梅雨の公園の東屋で/桜庭ミオ への簡単な感想
応募作品への、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。
指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。
そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。
梅雨の公園の東屋で/桜庭ミオ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862469692671
フィンディルの解釈では、本作の方角は北北西です。桜庭さんの宣言と同じですね。
本作を読んだフィンディルの印象ですが、月乃には桜庭さん自身が投影されているような感じがしました。
ストーリーラインだけを見ると中学時代の同級生と再会して何やかんやで交際に発展したというものなのですが、本作にはそれだけでない月乃の掘り下げがあるんですよね。
しかもその掘り下げ方にある程度の生々しさがある。性格面の掘り下げもそうですが、「第三話」の冒頭からは月乃が生きる世界がふわっと香るような印象がありました。
そして本作は、そんな月乃をすごく大事にしている印象がありました。可哀想な目にあわせたくない、幸せになってほしい。蓮が月乃に対して都合が良すぎるのは、蓮が「月乃を大事にするためのキャラ」であるからなのだろうと思いました。個人的に、都合が良すぎて怪しさを感じちゃったくらいなんですけど。
ストーリーラインに関与しない生々しい掘り下げと、掘り下げた人物を作者が大事にしているところから、月乃は桜庭さんが自己をある程度投影した人物なのかなという印象です。
ただ月乃の掘り下げは「コミュニケーションが苦手な女の子」というエンタメ的なキャラ付けに収まりうるものですし、再会→交際というストーリーラインが整備されているので、北北西という解釈を示したいと思います。
指摘があるとすれば、もしかしたら桜庭さんは北向きにするために月乃の掘り下げにセーブをかけているのでは? という疑念があることですね。
読者に広く受け入れられるように北向きを意識された(それで再会→交際を整備した)とのことですが、同時に月乃の掘り下げも「コミュニケーションが苦手な女の子」に留まるようにセーブされているのではないかな、という気がしています。
北向きにするために、北のアクセルを少し踏むと同時に西のブレーキも少し踏んでいる感じでしょうか。
ただこれだと総合的に北も西もそこそこみたいなバランス感に留まってしまうような気がします。北のアクセルを踏んで北向きに整備したのなら、西のブレーキは踏まずにしっかり桜庭さんなりの深い掘り下げを示しても、意外と敬遠はされにくいんじゃないかなとは思います。
これは想像ですが桜庭さんはもっと登場人物の視界・世界を、舞う埃が見えるくらいの生々しさで描きだせるんじゃないかなと思います。そのうえでストーリーラインや展開で北向きの見せ方を研究すれば、北北西や北西で広く深く価値を認められるような作品になるのでは、と期待します。
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