嫌われている……
イアン・クリスタ。
攻略対象者の一人。
ゲームでは、天才騎士と騒がれていたけど本人は天才と呼ばれるのが嫌い。なぜなら、彼はかなりの努力家だからだ。小さい頃から色んな人の期待を背負って生きてきた彼にとって天才と呼ばれることに抵抗があった。
天才と呼ばれる度に自分の努力を知ろうとしてくれないと思っている。
それもあり、彼の性格はかなりひねくれている。
そんな彼を天才という肩書きだけじゃなく、彼自身をちゃんと見てくれている主人公ヒロインに心を惹かれていくのよね。
そんな彼と会うのはまだまだ先だと思っていた。
思ってたのに、隣にイアン様が座ってるのはなんだが変な気分。
しかもものすごく機嫌が悪い。
それは私が悪いんだけどさ。
「.....あんたと会うのはこれで二回目か? オリヴァー」
「はい、そのようです」
「二人は知り合いなのですか?」
イアン様がオリヴァーに話しかけた。
二人の会話から知り合いなのかなと思って聞いたらイアン様に睨みつけられて、軽く舌打ちが聞こえた。
嫌われてる.....。死亡フラグが立ってる気がする。
彼とは、関わらないようにしようと決めた矢先、なぜか子猫がイアン様になったんだもん。
回避しようがなくない!?
ゲームで、嫌われてたのはイアン様が子猫だったからなのか。納得だわ。
「前に一度だけ。その頃はイアン様はまだまだ幼かったですが」
「幼いといっても俺が五歳の時だろ」
「そうでしたね。すみません」
話を切り替えてもいいものか。
とりあえず誤解を解きたい。
二人が話してるのに間に割って入り、イアン様に睨まれそうだけど、先延ばしにしちゃうのは良くない気がする。
「あ、あの。さっきオリヴァーさんが見たのは、子猫がイアン様になったのでパニックを起こしてしまって」
「で、俺を殺そうとしたと?」
「違っ.....。私はただ、イアン様の体を切って子猫サイズに戻そうとして!」
「それを殺そうとしてんだろ!」
「大丈夫です! 心臓さえ傷付けなければ人は生きてられます!」
ん?
オリヴァーさんが驚いた表情になってる?
イアン様なんか、呆れたようにため息をついたぞ。
私、なにか間違えてた? ゾンビ漫画では確かに.....。
いや、あのゾンビ漫画はコメディも含まれてたっけ。
普通のゾンビ漫画は頭を狙わない限り死なない設定だけど、あのゾンビ漫画は心臓を狙わないと死なない。
どっちが正しいんだろ。
「お前.....、馬鹿だろ」
「へ!? 急になんですか!」
「どうしてそう思ったんだよ」
「だ、だって.....虫だって足がもげようが首が無くなろうが生きてるじゃないですか!人間も同じでしょ!?」
虫は手足や首が無くなろうが生きてる。
それなら人も同じだと私は思ってる。それがゾンビ漫画を読んで確信したのよ。
「いやぁ.....、んー。困りましたね。なんて説明すればいいんでしょう」
「だな。その間違えて覚えてしまった知識をなんとかしないとな」
間違えた? 何言ってるの。この知識が間違えてるの!?
だったら正しい知識はなに?
「え、え~と、人の体を切るというのは好ましくありません。大量出血で死ぬ可能性がありますし、奇跡的に生きてたとしても感染症で死にます」
オリヴァーさんは苦笑しながら説明してくれた。
そうだったんだ。知らなかった.....。
知らないからやっていい理由にはならないんだけど.....。
私はイアン様を殺そうとしたということになる。
ああーー!!
嘘だよね! お願い、嘘と言って!!
タイムカプセル! じゃなくて、タイムリープしたい!!
時間よ戻って!! 出来ることなら私がこの世界に生まれた時間に!
「自分がなにをしたのかわかった?」
イアン様は呆れながら聞いてきた。私は言葉が出なくて頷くしかなかった。
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