廃墟に出た幽霊と霊媒師の禁断の恋

真堂 赤城

第1話 唐突な告白

 俺の一族は代々、霊媒師として生きてきた。

 そして俺も、昔から霊を祓う方法を教わり、霊とは悪だ。

 そう教えられてきた。


 今まではそれを疑うことなど一切なく、ただただ言われた通りに祓ってきた。

 だからだろうか、一族1の天才と呼ばれるようになれたのは。


 疑わず、何も自分で考えようとせず、言われる通りに生きる。

 何も面白みのない人生だった。

 だが今、その人生が変わろうとしている。

 それはなぜか。



「綺麗だ…」

 目の前にいる幽霊、そう幽霊に俺は一目惚れをしたんだ。

 スラッとした長身と切れ長の目、少しきつそうな顔立ちをしているが霊媒師である俺が近づいてきたことに驚き逃げようとし、転けた。

 そのギャップもより魅力を引き立たせているのだろう。


 俺は祓うことなんてできず、転けたままの幽霊にゆっくりと近づく。

「な、何よあなた!私はまだ何も」

 近づく俺に怯え、腰の抜けた弱々しい様子で身体を地面に擦りながら逃げ出そうと必死になっている。


 正直に言おう、より魅力的に感じた。

 だがやはり傷ついてしまう、君も自分の想い人にここまで怯えられると傷つくだろう?

 それと同じさ。


 だから俺はなるべく優しそうな声色と表情で話しかける。

「好きです、結婚してください!」







 私は気づいたらここにいた。

 ここに来るまで何をしていたのか、思い出そうとすると記憶に靄がかかったように、曖昧にしか思い出せない。


 ここに来るまでの最後の記憶、それはたしか大きな光る塊がぶつかってきたところだ。

 それが何なのか…。

 はっきりとしているのは私ではその出来事を理解することはできない、ただそれだけ。


 何か他に思い出せることはないか…そう考えに耽っていると、コツコツと足音が聞こえた。

 一度考えることをやめ、あたりを見回す。

 するとここはボロボロの建物の中だった。

 ぱっと見た感じ完全に廃墟、こんなところにいるのは……幽霊!?


 腰が抜けて地面に崩れ落ちる、足が動かない。

 身体を地面に擦り付けるように後ずさる、服が汚れることも気にせず必死に移動するが歩いている足音は止まることなく近づいてくる。

 嫌だ、まだ死にたくない!!

「な、何よあなた!私はまだ何も」


 そう言いながら見た先には、右手には札を持ち左手には数珠をもっている、不思議な人物が立っていた。

 そして、

「好きです、結婚してください!」


 そう大声で叫ばれた。

 幽霊という恐怖は吹き飛んだが、今度は別の感情が湧き上がってくる。


「あなた…どこかであったかしら?」

 そう、なぜか懐かしさを感じる若い男だった。

 もしかしたら私のことを知っているかもしれない。

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