第13話 進展0
「あ、あの」
黄色い髪を指でいじっていたのは、久留宮ミィ子だった。
「ご、ごめんなさいね。わたくしたち会議中でして」
「まだ、長引くカンジ?」
「いえ、もう終わりましたわ。さてさてお話を聞きましょう。ね、あなたたち」
「う、うん……」「そ、そうだよね」
怪しい雰囲気の漂う暗いパソコンルームからゾロゾロ出てくる三人。もとの居間に戻る。時刻は23時。
「今日も、また亮人君にイヤミ言っちゃったんだ……」
「そう」「なるほど」「へー」
「どうしてなんだろ……大好きな人なのに……」
「不思議よね」「摩訶不思議だぁ」「不思議かな……」
ミィ子はもじもじしながら、俯いている。
「あなた、ところで挨拶はしたのかしら」
「してなくて……だってできないよ、あんな悪態ついて」
「ですわよね……」
女王様として豚を調教することには長けていても、恋愛相談を受けることは全くの専門外な裕奈。会話は終わった。
「ホモが好きって嘘つけば?」
「ホモとかキショイじゃん。それに、亮人君が好きってこと隠してるのに、ニセホモまで演じるとか無理」
「ニセ◎イみたいな言いぐさやだよぉ……」
とりあえず処女を卒業したい鵲鈴音に、難解な恋愛問題をどうにかすることなどできなかった。ま、いつものことなんですけどね。
「今度一緒にお弁当食べよ? 私と切幡くんと、ミィ子ちゃんで」
「気まずいよ。気まずい。何話していいか分かんないし、無言でご飯食べるとか無理」
「仏教の話題、いっぱいあるよ?」
「何言ってるか分からない」
「だよねー……」
表向き清楚なだけの淫乱娘(
要は、どうしようもない四人である。三人寄れば文殊の知恵、のはずが、四人集まってなにも無し。しかもこれが、かれこれ1年強も続いている。
「ところで、わたし数学で赤点取っちゃって……てへッ……ミィ子ちゃん教えて?」
「うん、いいよ。相談乗ってくれてるし」
「っしゃあ!」
経験則:ミィ子に教えてもらったら追試に受かる(鈴音の場合)
「ところでですけど、そろそろ豚を調教したいんですわ、わたくし。誰かいい人はいませんかしらねー」
「優しい亮人君だったら引き受けてくれると思うよ。2万円払えば」
「鈴音、2万円を用意できるかしら、できれば毎日」「ムリ♡」
「あの、……わたくし本当に豚の調教に飢えてて……ダメかしら、切幡亮人。もちろん無料で」
「ダメかな。だって、私のかけがえのない大好きな人だもん」
「うぶっ……」
吐血した女王様。ピュアすぎるハートを汚した罪悪感は、汚い血となって放出されるしかなかった。
「ミィ子ちゃん、カフェ行かない?」
「え、いいよ」
「じゃあ、男の子も誘うね」
「亮人君以外の男子とか、興味ない。ごめんだけど二人で行こ」
「えーと……カフェっていっても、男だらけの密室に二人っきりで全裸突入して、その後どうなるのか楽しむ特殊カフェのことを言ってたんだけどなあ」
「あ、断る」
「だよね」
一度でいいから体験してみたい。
大量の男に
ぐちゃぐちゃにされる私自身。
by 冴香
*
「今日は相談乗ってくれてありがとう。何も進展なかったけど……楽しかった」
気まずそうな笑顔で、部屋を後にするミィ子。
「じゃ、じゃあね~」「またいらして……ネ」「バイバイ。幸運はきっとくるよ」
結局、今日も何もできなかった三人。
ミィ子は玄関ドアをガチャッと閉めた。
「どうするのよ、これじゃどうにもこうにもなりませんわ」「仕方ないじゃん、方策が何一つないんだよ?」「1年も経つのに方策0ってのが悲しすぎるよね」
恋愛相談とか言いながら、各々が勝手に目的を達成しようとしている現在。唯一達成されそうなのは、鵲鈴音が数学の追試に合格することだけだった。
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