第5話 清楚系美少女、ホモと対面

「こんにちは」

「あ……こん、にちは」


 黒髪ロングの美少女、降臨。エレベーターのドアからこんな美人が出てきたら、さすがのホモでもビクる。

 彼女、足摺あしずり冴香さえかは、俺にはどうでもいいことだが、学年1,2を争う清楚系女子。学年屈指の超イケメンFは、コクって2秒でことごとくフられた。俺の元カレでガタイのいい龍也くんも、悔しいことに彼女とセックスしたいって言ってた。


「こんなところで立ち話もなんだから、部屋に上がろ? ま、鵲さんちなんだけどね」


 いまだにぶっ倒れている鵲さんをおんぶした足摺さんは、にこにこしながら俺のほうを見る。その綺麗な顔に、「きず」があるのは……


「冴香、今日の調教がもう済んだとでもお思い?」

「花京院ちゃん……まだハードなのが待ち構えてるの?」

「首絞めに吊し上げ、石責めに火あぶり、まだまだあるに決まってるじゃない」


 え、えええ⁉


「そうだね……興奮しちゃうな♡」


「いや待て、おかしいだろ!」


 足摺さんは「ん?」と首を傾げ、にこりとほほ笑む。


「私って清楚なイメージでしょ? でもさ、中身は全然違うよ。外面を保つのって精神的に苦しくて、お嬢様にビシビシいじめられてアヘアヘ悦んでる卑猥でふしだらなメス豚っていう本来の私を出せるのは、花京院ちゃんの前だけなんだ」


 困ったような笑顔を向けられる。

 正直こっちが困るんだが……


「足摺さん、要はドMってこと?」

「その認識でもいいよ。でも、もうちょっと正確に言うと、ドMなメス豚かな」


 あはっ、と軽やかに笑う。黒髪をなびかせて、エレベーターのボタンを押す。


「分かったかしら。冴香は一般人の思っているような清楚系とはかけ離れたメス豚なのよ。あなたも幻想を見ていたの。でも悪く思わないでちょうだいね? あなただって男が大好きな男、すなわちブタホモなんだから。いい? ブタホモに人間の事情を理解する権利は無いのよ?」

「ブタホモじゃなくてホモだ」

「そ、そこを認めるだなんてあなた、筋金入りのホモね……ハァハァ、やっぱり好き♡」

「やめろ!」


 俺は女が嫌いだってのに、女はホモが好きすぎる。いや、一般に女性がホモを好きっていうのは違うかもしれないけど、この3人のホモ好きが異常すぎてそう思えてきちゃうんだ……


 エレベーターの扉が開く。


「先にお乗りなさい?」

「分かった、花京院ちゃん」

「あなたは後よ?」

「まあ、別にいいけど」


 黒髪ロングの美少女の清楚系な足摺さんと、くるくる金髪ヘアのお嬢様然とした花京院さん。二人がエレベーターの左右に寄って、ちょうど中央が空いている。


鈴音すずね、起きなさい」

「ふぇ?」


 マヌケ声とともに目を開けた鵲さん。


「あはっ、やっと起きたね鈴音ちゃん」


 お嬢様と清楚美人は、まだ夢と現実を行き来しながら寝ぼけている鵲さんを、中央にセットし、


「ね、切幡くん。鈴音ちゃんをズタボロのぐちゃぐちゃにしてあげて? 私、静かに見てるね」「さあ切幡亮人、本能の赴くままに鈴音を快楽に溺れさせて? わたくし、見下ろしているわね」


「無理だ! なんで友達をホモの生贄いけにえにしてんだよあんたたち!」


 ありえない行為に現実を信じられない俺に対し、


「だって私、見るの好きなんだよね」

「わたくしは快楽に溺れきったところを責めるのが好きだわ」


 ありえないことをのたまった二人。


「あ……切幡・Hホモサピエンス・亮人さま……わたしにぶっかけて?」

「何をだよ! てか誰だ!」


 やっと目覚めた鵲さんは、開口一番とんでもない卑猥発言をぶっ放す。


「とりあえず冗談はこのくらいでいいわよね?」「そうだね。不審がられないように冗談を切り上げるころだよね」


 いやおかしいから。ホモが好きってところから嘘であってほしいから。


「いやぁ、よく寝たぁ。あ、切幡くん、わたしの部屋703だよ。来てね?」

「703の部屋に行くことが義務になってる以上、少しでも女と接さない時間が欲しい。少し時間をくれ」

「うん。待ってる。オナりながら」

「自重しろ!」


 寝ぼけている鵲さんと他二人の姿はエレベーターの扉に消える。


 さて、俺はエレベーターの「↑」ボタンを押さなきゃならないわけだが


(どうする……逃げるか?)


 辺りを見回す。


(怖い人はいないっぽいな。もし襲われたらヤバいからな。ま、性的な意味でヤバいんだが)


 ホモたる俺は、何人ものガチムチに掘られて昇天→道端に放置というパラダイスに興奮してしまいそうだ。それが怖くて、辺りに怖い人たちがいないことに安堵する。


「くっそ、俺ってホントにヘタレだな。たかが女子の頼みなんか断って、逃げれば良いのに。頼まれたら断れない性格、受けの宿命なのか?」


 俺がホモ(受け)じゃなく、ホモ(責め)だったら……たぶん、カッコよく女子をあしらえたんだろうな。この前ホモビで見た男優は、魅力的な僧侶系筋肉マンで、言い寄って来た女子に「拙僧は用があるゆえ君の誘いは断る」って決めゼリフを置いて、愛しい彼氏役男優(受け、痩せ型)の家に向かい、到着するやいなや彼氏役とディープキスし、玄関で僧侶の長々しい服がすべて脱ぎ捨てられ、激しい腰振りでヤり始めた。


「ああ、俺ももっとカッコいいホモになりたいっ」


 女子の家に行かなきゃならない状況に落胆している俺なんて、ホモのなかでも最低の部類だ。フェラ●オも下手だし、尻穴もガバガバだし、イキ顔も全然魅力的じゃない俺。底辺ホモここに極まれり。

















「何してんのあんた」




「……え」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る