第21話・こんなことになろうとは
「今日は災難な日だったね」
「ユミル。来てくれたの? 嬉しい」
深夜皆が寝静まった頃、志織の部屋に光の珠が現れて少年神ユミルが姿を見せた。
「志織。きみが魔族に襲われたって聞いたけど大丈夫? 怪我はないかい?」
「わたしは大丈夫よ。レオナルドやイエセが庇ってくれたから。それより大変なの。マーカサイトが攫われたの」
「それも聞いたよ。元側近の魔族に攫われたらしいね。きみを襲ったのも鳥魔族と聞いたけど?」
「イエセが調べたところ、どうも魔王が攫われて魔王国では魔族たちを統率しきれていないみたい。元側近が魔王との交換に聖女を差し出せと要望したことで、その配下だった鳥魔族がわたしを攫って元側近に差し出せば、魔王を助けてもらえると早合点しての行動だったらしいわ」
「あそこはマーカサイトとその側近のおかげで統率出来ていたようなものだからね。側近が国を出て行ってからは、マーカサイトが頑張っていたようだけど、その彼を失っては魔王国もガタガタだね」
「マーカサイトは大丈夫かしら?」
「たぶん、大丈夫だ。命にかかわる様な危険な目には合わされてないと思う」
ユミルの言葉に志織は安堵したが、この場で一番彼のことを心配してるのはユミルだと思い到った。
「そう。ユミルがそう言うのなら大丈夫ね」
「でも結界に阻まれていて、ハッキリしたことは分からないけど、どうやらマーカサイトはデルウィーク国に連れさられたようだ」
ユミルが思案して言う。思いがけない国名を聞いて志織は戸惑った。
「デルウィーク国って、確かこの国から北西にある?」
「そうだよ。この世界の地理について教わっているようだね」
「今少しずつイエセから教わってる所なの。まだ完全に覚え切ってはいないけど‥」
志織はこの世界に来てから、イエセにこの国の成り立ちや歴史はもちろんのこと、地理や自然、地域、政治、生活、文化について学んでいる。
それは他国も同様でまだまだうろ覚えの状態だ。デルウィークに関しては興味深い話を聞かされていたので覚えていたのだ。
デルウィーク国の王族たちは特殊な魔力を秘めていて魔物を使役すると言うものだ。それを聞いた志織はどうにかしてこの国の王と繋ぎをとって、魔物対策に役立てないかと考えていた時もある。
でも魔王との会談でそれは必要ないかと思い始めていた矢先にこんな事になろうとは思いもしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます