第2話 服を買いに行こう

 俺の告白の後、その事実はなかったかのように流された。

 そしてここがどこなのか、私は誰なのか、あなたは私と関係あるのか、そう質問攻めにあった。


 とりあえずということで、個室のあるカフェに案内することにした。

 廃墟を怖がっていたし、人と接することで自分が今何者なのか、それを理解できるだろうということで。


「で、あなたはご自身が幽霊であるということに納得できましたか?」


「納得はしたくないけれど、理解はしたわ」


「それは良かった、では次ですが…あなたのことを俺は知りません」

「今日が初対面です」


「………初対面で告白したの?」


「はい、一目惚れです」

 ようやく告白のことに触れてくれたことが嬉しかった。

 だが…。


「お断りよ!でも…しばらくあなたの家に泊めてくれないかしら?今の私には家がないの」

 そうきたか、そう思わされる返答だった。

 告白を断られるというのは想像していた、だが家に泊めてくれと言われるのは予想だにしていなかった。


 それでも答えは即答、

「喜んで!いつまででも居てもらって構いませんよ!」

 これ以外にあるだろうか。






 あれから数日。

「三玖(みく)さん、服でも買いに行きませんか?」


「良いのかしら?多分高いわよ?」


 三玖さんは初めてあったときと常に格好が一緒にだった。

 それは当然、それしか服を持っていないから。


 人とは欲深いもので、三玖さんの他の服装が見たくなってしまったのだ。

「それじゃあ行きましょうか」


 三玖さんは幽霊だ、そして俺は霊媒師。

 本家にこの生活ががバレるのは芳しくない、というわけで俺の作った人と認識されるようになるお守りを持ってもらっている。

 これを所持することで普通に人としての身体を持ち、食事や会話など、そういったことが人間同様に行うことができるようになるのだ。


 これの効果により三玖さんは普通にご近所付き合いをしたり、昼間に散歩に出かけコンビニでアイスを買ってきたり、自由に暮らしている。





「これとかどうかしら?」


 そう言いながら見せてくれたのは縦に線の入ったニットの服にジーパンを履いている姿だ。

 ニットを押し上げる豊満なソレにスラッと長い脚を強調するキツめのジーパン。


 うん、これは良い。

 俺は素直に、

「とても良いと思います!」

 そう答えた。


「そう」


「次はこれとかどうかしら?」

 今回の服装はパーカーを羽織り、ガータースカートを履いている。

 パーカーでしっかりと隠されている上半身と対比して、露出された脚がとても強調されている。

 その肉感的な太ももにはベルトが食い込んでおりとてもセクシーだった。


 俺は今回も素直に、

「とても良いと思います!」

 そう答える。


 すると三玖さんは、

「ほんとにしっかりと見てるのかしら?」

 そう疑ってくる。


 先程の思ったことを全て口に出して言うと三玖さんは顔を真っ赤に染め、

「そう…」

 と一言だけ放って次の服を探しに行った。


 結果的には俺の財布から数万円飛んでいったが三玖さんの色々な姿が見えて満足だった。





追記 あれから感想を求められることはなくなりました。

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