街中で女の子とぶつかったら、ヤンデレ系Vtuberが本当に病みました。なので、僕は学校一の美少女探偵に助けを求めます。 ~女難とヤンデレと探偵と~
第8話 パンツに仕掛けた盗聴器でナニを聞きたかったのでしょうか……。
第8話 パンツに仕掛けた盗聴器でナニを聞きたかったのでしょうか……。
シュルス先輩に依頼した日の放課後。
捜査のために、シュルス先輩は僕の部屋を訪れていました。自称探偵の変な人とはいえ、シュルス先輩は異性のみならず、同性も羨むような絶世の美人さんです。女の子を部屋に上げるだけでもドキドキなのに、整った容姿も合わさってそわそわしてしまいます。
「命の危機かもしれないのに、授業を受けるだなんて、救えぬほどの律儀さだね、
「学校をサボるわけにはいきませんから」
落ち着かない僕とは違い、興味津々に、あるいは冷静にシュルス先輩は部屋を検分しています。
僕の部屋は、飾り気のない簡素な部屋です。物は少ないですし、勉強と寝るための部屋といった雰囲気。そのため、おかしな物はないと思うのですが……。
ベッドに注視し、床に這いつくばり、壁を叩いてみたり。
奇行にも見えるシュルス先輩の捜査方法を見ていると、取り調べを受けている心地になります。
「む、これは」
「なにかありましたか!?」
声を上げてシュルス先輩に近付くと、彼女はクローゼットを開けて一枚の黒い布を広げていました。……僕のパンツです。
「まさか、トランクス派だったとは意外だね」
「なにしてるんですか!?」
「黒はどうかな。派手過ぎる」
「返してください!」
動転しながらも、急いでシュルス先輩の手からパンツを取り返します。顔が熱い。洗ってあるとはいえ、異性に見られて気持ちの良いものではありません。女性が下着を見られる気持ちも、このような感じなのでしょうか。
取り返したパンツをクローゼットに仕舞い、扉を閉めます。バタンッと大きな音を立ててしまいましたが、気にしてはいられません。
シュルス先輩が「あー」と口惜しそうな声を上げました。
「まだ捜査途中だったのだが」
「なんの捜査をしてるんですか!?」
「なんのって」
顔を真っ赤にして叫ぶ僕に向けて、手の平を差し出してきました。
なにやら、シュルス先輩の手に小さく黒いなにかが乗っております。よくよく見て見るとその物体は小指の爪ぐらいの機械でした。
くすくすと、シュルス先輩が笑みを零します。
「盗聴器をパンツに仕掛けるなんて、なかなかにユニークな犯人だな」
「……盗聴器ッ!?」
しかもパンツって……もう少し設置する場所はなかったのでしょうか。いえ、そもそもそのような物があるのが問題なのですが。釈然としません。
「というわけだ。まさかと思うところにあるのだよ。隅から隅まで、埃一つ逃さず調べないとね?」
「……はい」
僕は観念して頷きました。もう、好きにしてください。
そして、部屋をひっくり返す勢いで調査は続けられました。
パンツの盗聴器に始まり、天井裏の監視カメラ、腕時計に小型GPS。いつの間にかスマートフォンに情報収集用アプリまでインストールされていることに気付かされた時には、身の毛がよだちました。
勉強机の上に小さな山ができるほど積まれた監視機器類は合計13個。アプリを合わせると18にまで昇ります。
僕は血の気の引いた顔を覆って、シュルス先輩にお願いします。
「……処分してください」
「では、設置し直そうか」
「さてはストーカーの回し者ですね!?」
変だ変だとは思っておりましたが、そこまで地に落ちていたとは……。
やはり僕の周りにはヤバめの女性しかいないのでしょうか。
狼狽し、戦慄する僕を見て、シュルス先輩は一瞬目を丸くすると、可笑しそうに笑い出しました。
「ははは。探偵がストーカーか。それはそれで面白そうだが、残念ながら捜査の一環だ」
「……全く面白くありません」
探偵技術を持ったストーカーとか、質が悪すぎます。
理由のわからない僕を放置して、シュルス先輩はスマートフォンを取り出してなにか調べ出しました。
「ふむ。
「……それで解決するんですか?」
半信半疑。不安な僕に、シュルス先輩はにやりと笑います。
「私を誰だと思っているんだい?」
「自称探偵の変な人」
「はっはっは」
否定しないで大口を開けて笑う姿に、僕は一抹の不安を拭えませんでした。
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