第16話リハーサル
「そしてメジャーデビューを目指してください」
「はい」
ブルックは亮の手を握り潤んだ目で亮を見つめた
11時に亮とブルックとジャネットがホテルの
レストランに着いて周りを見渡すと
奥にある大きなテーブルにバンドの四人が席に座って
ビールを飲んでいた。
「亮!」
モニカが亮に向って手を振った。
モニカがバンドの四人をブルックに紹介すると
あごひげをはやした大きな男が
「やあ、今朝はどうも」
亮に向って笑顔で声をかけた
「えっ?今朝?」
モニカが聞いた
「ああ、心配だから空港に迎えに行きました」
「とても気が利くのね、亮」
モニカは改めて亮の優しさに感動していた
「亮って言うのか?助かったよ。俺マイクだよろしく」
大きな男が亮に握手を求めた
「何か有ったの?」
モニカがマイクに聞いた
「今朝空港に着いた時、お腹が痛くて
困っていたところ、亮が薬をくれたんだ。
それが良く効いてあっという間に
痛みが止まったよ。ありがとう」
「マイク脂分の取りすぎです、
フレンチフライはしばらく
食べない方がいいですよ」
「あはは、俺の好物よく知っているな」
「みなさん、遠いところありがとうございます」
ブルックは楽譜をバンドの四人に渡すと
マイクは目を丸くして聞いた
「ブルック!本当にこれ唄えるのか?」
「はい」
ブルックは満面の笑みを浮かべた返事をした
「これが唄えたら凄いぞ」
背の高い細身のサムがブルックに言った
「問題ありません」
ブルックの顔は自信に満ちていた
「そうか、それは楽しみだ」
四人は楽譜を見ながらそれに夢中になって行った
「さすがプロですね」
「はい、スティーブがお気に入りの四人だから
リハーサルの時、素敵な音を出すわ」
「はい」
モニカは亮の顔を見つめていた。
1時にステージのセッティングは終了し
楽器をセッティングしてチューニングを終えると
いよいよブルックが唄う事になった。
「ブルック、ジャネットがんばって」
亮は二人に声をかけると
ブルックはマイクの前に立ち
ジャネットはレオタード姿で
その後に立った。
亮とモニカと小妹が客席に座ると
マイクのドラムスティックの音と共に演奏が始まった
四人は遠慮なく強い音を出すと
「モニカ。彼らはブルックに挑戦していますね」
「そうね、大丈夫かしら」
「はい、ブルックの歌は負けません」
亮は腕を組んで微笑んだ。
ジャネットは一緒に踊るダンサーと
バックでその音にあわせて踊りだし
前奏が終ってブルックが唄いだした。
バンドの音と共鳴して強い音がステージから飛び出した
「凄い。ブルック」
モニカが感動して両手を合わせた
そしてジャネットはその音楽に合わせて
気持ちよく美しく踊った10曲唄い終えると
ステージからマイクが飛び降りて来た。
「モニカ携帯を貸してくれ」
「どうしたの?」
「スティーブに連絡だ」
マイクはスティーブに電話をすると
興奮して話した。
「すぐにニューヨークに来てくれ、
歌を聞いてもらいたい女性がいるんだ」
「モニカの言っていた女性か?」
「ああ、凄いぞ!」
「わかった」
「でも、今からロンドンを出たら
間に合わないだろう」
「いや、そっちに行くつもり
だったからもう飛行場だ」
「よし、待っている」
マイクはブルックのところへ戻って
打ち合わせを始めた。
「あれ?ロンドンはそんなに近いの?」
小姉が不思議そうにモニカに聞いた。
「はい、ロスより近いわ」
「あはは、そうか」
ジャネットが汗を拭きながら
亮のところへ来ると
モニカが拍手をした。
「ジャネット良かったわ」
「ありがとう、モニカ」
「本当?でも、バラードの時はどうかしら
私、何かさびしい感じがするのよ」
ジャネットは自分の踊りに
物足りなさを感じていた。
「ジャネット実は私もあの曲は寂しく感じるの
ごめんなさい」
「ブルック、それはマイクに相談すればいい
彼は素敵なアレンジャーですよ」
亮は言うとブルックが微笑んだ。
「そうね」
マイクたちの演奏が楽譜以上にいい曲に
なっていたのはブルックが良く知っていた。
「私行ってくるわ」
