一軍女子(仮)の東海さんは北上くんと付き合いたい/百度ここ愛 への簡単な感想

 応募作品への、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。



一軍女子(仮)の東海さんは北上くんと付き合いたい/百度ここ愛

https://kakuyomu.jp/works/16817139554829016988


フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。百度さんの宣言と同じですね。

東海さんは一軍女子(仮)とのことですが、北上くんは二軍男子(仮)なんだろうなと思います。つまり東海さんはなんちゃって陽キャなのですが、北上くんはなんちゃって陰キャなのだろうと。

なんちゃって陽キャなのでなんちゃって陰キャを主導していたのですが、機を見た北上くんがなんちゃってを解除しちゃったので、実は陰キャと実は陽キャで逆転しちゃってもう北上くんに主導されっぱなしという状態に。

その混ざりあいが、ちょっとコミカルに、ちょっとリアルに、作品映えしていると思います。


上手いなと思ったのが、時系列操作をしていないところです。

本作は告白の返事直後からスタートしているのですが、時系列操作(時系列を前後させたり、一定の時間を置いたり、状況説明の段をとったり)をしていないのです。構成的な編集が入っていない。そして場面のスタート地点がやや特殊で、東海さんの思考を並走させている。これにより小気味よく読める、ライブ感の高い物語進行が生まれていると思います。

このスタイルだと状況理解がやや難しくなりがちなのですが、本作は東海さんの思考の端々で状況説明をさりげなく行っているので、読者の理解が追いつかないこともなく。ライブ感のある場面を作りつつ、読みやすさにも配慮がされていると思います。

センスと技量を感じました。読んでいて気持ち良かったです。相応の実力がないとできないことをさらっと行っていると思います。このさらっと感も良いですね。


それに関連して気になったのが、冒頭の読者理解のグズつきです。

本作はインパクトのある台詞を書き出しに持ってくるという常套テクニックを用いているのですが、多くの小説は時系列操作(同上)を行うことでやや強引にインパクト台詞を書き出しに持ってきがちです。クライマックスを冒頭に持ってきて、そのあと時を戻して基本設定を説明して物語本編を開始するなど。

そのため読者は冒頭インパクト台詞を感知すると、時系列操作を状況理解の主な選択肢に入れたうえで冒頭を把握する癖がついていると思います。

ただ百度さんには技術があるので、時系列操作をせず場面を素直に流しながら冒頭インパクト台詞を置けているのです。これは冒頭インパクト台詞構成においては、むしろ搦め手に近いとフィンディルは感じました。

なので「私のこと好きじゃないなんて、間違ってるよ」と「――やってしまった」のあいだに一日くらい空いているんじゃないか、みたいな読まれ方をされてしまう危険を感じました。「昨日の告白で何であんなこと言ってしまったんだろう」の流れで基本設定を説明して状況を整理する、みたいな解釈で。実際フィンディルはその解釈を仮採用しました。しかしその解釈を仮採用すると、当然ですが冒頭の理解はグズつく。

技術がある分ナチュラルな搦め手を選べて結果的に読者理解がグズつく、という懸念があるので、冒頭で「時系列操作はありませんよ、たった今起きているできごとですよ」というケアがより厚くできれば、もっとスムーズに物語に入れるかなあと思います。

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