第15話喉の治療

「はい」

尚子は涙を流して亮に抱き付いた。

「どうですか?」

「うん、順調よ」

「よかった」


「もうすぐCDのリリースでPVの撮影も

終わったしYouTubeも盛り上がって来たわ

大手マネージメント会社から声がかかって来たわ」

「それで?僕はどうすれば?」


「この前、日本に帰ってやはり

亮のいる日本に帰りたい、だからこの先はあなたと

相談して決める事にしたの」

尚子はこの先は不安で仕方がなかった。


「そうか、わかりました」

「それと想像以上に男が迫って来る」

「そうなんですか?」

亮は心穏やかではなかったが

表情に出さなかった。


「はい、この世界で上手く泳がないと

ボロボロになりそう」

尚子は女一人、アメリカで生きていくのは

難しいと感じていた。


亮と尚子は久々に本心で語り合った。

「私、アメリカに来て彼氏できなかった」

尚子は亮の目を見つめた。


「僕のせいですか?」

「5年前に命を助けてもらって、一緒に歌を習って

ルームシェアして、実家も助けてもらって

あなた以外を好きになる事できないじゃない」


「すみません」

「謝らないでよ」

亮は尚子を思い切り抱きしめた。

「久しぶりに私料理作る」

「ありがとう」

亮はルームシェアをしていた時を

思い出していた。


「懐かしいですね」

「うん、とても」

「尚子さん、明日8時にタイムズスクエアで

知り合いのライブが有ります

一緒に行きましょう」

「はい、ぜひ見たいわ。刺激になりそうだし」

「はい」

~~~~~~~

「良かったこの楽譜が有れ

ば少し書きかえるだけで大丈夫よ」

ブルックは楽譜を両手で抱きかかえて抱えて

嬉しそうに小妹に話をした。


「うん」

「でも小妹凄いね、あの薬」

「でも肝心な時、亮が居ないんだからモデルと

今頃何をやっているのかな」


「うふふ、しょうがないわよ。

亮はもて男だから」


「ただいま!」

ブルックと小妹がジャネットの部屋に戻ると

ジャネットが嬉しそうに迎えた。

「お疲れ様ブルック、楽譜の方は?」


「あったわ、今から直して終り」

「ジャネットは踊りの準備は?」

「終わった、シャワーを浴びて寝るわ」

ジャネットは亮に言われた通り周りの

ノリに合わせて

身体動かす事を考えていた。

~~~~~~

翌朝8時過ぎにモニカのところへ

バンドが到着したと連絡があり

モニカはすぐに亮に電話をかけたが

通じなかった。


バンドの楽器はすぐに運送会社の手で

ホールに運ばれ男たちがホールへの

照明器具の搬入がされ

舞台設置が始まった。

「おはよう」


ジャネットが舞台で作業する人たちに

挨拶をして歩き

客席に居る舞台監督のボブのところへ行って

挨拶をした


「ボブ、今日のディレクションよろしくね」

「ジャネット、頑張って素敵なステージにするよ」

「学校のみんなが手伝ってくれて助かったわ」

「いや、僕たちこそ実践が出来るのはうれしいよ」


「午後からリハーサルできるかしら」

「ああ、がんばるよ。ジャネット」

「ボブ、お願いね」

ジャネットはボブにハグをした。


「そういえば、朝からあの日本人が

手伝ってくれているんだけど、

ジャネットの知り合いかい?」

ボブが軍手をしてライトを運んでいる亮を指差した


「あっ、亮」

ジャネットが亮のところへ行くと

亮に話しかけた。

「亮、朝目が覚めて電話を掛けたら

出ないから心配したわ」


「あはは、ごめん。ステージのセッティングを

手伝っていたんだ」

そこにモニカから亮の電話がなった。

「亮、今どこ?」

「ホールに来ています」


「探していたわ」

「ああごめんなさい、どうしました?」

「もういいの、バンドのみんなが空港に

着いたって言う連絡だったの」

「了解です」


「11時にブルックと一緒にホテルに来てくれる?