ブルックは楽譜を持ってバンドの楽屋へ行った。
「ジャネット、亮が一緒に踊ればいいよ。
だって歌詞が二人の恋の話なんだもの」
小妹が笑った
「亮そうそれもいいわね。二人でダンスをするの」
「ジャネット、僕は踊れないよ」
「そんな事ないって、やれば出来るよ」
ジャネットは亮の手を握った。
「亮、今どこ?」
電話の向こうは不安そうな尚子の声だった。
「タイムズスクエアの
コクーンホールに居ますよ」
「行って良い?」
「はい、待っています」
~~~~~~~~~
「ボス、大変です」
部下の男がジャックのところへ走ってきた
「どうした?」
「ブルックがリハーサルを始めています」
「そうかしょうがないだろう、彼女も本気だ」
「それが照明もしっかりやっていて」
「大学の仲間だろう」
「はい、多分」
「まあいい、昨日キャシーが言っていた通り
たった一日でグラスボイスが治るはずない。
後半には声も出なくなるだろう」
「それでいいんですか?」
「ああ、客のブーイングの嵐で
立ち上がれないくらい落ち込むだろう」
「わかりました」
「そうだ、ただあの日本人の出入りに注意しろ、
あの男が居なければブルックは動けないはずだ」
「はい」
~~~~~~~
そこに、コクーンの入口で待っていた
亮に美咲から電話があった。
「亮大変よ、一文字がニューヨークに戻ったわ」
美咲は動揺をしていた
「わかりました」
「私達は一文字に付くからそっちへ行けない、
ごめんなさい」
「そうか残念ですね」
「それより、そちらが上手く行ったら
ジャック・チョウに命を狙われるかも知れないから
気をつけて、007じゃないんだから二度は死ねないわよ」
「あはは、大丈夫ですよ、美咲さん」
~~~~~~~
「亮」
尚子が入口で亮を見つけて腕に抱き付き
一緒にステージへ行った。
それを見ていたジャネットとブルックと小妹が
驚いてみていた。
「あっ、ナオコ!」
ブルックが尚子を指さして声を出した。
「ブルック知っているんですか?」
亮はブルックが尚子を知っているのに驚いた。
「あのアメリカンアイドルの尚子ですよね」
「はい、そうです」
尚子はお辞儀をした。
「亮、尚子とどういう関係ですか?」
ジャネットは尚子に嫉妬して聞いた。
「けっこう、古い友達なんです。5年くらいの」
尚子は対抗意識を持って腕を離さなかった。
「小妹、白尾尚子さんです」
「小妹です、よろしくお願いします」
小妹は尚子を睨みつけて挨拶をした。
「なんか私みんなに嫌われているみたい」
尚子は亮の耳元で囁いた。
「初対面だからね、みんないい人だよ」
「私犬みたいに唸りそう。ワンワン」
尚子はアメリカ人には通じないワンワンと吠えた。
「あはは」
亮は日本人だけわかる冗談が嬉しかった。
※ちなみに英語は「bow-wowやwoof」
フランスは「Quah-quah」「Wouah- Wouah」
ドイツ語は「wau-wau」「Wuff wuff」
2度目のリハーサルは照明と一緒に行うリハーサルで
すべて順調に行われた。
問題だったバラードは少しテンポが速くなって
明るい曲になっていた。
亮は歌い終わったブルックの
喉を見て再び施術を行った。
「もうこれで大丈夫リラックスして
唄えばいいですよ」
「ありがとう、初めて10曲
唄ったので何か興奮している」
「はい、これがブルックの実力です」
「私、練習をして尚子のように来年の
アメリカンアイドルを受けてみます」
「大丈夫、ブルックなら10万人のトップに立てますよ」
「ありがとう」
~~~~~~
亮は時計を見ながら飛行機の到着時間を気にしていた。
「ブルック日本から衣装が届くので、
今から飛行場に迎えに行ってきます」
「はい、気をつけて」
ブルックは心配そうな顔で亮を見た。
「はい」
亮が笑って返事をすると小妹が心配になって言った。
「亮、私も一緒に行くわ」
「いや、こっちで何かがあると大変だ、
小妹こっちでブルックを守ってくれ」
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