第20話・勇者もやれば出来るんです
「マーカサイトを助けに行きましょう」
「はあ? なぜ助ける?」
「マーカサイトはわたしにとって共通目的を持った仲間よ。仲間を助けるのは当然のことでしょう? もちろん、あなたも行くのよ。レオナルド」
「はあああ? なんの冗談だよ。勇者が魔王を助けに行く? そんなの聞いたことないぞ。 おかしいだろ。それ」
「あんたの意見は聞いてない。決定だから」
「分かりました。そのように手配致します」
イエセは頭を垂れて了承する。そこへまだ不満を持つ男が横槍を入れて来た。
「おい。おい。おまえもなんで勝手に了承してるんだ? 相手は魔物だぞ? 説得してどうにかなる相手じゃない。魔王を攫うくらいなんだぞ? そんな相手の所にのこのこ向かうのは馬鹿がすることじゃないか? あいつらにすれば美味しい餌が勝手にやってきてくれた。と、思われるだけだぞ。止せよ。止めておけ」
志織は憤りを通り越し、冷たい目を俺さま勇者に向けた。
「あっらあ。まさか魔物相手に、この国最強、いや、この世界最強の勇者さまがびびってるってことはないですわよねぇ?」
「お。おい。聖女。俺をなんだと思ってる?」
「俺さまギャランドウ勇者。こんな時ぐらい役に立って見せなさいよ」
「なんだとぉっ」
むかつく女だな。と、ぼそりと勇者が呟いた時、頭上に大きな影がかかった。
「な。なに?」
見上げた先に、鳥にしては大きなものが何十羽と列を組んで飛来してくるのが目に入った。良く見ればコウモリのデカイものにも思える。
「あれはなに?」
「鳥魔族(とりまぞく)だ。何かを捜してる様だな」
空を仰いだ勇者が何かに気が付いたように、志織の頭を抱え込む。
「きゃあっ」
「声を立てるな。見つかる」
勇者の忠告は遅かった。すでに彼らには見つかっていたようで真っ直ぐこちらへ向かって来る。
「キイ。キイ。キイイ‥イタ、アソコダ」
と、声をあげ勢いを付けて下降して来た。
(うわあっ。怖っ)
志織は悲鳴を上げた。
「ひぃ。きゃああああああああっ」
「マテ! セイジョッ」
「聖女さまっ」
「走れっ。奴らの目的は聖女だ」
イエセとレオナルドが志織を気遣いながら駆け出す。イエセは空に向けて炎の玉を繰り出したが、鳥の魔族たちはそれを器用にどけながら、逃げる志織達の後を追って来る。
「きりが無いな。神官、俺に任せろ」
勇者が腰にはいた剣を鞘から抜いて、大きく振りかぶる。剣から振り放たれた聖光が彼らを一瞬で凪ぎ払った。
(やれば出来るんじゃない)
志織は感心したようにレオナルドを見た。彼もだてに勇者は名乗ってないようだ。ただ、大げさに額を拭うような仕種を見せ、流し目をくれたそれはいらない。と、内心断ったが。
「ありがとう。レオナルド」
「聖女。俺に惚れなおしたか?」
「そんなことないから」
ここまで自信過剰だと潔いな。志織は変なところで感心した。
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