 食事をしながらみんなを紹介するわ」

「わかりました」


亮は電話を切るとジャネットに話した。

「ジャネット、11時にホテルでバンドの

皆さんと食事だそうです」

「わかったわ」


「ブルックはどうしています?」

「小妹と楽屋で発声練習しているわ」

「了解です、照明を運び終わったら行きます」

ディレクターのボブの適切な指示で

学生の動きはスムーズで

ステージに下りていたバトンに照明が吊られ

次々に上がって行った。


「すごい」

スピーディなセッティングに亮は声を上げた。

「彼らは卒業したらアメリカ中の

ステージを作っていくのよ」

「さすがNYUですね」

~~~~~~~

亮はジャネットと一緒に楽屋に行ってドアを開けた。

「施術しますか?ブルック」

「はい、施術は痛い?」

ブルックは顔が引きつっていた。


「いや、喉周りをマッサージするだけです

 逆に気持ちが良いんじゃないかな」

「そうなの、良かった」

亮はブルックをソファアに座らせ

漢方で作った薬とクリームをテーブルに乗せた


「ブルック胸開けてくれますか?」

「どこまで?」

「全部です」

亮は当然のように言うと

小妹が亮の顔を睨んだ


「亮いやらしい」

「しょうがない声が出るようにするんだから。

ブルック良いでしょう」

「はい」


ブルックはTシャツを脱ぎブラジャーを

はずして胸を露出した

「わあ。きれいな胸ですね」

亮にいやらしさは微塵もなかった。


「ありがとう・・・」

亮はブルックの喉仏の下を

押すとブルックは咳を数回した


「咳が出ますね」

「はい」

「喘息の気がありますね」

「ええ子供の頃、喘息だった」


亮はブルックの胸にタオルをかけて

ソファーに横になってもらうと

クリームで首のマッサージを始めた。


「気持ち良いわ」

ブルックは気持ちよさそうに目を閉じた

亮は後でじっと見ている小妹に微笑んだ。

「これから、胸のマッサージを

しますけど良いですか?」

「はい」

亮はブルックの胸の上に乗せていたタオルをはずすと

手にクリームをたっぷりつけて

胸の中心から乳房を持ち上げるように

円を描きながらマッサージを始めた


「大きく呼吸をしてください」

亮のマッサージと薬のお陰で

ブルックの呼吸は次第に楽になり

今まで以上に肺に空気が入ってくるような気がした


「気持ち良いわ」

ブルックはうっとりしながら亮のマッサージを

受けていると体中が感じてきた

「何?これ」

ブルックの全身に鳥肌が立ち体はピクピクと

痙攣を起こし始めた


「ああ」

ブルックは恥ずかしい声を我慢しながら

腰を何度も持ち上げ下半身のそこはすっかり

濡れていた

「亮」


ブルックはうつろな目で

亮の手にしがみついた

「ブルックの発生練習に声を出してください」

亮は慌ててその場状態を消すように

事務的に言ってタオルをブルックの胸の上に置いた


「はい、はい」

ブルックはタオルを胸に巻くと立ち上がった。

「どこまで高い声が出るか出してください」

ブルックはうなずいて部屋に入って来たジャネットと

亮の方を見て声をだした。


その声は今まで以上に安定していて、2オクターブの

声が出ていた。

「凄い、ブルック」

そばにいたジャネットが声を上げた。

ブルックは信じられないような顔をしてさ

自分の喉を押さえた


「ジャネットいままで、あまり高音が出なかったので

ファルセットを使っていたんじゃないですか?」

「そうよ。亮分かる?」

「はい、それが喉に負担をかけていたんですよ」

「とても呼吸も楽になったわ」


「呼吸が楽になれば大きな声が出るので

 喉に負担がかからなくなります」

「ありがとう亮」

ブルックは亮にハグをしてジャネットにも抱きついた


「ジャネット、亮にキスして良い?」

ジャネットは目を伏せながらうなずいた

「OK、良いわよ」

「ありがとう」

ブルックは亮の首に手を回して軽くキスをした。


二人の唇が離れるとブルックは大きなため息をついた。

「ありがとう亮、なんてお礼を言って良いか」

「いいえ、お礼は今日10曲

無事に唄い終わってから言って下さい」

「はい」

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