのだ。
「ユンユンユン……聞こえる、クルミィの声が」
なんか、手を広げてらっしゃるんですが。どうしたんですか雪層さん……
「さすがにあいつは宇宙人じゃねえよ?」
「ヨンヨンヨン……4つの角から出る矮小成分……て、一体何のことかしら」
今度は、……両手を立てて手のひらを向かい合わせにしたんですが。何がしたいんだろう。って、考えても無駄ですねハイ。
「知るか!」
「なんでよ!」
「えぇ何で俺怒られてんの?」
こいつはとにかく面倒くさい。ホモな俺と唯一話してくれるありがたい存在である一方、恐ろしく話が逸れる。Aという話がTという話に移行したかと思うと、たちまちK、そしてRへと飛躍。はてはΦに飛び、∞へと飛行する。
「分かってしまったわ、4の正体を」
「え」
「4……宇宙言語におけるソビェト連邦……やつらが日本の東西南北から攻めてくる」
「ソビエトは崩壊しただろ!」
「いえ、ソビェトは崩壊していないわ。そうクルミィが言っているもの」
「だからミィ子は宇宙人じゃねえよ!」
「あなた……まだクルミィが宇宙人じゃないって信じてるの? ならいい加減認めなさい、クルミィのことが本当は大好きだってことを!」
「対応関係めちゃくちゃじゃねえか!」
指をビッと指された俺。目から1センチくらいの位置に。刺す気かよ!
「さあ、認めなさい」
「み、認めない」
「マナミ。このホモォは、今日も今日とて自分が幼馴染を好きで好きでたまらないという現実を無視しようとしているわ。これは大きな罪と認めざるを得ない。さぁ、やっておしまいなさい!」
「らじゃー♡」
「な、何する気だ、……ぎゃああああああああああああああああああああああ」
マナミの凄まじい怪力に捕らえられた俺は、いきなり乳首をこねくり回され始める!
「あひっ、あひぃぃ」
「ほらほらほら、ここがキモチイんかお兄ちゃん! おらぁ!」
「だから、俺はお兄ちゃんじゃヒヒイイイイイッ」
「気持ちいいか気持ち悪いか、どっちだ!」
「気持ちいいでふぅぅ♡」
「じゃあもっとやっちゃお~っ。えい、えいっ」
コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ、コリコリ
「うああああああ、もう無理だっ」
くっそ、玄関で中二のチビ(全人類の妹)に乳首イキさせられるホモとか、客観的に見て終末世界だ。断固我慢……ハァハァ……ハァハァ
「シャッターチャンスはもうじきよ。勢いを止めないでねマイシスター」
「分かっておりやすマイお姉様」
「キャラおかしいだろ……ハァハァ、だっ、だああっ」
どぴゅるるるー(パンツ内)。
「ハァ、ハァ……」
「イった? お兄ちゃん」
「おのれ……」
「あはは、やったぁ。今日も勝ちィ」
「さすがはマイシスター。報酬の191円よ」
強制的にどぴゅらされた俺の成果をコストに換算したら、たったの191円……誰か119に連絡してくれ……
「さあ亮人くん、マナミにガッチリホールドされながらこんなこと言うのもなんだけど、パンツ下ろさせてもらっていいかしら」
「アホ!」
「ごめんなさい言い間違えたわ。玄関の外で、帰宅してくる人々に向かって、その白濁液まみれの惨めで哀れなパンツを脱ぎ脱ぎさせていただいていいかしら」
「……くっそ」
ちなみに、俺がとあることを認めれば、この最悪な拷問から逃れることができる。
「それとも亮人くん、あなたが世界で一番愛している人の名前を、世界で一番愛している人の家で叫びなさい。そうすれば白濁液に濡れたパンツをクルミィの顔に押し付けるのはやめてあげるわ」
「その言い方だと恐ろしい選択肢がまだ残ってるように聞こえるな!」
「誓うわ。選択肢の数は2。すなわち愛を叫ぶか、白濁液パンツを大好きな彼女の顔面に塗りたくって本気で嫌われるか、よ」
「くっ……」
俺はこの最悪な拷問を、何度も何度も受けて来た。今までは、雪層美逸本人の家で。なぜならこの人、一人暮らししてるから、いろいろ都合がいいんだ。でもまさか今日はミィ子の家にいるだなんて……
「さあ、あなたの好きな人の名前を叫ぶのよ、大声で」
俺は
俺は!
「俺は、久留宮ミィ子のことが大好きなんだアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
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