第26話 最高のクリスマスプレゼント
バイトが終わり、雪渡の知り合いと思われる人達に遭遇。
雪渡と揉み合いになり、ナイフが雪渡の身体を刺したと思われる。
雪渡が地面に倒れ込み、ピクリとも動かない状況なのだ。
相手は逃げ去り
「雪渡っ!雪渡っ!ねえっ!嘘でしょう!?」
突然の出来事に私もパニックになる中、真っ白になり、取り敢えず、震える手で携帯を手に救急車を手配しようとしたんだけど――――
私の手を止められる。
ビクッ
「…よせよ…平気だから…」
「…でも…」
スッと何事もなかった事のように起き上がる雪渡。
「生きてるから。勝手に殺すな。…すっげー…バッグに貫通…これは…マジ死ぬな」
ナイフをバッグから抜く雪渡。
「いやー…良くぞ守ってくれたなー。偉い偉い」
ポロッ
涙が溢れ落ちる。
「なあ、優奈、令ニさんに連絡……」
「………………」
「優奈?おい、お前、何泣いて……まさかバッグが可哀想に……」
「バカっ!」
ドンッ
雪渡の胸を叩く。
「何?どうした…」
「バカ…バカ…」
私は何度も、何度も、雪渡の胸を叩く。
「優奈っ!」
パシッと手を掴む雪渡。
ドキン
「落ち着けよ!」
「…私…マジで怖くて……本当に…死んじゃうんじゃないかって…」
「…優奈…」
「…雪渡を失うのが……怖かった……すっごい恐怖に…立たされたん…だからね…」
「…優奈…ごめん……まさか…お前がそんな……」
私は下にうつ向く。
「当たり前じゃん……去年は…両親が自殺はかってたんだよ……」
「…えっ…?」
「たまたま、お兄ちゃんが忘れ物を届けに…部屋に戻って来てくれて…そんな私は突然の出来事に頭と体が、全然ついていけなくて……何も出来なくて……お兄ちゃんが色々と手配してくれたから…両親は命を取り留めて助かったから良かったけど…」
「………………」
「今年こそはと思ってたら雪渡が…クリスマス・イブなのに…去年に続いて、また災難…大事な人を失う恐怖を怖いって思った事なか……っ!」
顔を上げると同時に言いかける私の唇を塞いだ。
ドキン
「…ごめん…優奈…」
ドキン
いつになく優しい眼差しと悲しくて切ないような表情を見せる雪渡に、私の胸が跳ねる。
「…………………」
私は耐えれず黙って立ち上がり帰り始める。
「あ、おいっ!優奈っ!ちょっと待てよっ!」
後を追う雪渡。
「おいっ!待てって!」
グイッと私の手を掴み引き止める。
「なあ、謝ってんじゃん!」
確かに腹立だしかったのもある。
無事だった事に安心した自分がいた。
今 私が
こういう行動をとるのは
雪渡の行動や態度や仕草に
ドキドキして戸惑ってしまったのだ
別に怒ってるわけではない。
すると空から雪が降り出し私達は空を見上げた。
「………………」
「…雪…」
「…そういや…去年も、お前の傍で雪、見たな…」
「そうだっけ?」
本当は覚えている
シンデレラの話をした日の事だ
何気ない会話に出てきたシンデレラ
「今年は…王子様は現れそうか?」
「えっ?」
ドキン
目が合う私達。
「シンデレラの戸西優奈さん」
ドキン
掴んでいた手を離すと向き合う私達。
「まさかと思ったけど…近過ぎると本当、気付かないもんだよな~」
「えっ?」
「俺…コイツの事、また泣かせたーーって…マジ思ったし…前にも泣かせて…そん時は意識してなかったけど」
「雪渡…」
「お前に恋の魔法かけてもらおうかな?俺の事を好きになってくれる魔法」
「えっ…?」
「妖精さんに」
「妖精さんの代わりにキューピットならなってあげるよ」
「妖精じゃねーと意味ねーし!第一、お前が、キューピットになってどうすんだ?」
「そういう自分こそ、妖精に魔法かけてもらってどうするの?それは、必要ないから」
「えっ…?」
「だって魔法は、12時になったら解けるよ」
「だけど魔法が解けた後に本当の幸せつかむのがシンデレラじゃん!」
「………………」
「優奈…俺と付き合って欲しい…。俺…お前か好きだから」
「…雪渡…うん」
「えっ?うん…?」
私は雪渡の手を掴みキスをした。
「幸せにしてね♪」
「………………」
「雪渡王子様♪」
真っ赤になる雪渡。
「………………」
私はクスクス笑う。
「顔赤いよ、雪渡」
正直私も恥ずかしい。
取り敢えず今一度、お兄ちゃんに連絡しょうと携帯を取り出す。
スッと携帯を持ってる手を背後から抱きしめるかのように掴む雪渡。
ドキン
「えっ?…ゆ…き…」
振り返りながら言う私にキスをする雪渡。
そして唇が離れ、すぐに唇を塞がれた。
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