西原くんは東屋の下で北岡さんに指南する/空何(くうか) への簡単な感想
応募作品への、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。
指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。
そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。
西原くんは東屋の下で北岡さんに指南する/空何(くうか)
https://kakuyomu.jp/works/16816927862865348256
フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。空何さんの宣言と同じですね。
ボケツッコミの局所的な笑いはありますが、それ以上に西原くんと北岡さんのコミカルな雰囲気が焦点だと思いますので、爽やかでシンプルなコメディ真北で良いと思います。
読んでて少し気になったのが、序盤中盤のツッコミがその場のテンポ感を重視しすぎてるような気がしたことです。ツッコミで笑いをとりにいっているというか。
西原くんは「女子とのコミュニケーションに慣れていない」「北岡さんの容姿がタイプ」「将棋指しとしての矜持がある」という三要素を携えて北岡さんと軽妙なやりとりをするわけですが、一部ツッコミにこれら三要素をあまり感じませんでした。この三要素を持つ西原くんが「おいこら、処理落ちするな」という言葉選びをするだろうか、という気持ちを持ちました。
ボケには人物はあまり出ませんけど、ツッコミには人物がめちゃくちゃ出るので、ツッコミでその場の笑いその場のテンポ感を重視しすぎると、人物が崩れる危険があると思います。読者はツッコミは笑いとして面白ければ良いという目で見てくれますけど、笑いの面白さと人物描写の面白さの両面が一ツッコミで出ているほうがなお良いと思います。
序盤から中盤のツッコミで、遠慮がち・薄っすら好意・若干のモヤモヤをしっかり押さえておくと、よりキャラが鮮やかに滑らかに見えるような気がしました。もちろんテンポ感を完全に潰しては駄目ですけどね。歯切れ悪くかつテンポ良く、みたいなツッコミ感は空何さんなら全然出せると思います。
ボケはボケですがツッコミは人物や雰囲気を示す繊細な描写ツールと考えれば、漫才にはないコメディの難しさを楽しめると思います。
大魔王とハイタッチのくだりはめちゃくちゃ上手いと思います。この緊張と緩和の出し方はコメディを書き慣れている人の筆致ですね。手練れのテクニック。物語の規模感を熟知した緩和の入れ方だと思います。
さらに上記指摘を踏まえることで、三要素により歯切れ悪かった西原くんのツッコミが好意・将棋指南への裏切りによって解放されて全開のツッコミへ移行する流れがより洗練されると思います。ツッコミのトーンだけで西原くんの内面が表現できると思います。
序盤中盤のツッコミを調整してみると、「~ぶん投げるじゃん?」のツッコミをまた違って見せられると思います。良くも悪くも肩の荷が下りた感がもっと出て、このツッコミにおける読者の「ふふっ」に厚みが出ると思います。
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