アネモネの花が咲くころに

@osora0919

第1話

時々夢で見る 忘れられない あの時の思い出–––––


バシッ 

お父さんの手が勢いよくお母さんの頬にあたる

薄汚いフローリングにお母さんが倒れ込んだ

「お母さん・・・!」 

わたしは引き立った顔で、反射的にお母さんに声をかけた

「うるせぇ!お前は黙ってろ!」

お父さんは酒に酔った真っ赤な顔で、怒り狂っていた

「もう・・・やめて」 

母が弱々しくつぶやくように言いながら、フラフラと立ち上がった


「離婚したい、とか何様だ。誰が毎日お前らの飯を食わせてやってると思ってんだよ!」


わたしは、父のあまりの剣幕に、思わず泣き出してしまった。それと同時に嗚咽がでる。


「うぅ・・・も・・・・ぅ、ゆる、・・・して」

「だまれ、だまれ、だまれ・・・・・!」


父はわたしに拳で殴りかかろうとした


「やめてください!」


めずらしく聞いた母の大声。 


母が咄嗟に阻止してくれたおかげで間一髪まぬがれる。と、同時に母はわたしの手を握り、父に鋭い目線を向けた。


「もう、決めたわ・・・。和佳奈、お母さんね、お父さんとの離婚を決めたわ


この子だけは命をかけても守る。


あんたみたいな人には渡さない・・・・!」


母がそう言った瞬間、父の目がスッと冷たくなった


「・・・・・・・あぁ。そうかそうか。なかなか思いきったこと言ってくれんじゃねえかよ

じゃあ、お前のことを二度と思い出さないためにも・・・これを捨ててあげるから感謝してしろ‼︎」


そう言うと、父は近くにあったかたい瓶に入っている観葉植物を手に取った。


もういつものお父さんじゃない


その瞬間、母の顔が豹変した。


「嫌です!それだけは、それだけは、やめてください!」

母が父の腕を掴んだ


「うるせぇ、離せよ!」


母が趣味として大切に育てていた、いくつもの観葉植物たち。

   




そんなのも壊されたら・・・・。








わたしは反射的にギュッと目をつぶった。

–––––直後




ガシャン!










今まで聞いたこともない、鈍くて悲痛な音


わたしはおそるおそる目を開けた。









そこには–––––––

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