第10話 とりあえず帰りますかね。

 鵲さんの家にやってきたそいつは、俺の人生を狂わせた女だった。


「……は?」


 久留宮ミィ子は俺を一瞥し、次に花京院お嬢様を一瞥(っていうかもう完全に俺ってば完全に花京院お嬢様をお嬢様認定しちゃってる。うう)。


「なんでいんの」


「こっちのセリフだ。ハッ、お前、女王様にシバかれる趣味あったのか」

「いやお茶しに来ただけなんだけど」


 え……


「あ、ごめんなさいね豚、さっきのはイタズラレベルの嘘よ」

「ざっけんなよコラ!」

「女王に向かってそんな口きいて、尻穴掘られて快楽堕ちしたいのかしら?」

「……」


 いや何悩んでんだ俺! ねぇよ!


裕奈ゆうな、コレどういうこと」

「知らないわ。神のみぞ知る、てトコね」


 金髪くるくるヘアをなびかせた花京院お嬢様……髪の毛重たくないか?


「俺、帰る」

「え、ダメだよ、わたしの潮飲んでないじゃん」

「いつそんな約束したよ!」


「ダメだよ切幡くん、私は切幡くんと三角椅子に座って真剣に話し合いたいの」

「最初からふざけてるじゃねえか!」


「そうよダメよ。あなたはこれからわたくしのロウソクプレイの餌食になるんだから」

「え。……ハァハァ」


 ってダメだ俺! なんか目覚めちゃってる気がする、ダメだあっ!


「いや帰れよ」


 細い目で俺を一瞬見て、すぐに目を逸らす久留宮ミィ子。


「……しゃべんじゃねえよ」

「邪魔なんだけど。帰ってくんない?」

「帰るつもりだが?」


 俺を引き留めようとした三人とはテンションの差が歴然。無関心ここに極まれり、ミィ子はもはや俺に興味すら無いらしい。ただのゴミとしか見てない。


「すいません、皆さん。俺帰ります」


 と、鵲さんが


「じゃあね。潮は処理しとくね」

「当たり前だ!」


 と、花京院お嬢様(もう認めた。俺は彼女をお嬢様認定した。それでいい)が、


「明日からは健全な関係を持ちましょう?」

「いや無理だろ!」


 と、足摺さんが


「またね。バイバイ」

「終わり清楚ならすべて善しってのは成立しない!」


 手をふりふりしている足摺さん。


 その横にいるウザい女を睨む俺。


「さっさとこの宇宙から消えろよ」

「お前が先だ」


 俺は鋭い睨みを利かせ、そのまま踵を返す。

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