第四章 多趣味という特技

 そろそろ僕がどのような人間なのか、掴めてきた頃だろうか。えて日本人お得意の何にでも名前をつける文化カテゴライズ不断ふんだんに使って、改めて簡単にまとめてみよう。

 高校三年生の男の子で、一人称は僕。風呂場に於いて酷い健忘症を持つ、多趣味なパンセクシャル。こんなところだろうか。

 そう、このカテゴライズというものは簡潔に人物や物事をまとめることができる非常に便利なものなのだ。だからこそ厄介な部分があり、多少その分類から離れていたとしてもそこに括られてしまって、偏見の種にもなりかねない。三章でこんなところまで書けばよかったな。

 香織とかいう奴がこんなこと言ってたなあ、くらいに頭に入れておいていただければ幸いである。あくまで「その人はその人だ」という目線を大切にしてほしい。


 さて、僕の好きなことの話に戻るとしよう。長々と文を連ねてしまったが、正直嫌いなことというのはあの一点しかない。しかし好きなことは沢山あるので、そればかりを書いていってもマジでハリーポ○ターシリーズ一冊分くらいの文章量になってしまう。それだけ充分に気をつけながら書いていきたいところである。


 僕は興味を持ってから実行するまでのスピードがかなり早い。風呂場で思いついた場合は例外だが。思い立ったが吉日とまでは言わずとも、アイデアを行動に映し出すのが格段に早い。マジ、フッ軽。


 ギターに興味を持ったとき。祖父の家にあったギターを一ヶ月ほど拝借しただけで、五曲も弾き語れるようになった。

 小説を書くことに興味を持ったとき。当時は別のアカウントであったが、連載開始から三ヶ月後にはこのカクヨムでジャンル別月間ランキングで二位にのっていた。

 こんな具合に、何かにはばまれない限り、好きになったことに対する熱量が半端じゃない。何故これが勉学に生かせなかったのか、それだけははなはだ疑問であるが、これは紛れもなく長所と言えるだろう。


 しかし。さまざまな趣味を持っている僕だが、正直なところ特技と呼べるものは一つも持っていない。ギターの腕前もどこかのタイミングから成長していないし、小説に於ける言葉選びもそこまで上達していない。早押しクイズが好きだと言ってもクイズ研究会なんかに入っているわけではないし、バスケットボールが好きだと言っても中学時代の部活は放送部だったので全くの無関係。なんなら放送部も幽霊部員だったので顔はほとんど出していない。

 どう足掻あがいても全て、趣味の範囲内から出ることはできないのだ。


 その要因としては、僕が一つの物事を長く続けることが非常に苦手であることが挙げられる。実力主義の最近の日本に於いてこれはかなり致命的な性格なのだけれど、仕方がない。多分これは一生変えられないものなんだろうな、と覚悟している。


 誤解を恐れずに言えば、僕は飲み込みが早く、大抵のことならすぐに周囲の人より上手にこなせるようになる。待ってくれ、読むのをやめないでくれ。確かにここだけ読んだらただのナルシスト野郎だけど今から面白いこと書くから。ステイプリーズ。あーゆーおーけー?


 一言で言えば僕はきっと器用なのであろう。自他共に認めるコミュ力お化けという点にもあらわれているように、多分要領がかなり良い。

 曽祖母の「自分が聞きたいと思う人の話はしっかり聞いといた方がええ」という教えを割と素直に守ってきた僕は、昔からいろんな人の話をよく聞いて、必然的に理解力や読解力をつちかってきた。おそらく「要領が良い人」というのは「人の話をしっかり聞いて理解できる人」だと思う。人の説明をよく聞いているから言われたことができるし、いろんな人の話を聞いているから抽斗ひきだしが増えて応用が聞くようになるのだ。だからきっと、器用になりたい人は、人の話をたくさん聞くようにすると良い。できるだけ斜に構えず、フラットに。

 無論、明らかな暴論なんかに耳を貸す必要はない。少しでも自分が興味を持てて、自分の抽斗になり得ると僅かでも思ったならば、きっとその話は聞くべきだと思う。そうしていればいずれは器用なんて言葉を飛び越えて、天才と称されることだってあり得るだろう。


 ……だが、僕は少し違う。人の話をよく聞いていて器用であるにも関わらず、ある程度できたことに満足して途中で辞めてしまうのだ。これがいけない。非常によろしくない。端的に言って愚かであり、器用貧乏たる最大の原因だ。

 自分にボロクソ言われすぎてつらくなってきている自分がいるのでそろそろやめようと思うが、それくらいには飽き性というのは致命傷だ。人に偉そうなことを説く前に、自分が途中で投げ出さないことを一生の課題として、今後を生きていこうと思う。

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