第9話 ゲームで女子を好きになれるか否か

 今現在、俺は男性向けのエロゲを、三人のホモ好き女子とともにプレイしている。


「ちょ、そこは『おっぱいをべろべろする』を選ばなきゃだめだよぉ!」

 

 鵲さんが頭を抱えるが、


「無理だろ! だって選択肢が『1.おっぱいをペロペロする』『2.おっぱいをグニュグニュする』『3.おっぱいをべろべろする』『4.おっぱいをおっぱいおっぱいする』だぞ? 4とかもはや日本語じゃねーぞ!」

「女の子が乳首舐められて感じちゃう選択肢を選ばなきゃあー。これだからホモはー」


 呆れたようにため息をつく鵲さん。あんた、親に呆れられないようにエロゲやってることバレんじゃないぞ。親が哀れすぎる(ま、俺もホモだから人のこと言えないんだけどね☆)。


「え、んだよこれ!」

「切幡くんがべろべろ選んだから、tecokeyだけで終了しちゃったんだよ」

「何語の発音だ! てか、……ここで終わりってのは嫌なんだが」


 そのとき、清楚な足摺さんが黒髪を持ち上げながら、清らかな声を発した。


「違法じゃない? 未成年だよね、私たち」


 え、なんで違法って分かってるならそんなに余裕ぶってるんだ? てか足摺さん、さっきから興味津々で見て股間押さえてますけど大丈夫ですか……?


「この鵲に違法なんて単語は存在しませんわ。そう、このわたくしが君臨している限り」


 花京院お嬢様は、このエロゲに出てくる女王様風の金髪ロング女子高生をはるかに上回る高等女王様みたいな風貌。さっきから一人だけPCから離れる頻度が多いのは、女王とは何かを知っているがゆえにエロゲヒロインがウザいのだろう。


「この劣等ヒロインが高等な女帝であるわたくしを罵るところを想像すると……笑えてきちゃいますわ! あーっはっはっはっは。ちょっとお腹が痛くなってきてよ? 胃薬ちょうだい鈴音、あーっはっはっは!」「そこの棚~」


 エロゲで爆笑って初めて聞くぞ!


「ねえ切幡くん。どこ見てんの? エロゲに集中しなきゃ」

「勉強に集中しなきゃ、みたいなカンジで言うの間違ってないか?」

「切幡くんにとってはこれも勉強だよぉ。ほらほらぁ、わたしの股間触りながらでいいからさぁ、集中しよ? ね? ハァ……ハァ♡」

「そのオプションは受け付けねえぞ! 俺はホモだっつってんだろ!」

「今更ぁ? 隣にエロゲで発情したメス猫ちゃんがいるんだよぉ?」

迷惑メイワクなんだよ、正直!」

牝枠メスワク? そりゃ女だからぁ♡」

「頭だけじゃなく耳も腐ってんのか!」


 そこに、足摺さんがすり寄ってきた。


「え、何?」

「あ、あのね……」

「うん」

「実は私、ホモってだけじゃないんだ。実は男性向けの作品にも興味あるっていうかその……清楚気取りながら裏では乱痴気騒ぎに憧れるって……変、かな?」

「変じゃなくて変態の間違いだ」

「うぐっ……ショック、受けちゃった……」

「普通だろ!」

「そういう意味じゃないの。私、『超変態』を望んでるのに、まだまだだなって」

「何で凹んでるんだ!」


 そこへ、つかつかと戻ってきた花京院お嬢様。


「あなたたち全然進んでないじゃないの。おどきなさい」


 二人の女子を巨乳で跳ね飛ばし、俺を鞭でぶっ叩く。


「くひゃっ」「きゃっ」「いってえええええええええ!」


 なんで俺だけ鞭打ちされたんだ! てか足摺さんは羨ましそうな表情やめて!


「こんなの、こうしてこうしてこうしてこう。はい、攻略完了よ」


「え……早い」「さすがだね、花京院ちゃん」


 あ、足摺さんっていつもは「花京院ちゃん」って呼ぶんだ。でも調教プレイ中は……って何考えてんだ俺。


「なんかヒロインをAbraham Rincolnエイブラハム・リンカーンできるトコまで来たわ。つまらないゲームね」


 普通の女子の反応だ。ま、あんた女王様だから普通の枠には収まってないけど。あと超大国の父・エイブラハムに謝れ。


 と、足摺さんが俺にさらにすり寄ってきて、耳に吐息をふーっと。


「ちょっ」


「ね、ホントは花京院ちゃんって、エロゲに感化されて女王様やってるんだよ。最終的に女王様って犯されるもんね」

「え……それってホモと逆行してるんじゃ」

「ホモはホモ、凌辱は凌辱。女の子はいろんな刺激が欲しいんだよ」

「俺は女が嫌いだから言う資格ないかもだけど、全ての一般女子に謝っといたらどうだ?」

「え? なんで? 女子は色んな刺激を求めるものじゃないの?」

「……なんでって言われても」

「教えてくれなきゃ、唇奪っちゃうよ?」

「教える。だからそれだけはやめてくれ」


 俺はこれこれがこうこうだからと口から出まかせを言ってみた。


「そうだったんだね……普通の女子って凌辱が嫌いだったんだね」

「統計はないんだけど、まあたぶん」

「いいこと思いついた、私が統計取るね」

「やめとけ!」


 ところでエロゲは、鵲さんがソロプレイ状態になっている。


「あああああああああああああああっ。わたしがこのヒロインに代わりたいよぉぉ。もちろん♂になってから! そしたらホモ(受け)が体験できるっていうのにぃぃぃぃ!」

「ちょっと何言ってるか分かんないですね」

「あ、あのさ切幡くん、お願いがあるんだけど」


 目を♡にさせながら、ハアハア言い、よだれを垂らしている。


「わ、……わたしに……ぶっかけてぇぇ!」

「ちょっ」


 PCの前の椅子から離れるやいなや、俺に抱きついてきた!


「今、ヒロインが男7人にぶっかけられるトコで、ていうかボタンを何いやらしい度も何度も完堕ちヒロクリックしインに何発てぶっかけもの白濁液できる機能を発射し付を使ってる着させているのはわたしなんだけどね……ハァハァ、」

「うんとりあえず落ち着こうか」


 方法が分からな過ぎて、結局頭を撫でてみた。


「あ、わたし切幡くんのこと好きかも♡」

「展開早すぎだろ! 神様も唖然とするレベルだわ!」


 俺は男が好きって、何回言ったら分か――




 そのとき




 俺の目に飛び込んできたのは




「え、鵲さん」




 スカートから、白い脚をジャバジャバ伝って溢れ出る、潮だった。


「興奮しすぎだ!」


 バシッ


「いだっ」


「もういい! こんなゲームで俺が脱ホモするなんて発想は捨てるんだ!」


 と、足摺さんが


「脱ホモって響き、新鮮だな」

「そんなキラキラした目で言われても」


 と、鵲さんが


「ぷっしゃアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」

「言葉で現実を表現してんじゃねえええええええええええええ!」


 と、そこへ戻って来たのは花京院お嬢様(ずっと思ってたけど俺、この人のことお嬢様認定しちまってる。いつから俺、この人の下になったんだろ……)。


「切幡亮人? お客様が来るらしいわ。このマンションの住人で、あなたの知り合いよ。わたくしの従順なペットでもあるけど」


 なん……だと?


「それって……誰ですか」

「久留宮ミィ子、っていうペットよ」

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