第25話 雪渡とみんなの想い
そして、2年目のクリスマス・イブ。
去年は、散々なイブだったけど、今回は、お兄ちゃんが両親を外出させてくれるとの事だった。
バイトが終わり次第、“連絡しろ!” と、言われた。
今日は、雪渡とバイトが同じで閉店後の片付けもあり、2人の時間が多い。
違う意味でイブを過ごしている。
「今年のイブ、雪渡はシングルベル」
「それは、お前だろう?」
「私は別に関係ないし。だけど、要約、例の彼女も納得したっぽい感じ?」
「あー、どうかな?」
「えーー、あれだけラブラブ演技してたら流石に信じるでしょう?」
あの日、私達は、話し合った結果、ベタベタ感を増やした状態で、手を繋いだり雪渡が肩を抱き寄せては密着する行動を取ることにした。
時には、ちょっと、彼女の視界から、いかにも、キスしてるかのような素振りを見せてみたりと、本当に恋人同士のように演じていたのだ。
急にイチャイチャしすぎなのでは?
そう思われてもおかしくないだろう?的なくらい。
そして、もし、何か聞かれた時には上手く誤魔化そうと思っていたのだ。
急にイチャイチャしすぎた私達の行動を不思議と思う事を想定内として、
『外では、ラブラブ感出さないけど、余り信じてなさそうだから』とか
『ちょっと喧嘩して仲直りした所なの』とか
そんな理由などを言って信じて貰えればと思ったけど……
正直、最近見ていないので油断出来ないのもあるのだ。
「ねえ、雪渡、好きな人いないの?」
「いない。でも気付いてないだけかも?お前は?」
「私は…雪渡と恋人ごっこしてから…分からなくなってる」
「えっ?」
「私も気付いてないだけかも」
「つーか、その発言って、お前は俺に気があんのか?」
「えっ?うーん…ないとは言い切れない」
「えっ?」
「なーんて…でも本当だよ。何かこう確信的なものがないと多分好きって、ハッキリと言えない」
「そっか」
そして――――
「さあ、帰ろうっと!優奈、令ニさんに連絡しな。迎えが来るまで待つから」
「あ、うん」
そして、電話をするものの、定番のアナウンスが流れた。
「運転中かな?」
「繋がんねーの?」
「うん…」
取り敢えず私達は店を出た、その直後だ。
「よー、雪渡。久しぶりじゃねーか」
「…お前ら…」
「なあ。ちょっとさ、お金貸してくんね?」
「はあぁぁぁっ!?つーか、出てそうそう、ふざけんなし!」
「お前、良いバイトしてるらしいじゃん」
「悪いけど、お前らとは縁、切ったし!お金なんて急になんだよ!どういうつもりだよ!」
「別にさー、良いじゃん!」
「そうそう」
「ところで、彼女、可愛いね。雪渡の彼女?」
「お名前らには関係ねーだろ?」
そう言うと私達の間に割って入る雪渡。
「カッコつけやがって」
「なあ、雪渡。彼女を貸すか、お金を貸すか、どっちか選択させてやるよ」
「両方断る!」
「はあぁぁぁぁっ!?てめー、ふざけんなっ!」
「ふざけてんのどっちだよ」
「野郎っ!」
ドスッとお腹を殴られ崩れ落ちる雪渡。
「雪渡っ!」
「じゃあさ彼女、お金貸してよ!」
「利子付けて返してくれるなら」
「またまた〜、ご冗談を」
「じゃあ、無理!つーか貸せるお金なんてないから。強盗でもして、みんなに注目浴びて刑務所に行って更生した方が良いんじゃない?」
「この女っ!」
「あー、それ良いんじゃね?」
「雪渡!大丈夫?」
「ああ。ダテに体鍛えてねーし。つーか、彼女も結構言ってくれる奴だから、そのまま喧嘩になって警察沙汰になる前に引き下がった方が良いぜ?」
「うるせーっ!」
グイッと私を掴む。
「きゃあっ!離してっ!」
「雪渡、彼女、人質な」
「や、やだ!」
私は暴れる。
「この女、じっとしやがれ!」
次の瞬間―――――
ドカッ
ドカッ
ドサッ
二人が倒れた。
「お前らさーー、大概にしろよな!汚い真似してんじゃねーぞ!」
ドキン…
「雪渡……」
グイッと私の手を掴み、私を背後に隠した。
「イブの夜に問題起こしたくねーんだよ!彼女に何かあった時、俺含む他の奴等も黙っておかねーし、許さねーーからな!」
ドキン
その時、私は、ふと脳裏に過る。
あの後、占いの彼女から連絡があり、
クリスマス前後に災難が起こるから気を付けておいて。
案外、24・25日。
そう言われた。
正に、今日は、クリスマス・イブ。
嫌な予感がする。
「全く…本当、タチの悪い奴等!全然変わってねーんだな?あんたら、20歳過ぎてまで、バカみてぇな事してんだ。世間じゃ、大人の仲間入りだろう?子供(ガキ)みてえな事すんのも、さぞかし親も悲しんでいるんだろうな?」
「てめー!死にてーのかっ!?」
「…雪…渡…」
「だったら殺(や)れよ!公衆の前でさー、イブの夜に殺人起こしてみろよ!」
「雪渡…やだ…辞め…何ムキに…」
すると、一人の人が、ナイフを持って襲って来ると揉み合いになる。
「…やだ…辞めて…雪渡っ!!」
名前を呼ぶのと同時に雪渡はゆっくりと崩れ落ちた。
ドクン
「雪渡…?雪渡っ!ねえっ!」
「お、おいっ…!ヤベーよ!!」
3人は、逃げるように走り去った。
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